「音楽」カテゴリーアーカイブ

『来なかった近未来』あとがきのあとがき その1

もうじき発売になる平沢進のエッセイ集『来なかった近未来』の編輯をした。
これは編者あとがきに書かなかったどうでもよい舞台裏、あとがきのあとがきである。

AMIGAといえば、知っているひとは80年代のサブカルチャ的なものを想起するだろう。
『ウゴウゴルーガ』あたりのチープでポップなCGやDEMOのアンダーグラウンドな世界。
そうしたAMIGAに対する印象は間違ってはいないし『来なかった近未来』が連載されたFAMIGAも「ギークの女王」なんてフレイズを使っていた。

しかし『来なかった近未来』の単行本化ではそういう路線の装幀はやめようね、というのがデザイナーとの共通認識であった。
さらに言えば、これまでの平沢作品のジャケットからも外れたデザインがいいよね、というのも共通認識であった。

安直な譬えをするならば、あっさりとした純文学系書籍のような、もしくは女性誌のような(って幅ありすぎ)感じ。
結果としてそうなっているかどうかはともかくとして、要はダークだったりメカニカルだったり男性的だったり変態的だったりするのはやめようということである。
キッチュだったりスチームだったりサイバーだったりといった近未来SF的なデザインにするのはやめようということである。

じゃあこんなんはどうだろうと、デモ写真をデザイナーに見せたところ「なんだか“来なかった感”があっていいんじゃないですか」とのこと。
プロに頼むには過酷すぎる撮影条件だし予算もないので、結局、使用写真も自分で撮ることになったのであるが、作品ではなくあくまで素材なので芸術性は問わないでいただきたい。

12月末の夜明け前、デザイナーの遠隔ディレクションのもと、極寒(大袈裟)のなか高所恐怖に耐えながら、数日にわたって異なる天候条件のもといくつかのパターンで撮影。
被写体はA600という小型マシンなのだが、自分自身もさることながら、ビル最上階の舳先みたいなところに置かれたA600が地上45mから転げ落ちそうで不安であった。
目が眩み身体はびびりながらも撮影は決死の覚悟(だから大袈裟だって)でなんとか完遂。
にもかかわらず、デザイナーによって表紙に採用されたのはデモで撮った最初の写真。
ま、世のなかそんなもん。

実は表紙には裏コンセプトのようなものがあって、クラスター&イーノイーノ・メビウス・レデリウス『アフター・ザ・ヒート』そしてフリップ&イーノ『イヴニング・スター』のジャケットである。
単に画面が空と地上で2分割されてるとか、その真ん中にブツが映ってるとか、そういう程度ではあるが、ああいうひんやりとした孤独感が出せればいいなあと思ったのである。
思っただけで出せなかったけど(笑)。
そんなこんなで年末年始はイーノばっかり聴いていたのであった。

来なかった近未来

HOTELからDOMEへ / 20世紀+BOX HALDYN DOME / 平沢進

平沢進が20世紀(メジャー・レーベルに所属した時代)に残した作品集『20世紀+BOX HALDYN DOME』がいよいよ2月29日(ことしは閏年)にリリースされる。
曲順など詳細は未定だが、おおよそ以下の作品を収録予定。

価格は31,500円と値が張るが、1999年までにメジャーから発表されたソロ関係の作品は網羅されており、CD1枚の単価に換算すると「お安い」と言える。
まだ平沢作品を揃えていない最近のリスナにとってはお得なパッケージと言えそう。
また、豪華化粧箱入り、タイで撮り下ろした写真満載のストーリイ・ブック(平沢が自身の活動をフィクション化した亞種音的物語と推察)付きというアイテムの仕様からして、平沢のキャラクタが好きというファンにとっても嬉しい作品だろう。

平沢進 at タイ
Hirasawa監視50000秒 09/27/11 より

平沢進でドームとくれば『スローターハウス5(屠殺場5号)』だけど、
監視5万秒は透明ドームで営みを観察されているようなものだった

さて、問題はすでに平沢作品を揃えてしまったリスナや、平沢進の音楽にしか興味のないようなリスナだ。
そういうリスナが喜ぶような完全な未発表曲はないし、未発表ヴァージョンも少ない。
カセット・テープや動画、MP3のみでリリースされたような作品のCD化もあまりない。
新録のボーナス・トラック、特に平沢ヴォーカルの「地球ネコ」がいちばんの目玉(えらく平易な表現だ)と言えそう。
あとはTVドキュメンタリ『カムイ・ミンタラ』のサウンド・トラックのCD化だろうか。
LDから音楽だけ抽出していたようなマニアには喜ばれること請け合い。
実際の音源は未聴だが、鎮西エンジニアがのべ3か月かけたというリマスタリングにも期待したいところ。

もしかすると「地球ネコ1曲に3万円かよ!!」と年季明けしたリスナたちの暴動が起きるのではないかと心配していたが、twitterで様子をうかがったところ、寛大な反応が多く安心した。
なお、今回の企画にわたしは関与していません(笑)。解説の中野店長やデザインした中井さんといった外部スタッフも選曲や企画には関係していない、完全なるケイオスユニオン内部企画品です。

ボーナス・トラック収録の「densha」「loop」「IDN」は、インタラクティヴ・ライヴに映像提供もしたアメリカのアート・ユニット twenty2product の映像作品に平沢進が提供した音楽。どっかで聴いたような気もするけど(笑)。
現在も動画を見ることができる。
www.twenty2.com/

平沢進 / 20世紀+BOX HALDYN DOME

2012年2月29日発売予定
テスラカイト(ケイオスユニオン)
31,500円

●オリジナル・アルバム
時空の水
サイエンスの幽霊
ヴァーチュアル・ラビット
オーロラ
Sim City
SIREN セイレーン
救済の技法

●シングル
ソーラ・レイ(SPECTRUM 2 TYPE)
バンディリア旅行団(Physical Navigation Version)
ハルディン・ホテル(Fractal Terrain Track)
電光浴(default version)
BERSERK―Forces―
BERSERK―Forces―(GOD HAND MIX)
BERSERK―Forces―(TV version)

●ライヴ・アルバム
error CD

●サウンド・トラック
デトネイター・オーガン 1,2,3
グローリー戦記
ロストレジェンド 失われた伝説の大陸
カムイ・ミンタラ 嶋田忠・森のメッセージ
剣風伝奇ベルセルク
ベルセルク 千年帝国の鷹篇 喪失花の章
Sign/Sign-2

●旬
OOPARTS
Landscapes
計算上のKun Mae

●不幸のプロジェクト
不幸はいかが?

●Global Trotters
Parallel Motives

●ボーナス・トラック
星を知る者(新録)
ルクトゥン or DIE(新録)
地球ネコ(平沢ヴォーカル)
ガーベラ(折茂昌美ヴォーカル/還弦ヴァージョン)
densha
loop
IDN

来なかった近未来

年頭のご報告。
平沢進のエッセイ『来なかった近未来』をPDF形式で単行本化します。

『来なかった近未来』は、1998年12月から2002年3月まで、いまは無きFAMIGA(ニフティサーブのAMIGAフォーラム)7番会議室に「x占拠x:平沢進の“来なかった近未来”」として連載された文章。
10年前からの平沢リスナーなら読んでいるかもしれないが、ニフティサーブといういわゆるパソコン通信のサーヴィス自体がなくなってしまったので、近年のリスナーは誰かが保存したテキストを「回し読み」させてもらうくらいしか目にする機会がなかったし、そもそもこの連載の存在すら知られていないかもしれない。

AMIGAというのは、1985年に発売されたマルチメディア・コンピュータで、平沢進はPVやCGの制作、インタラクティヴ・ライヴのオーサリングなどに使用してきた。発売元のコモドールは1994年に倒産してしまったけど、コミュニティがAMIGAを延命させ、恐ろしいことにことしも新しいモデルが発売予定だったりする。
連載の前半は「平沢進のAMIGA事始め」的な懐古譚が中心となっているが、AMIGAに関する専門的な話ではなく、誰でもげらげら笑い転げながら読めるようなエンタテインメントに徹している。いま読み返してみても充分に面白い。

編集作業は昨年10月に始めたのだけど、文章整理や素材蒐集に思いのほか手間がかかり、2か月以上も費やしてしまった。
すでに終わった連載に素材を揃えるもなにもないだろうと思われるかもしれないが、本文に加筆訂正リミックスが施されたほか、けっこうな分量のAMIGA解説がつく。AMIGAを知らないひとに向けた解説のつもりだったが、豊富な資料写真などはむしろAMIGAユーザのほうが楽しめるかもしれない。
まだ未確定要素もあるので、プレス・リリースとして発表できる段階ではないけれど、おおよその内容はこんな感じ。
各回のタイトルを見ただけでそそられる、かも。

【第1章 近未来のバッタ物】

■近未来のバッタ物
■その組は、電脳科学日本
■大型住宅用コンピューター
■グルよ、わたしはフィリピーナが恐い

【第2章 すすむくん がんばって】

■TRANSGENDER AMIGA
■すすむくん がんばって
■お願いだから1000にして
■ウソつきはAMIGAの始まり
■キミのボードに神の奇跡が降りますように

【第3章 存在してはいけません】

■アメリカ製マウスパッドの傾斜角
■存在してはいけません
■小鳥ちゃんJAZZの巨匠をつつきなさい
■アジアでAMIGA

【第4章 来るかも知れない近未来】

■インタラクティブ・ライブ準備レポート開始
■最後の奉公娘?
■8つの結末
■金属のイジメ方
■来るかも知れない近未来
■課題が見出されすぎるCG
■世界初!本番中にインストールする男?
■大阪前々日、深夜のエコカー暴走
■宙吊りのハードディスク
■シェーの恐怖

【第5章 グルよ、太陽系に連れてって】

■Solar AMIGAへの道 予告篇
■グルよ、太陽系に連れてって
■オニイサン、知りたいのは値段なんだ
■アラブを我が手に
■自殺するアクセサリー
■機械の中の田井中

【附録】

■[FAMIGA特別企画]平沢進さんとアミーガでQ&A
■平沢進 LONG INTERVIEW about AMIGA
■註釈/AMIGA用語解説
■CLASSIC AMIGA LINEUP
■平沢進/AMIGA 略年譜

発売元はケイオスユニオン、編集はファッシネイション、発売日は未定だけど、たぶん2月ころ。
詳細は決まり次第お知らせしますが、まだ確定情報ではないので、ケイオスユニオンへのお問い合わせはお控えください。

A2500

ケラ&中野テルヲメモ

ケラ&ザ・シンセサイザーズ × 中野テルヲ
2011/12/18(Sun) at 新宿LOFT

●「中野テルヲ納め」かつ「シンセサイザーズ始め」となるライヴ。そう、諸事情によりシンセサイザーズは久しぶりなのだ。
●10日前のことなので記憶が定かではないが、開演前には『Music For Airports』かなんかが流れていた、気がする。

中野テルヲ

●中野テルヲは高円寺HIGHの2階席から観ることが多いので、真っ正面最後列というのは新鮮。センサを操作する手の動きがいつもより大きく派手に見えるのは気のせいか機材配置のせいか。
●ただ、前半はどうにも音が小さいのが気になった。バランスは悪くなく、各音源やヴォーカルもよく聞こえるのだがサウンドの密度が低い。
●終演後に、中野テルヲや高橋芳一と話したところ、気のせいではないようであったが、天井が低く客に音が吸収されやすいというLOFTの構造上の問題が大きいようだ。
●そんな粗も気にならなくなったライヴ中盤、予想(期待)通りにケラとみのすけが登場。ロング・バケーションとしてカヴァーしたザ・モノクローム・セットの「The Ruling Class(支配階級)」を中野ソロ的アレンジで演奏。
●再会は昨年。2010年10月2日に同じ新宿LOFTで行われた中野テルヲのライヴ打ち上げに、LOFT/PLUS ONEでトーク・ライヴを終えたケラが合流。1995年のロング・バケーション活動休止後、15年ぶりになるケラとの再会を中野テルヲは喜んだという。
●その夜、ケラもこんなことをtweetしていた。「帰りに犬山と緒川さんとロフトに寄って、中野テルヲらに挨拶。中野くんと来年何かしら一緒にやりたいもんだと話す
●アンコールで大々的にというわけではなく、中野テルヲのステージ中にさらりと1曲だけやるというのがカッコいい。なにごともなかったかのようにソロへと戻る。これは美意識だろう。
●そういえば、ケラも8月末に「年内に、ほんの数曲でも数分でもいいから、久しぶりに中野テルヲと人前で何かやれないかと考えている。みのすけも呼べるといいな。まだ考えてるだけだが」と言いながら「(ロング・バケーション再結成のような)そんな大仰なアレではなく。ひっそり」とtweetしていた。
●「行っちゃえ!」と始まったラスト前「Let’s Go Skysensor」でマシン・トラブルというのもよい中野納めであった。

ケラ&ザ・シンセサイザーズ

●前回は「渋谷クラブクアトロで観た」ということだけ記憶している。たぶん96年あたりだから、5年ぶり。申し訳ございません。
●演出家として名をなしてからケラを知った世代は、もしかしたらバンド活動を余技とかお遊びと思っているかもしれない。しかし、かつてケラは音楽と芝居の両方やってないとバランスがとれないということを常に言っていたし、それはいまも変わらないだろう。
●自分のように音楽から入った世代は、最初のうち「劇団健康」をお遊びだと思っていたくらいだが、それもまた間違いであった。
●tweetを探しても見つからないので不確かだが、ケラは「どうしてバンドは芝居みたいに客が入らないんだろう」みたいなことを言っていた。これは本気なのだろう。そういえば以前は「演劇では日本で5本の指に入ってしまうようになっちゃったけど、音楽ではそうはいかない。やはり芝居のほうが世界が小さく、音楽のほうが層が厚い」(大意)ということも言っていた。
●演劇も本気だし、音楽も本気。最終的に表現したいことも同じなのではないか。ただ、芝居のほうは(作品にもよるが)練りに練った複雑で論理的な構成で、ケラ個人に興味のない客も楽しませるようになっている。
●いっぽう音楽はケラそのものだし、表現がもっとストレイトだ。特にケラ&ザ・シンセサイザーズは、バンド名が示すように、その色合いが強い。なにより、ケラがいかに最高の気分で歌えるかが重要だし、バンドもそのために最高のサウンドを目指す。これが共有できれば、受け手も最高の気分になれる。
●シンセサイザーズは有頂天の曲もやればルースターズのカヴァーもやる。なんでもありだ。外野としては「これが有頂天です」と言ってもよいのではないかと思うが、ケラにとってそれはありえないことのようだ。いっそ元メンバがふたりもいるP-MODELと名乗るほうがまだアリなくらいに。
●アンコールでふたたび、みのすけがアコースティック・ギターで加わっての「ケムリの王様」は、わたしもケラとよきものが共有できた気がして昂揚した。終演後、バンド・マスター三浦俊一も満足げであったし、ケラもこんなふうに振り返っている。
●「仕事納め3DAYS終了。ケラ&ザ・シンセサイザーズロフト2DAYS、二日目の共演は中野テルヲ。みのすけも呼んで、あの三人で15年ぶりに一曲。楽しかったよ。シンセサイザーズのステージも、やりきった感があるのではないか。皆さんお疲れ様でした。来てくれた方ありがとう

11月の黄昏サラヴァメモ

11月の黄昏 Crépuscule de novembre
2011.11.20(Sun) at サラヴァ東京

  • テノリエリ(tenorierie) http://www.myspace.com/tenorierie
  • 上野洋子 http://www.uenoyoko.com/
  • Shampoo http://www2.biglobe.ne.jp/~shampoo/SHAMPOO/HOME.html

▼初めて入るサラヴァ東京は椅子は60席ほどで、ライヴ・ハウスというよりカフェのように洒落ている。それもそのはずSaravahは1965年にピエール・バルーが設立したヨーロッパ最古のインディペンデント・レーベル、らしい。
▼隣のM田さんが「屋根裏くらいの広さかな」などと言う。もちろんロンドンと同じビルにあった屋根裏のことで、客席の広さはそんなものだが、サラヴァのステージはグランド・ピアノを置けるくらい広く屋根裏の倍以上ある。屋根裏はライヴ・ハウスの単位なのか。

▼テノリエリは、ライヴ前にMySpaceで「予習」した際「谷山浩子meetsテノリオン」とか思ったけど、そう外れてなかったみたい。
▼TENORI-ONによる弾き語りってことで、なかなか聴かせる。小さな風船を次々と割って音を出すのはなかなかなアイディア。
▼TENORI-ONって裏から見てもきれいなのね。

▼上野洋子はモールス信号をフィーチュアしたナンバーからスタートし、お、中野テルヲか高橋芳一かと思ってしまう。
▼ライヴ・コンセプトの「テクノかつファンタジー」というリクエストに応えるため「金沢明子meetsクラフトワーク」なパフォーマンス。「RADIO ACTIVITY/FUKUSHIMA」でソユーズ・プロジェクトとも勝手にシンクロ。
▼プログラマブルな世界最古のテクノ楽器という解釈でパンチカード式オルゴール(シート式オルガニート)で弾き語り。
▼さらには、テノリエリに感化されたたとかでTENORI-ONならぬKAOSSILATORでカオシヨーコな「雨降りお月さん」はなかなかぴったりなアレンジ。

▼Shampooは正装したKCのグランド・ピアノをバックに真っ白い盛装の折茂昌美が歌う「花束のプレゼント」でスタート。
▼横川理彦のヴァイオリン、molekul(PEVO2号)のフレットレス・ベースが加わりバンド編成になると、戦前の場末のナイト・クラブみたい(見たことないけど)な様相でジャズ、シャンソン、ボサ・ノヴァといった要素が混じり合う。
▼「シャンプーmeetsピエール・バルー」といった趣きのサラヴァ東京まんまなステージだったが、ピエール・バルーの「冬のある日」は、この日のためではなくたまたま以前もカヴァーしたこともあったとか。
▼ステージごとに様相の異なるシャンプーだけど、特にこのステージを見られたのは貴重だったかも。コーディネイトした木暮さんに感謝。

Shampoo
デザイナー・天津学さん撮影によるシャンプーのステージ。大きいサイズはfaccebookへ。レポートもここの文章よりわかやすく詳細で素晴らしい。
BLIZZARD DRIVE
Shampooのアルバム・タイトルおよび曲名にちなんだオリジナル・カクテル BLIZZARD DRIVE pix by mazda u

▼サラヴァ余談

  • 前日の高円寺HIGHのステージおよびバック・ステージに集った面々の重複率が高かったけれど、この日、中野テルヲと鎮西暴力音楽技師の2ショットを見られたあなたは幸運かもしれない。
  • 菊池達也、横川理彦、中野テルヲという歴代P-MODELベーシストによる奇蹟の3ショット(わたしは見ていない)に遭遇したあなたは、もう先が長くないかもしれない。
  • そこに三浦俊一まで会していたのだから、全P-MODELメンバの1/3が集結していたこになる。
  • 黒いPowerbookが世界一似合う中野テルヲは、白いiPhoneは世界一似合わないミュージシャンであることも判明。
  • そんな元P-MODELメンバがもっとも気にかけているのが田井中貞利の行方である。
  • 田井中貞利はP-MODEL内のアイドルだったらしい。

11/23附記: 小西さんはサラヴァには来ていなかったそうで(前日の記憶が混濁)その箇所は修正しました。

マルチプル高円寺ハイメモ

4-D mode1 presents Multipel Konversation
2011.11.19(Sat) at 高円寺HIGH

  • 高橋芳一 http://twitter.com/#!/UTS_takahashi_y
  • バチバチソニック http://bbsonic.exblog.jp/
  • monogramme http://seal-s.com/
  • 4-D mode1+Sabrina http://4dmode1.jp/

▼高橋芳一は以前のライヴの印象もあり、アンビエント・テクノ的なサウンドのスタティックなパフォーマンスを想像していたら、中野テルヲに続きまさかのハンド・マイク。ノイバウテンのブリクサを彷彿とさせる唸り声に驚愕。
▼あとできいたところ、平沢進以外で高橋芳一が敬愛するヴォーカリストはデヴィッド・シルヴィアン、ペル・ウブ(デヴィッド・トーマス)、キャプテン・ビーフハート、ダモ鈴木、原マスミらしい。
▼なるほどデヴィッド・シルヴィアン的うねりヴォーカルもありました。

▼バチバチソニックってこんなにグルーヴィだったっけ。前に観た時とえらく印象が違う。
▼005Harryのアタックが強くてスネアが派手なドラムと伊藤英紀のフレットレスじゃないのにフレットレスみたいなベース(なんという幼稚な表現)のコンビネイション。seogram(Vo)のパフォーマンスも余裕が出てきた。
▼PEVO1号のタルボは言及するまでもないのだが、あれ、前からLEDついてたかな。
▼バチバチソニックによる強烈にパーカッシヴな「ATOM-SIBERIA」を聴いたので、翌日、非常に久しぶりに『ANOTHER GAME』を聴いてみたのだが、どうも物足りない。記憶の音はライヴなのだ。005Harryのドラムは田井中さんみたいに派手かつ荒木さんみたいに音がデカくて正確だった。

▼いまのトリオ編成モノグラム(monogramme)のライヴは初めてだが、これまで観たなかではベストではいか。
▼その時々でメンバーも音楽性も変化してきたモノグラムなのだけど、今回は中学時代のメンバーとかでモノグラムの原点。
▼キイボードはシーケンサに任せて、ギター、ベース、ドラムというシンプルな構成、ロックン・ロールでも不思議ではない3ピース・バンドだ。
▼中井敏文のヴォーカルが際立つ。ついうっかり中井さんが歌が上手いってこと忘れてました、すみません。
▼途中、シークレットというかサプライズって感じで、ゲストのケラが登場。一時期は中井敏文も参加していたザ・シンセサイザーズの「だいなし」モノグラムがナゴムから出した「てみやげ」そしてP-MODELの「HEAVEN」と3曲をデュエット。
▼この日は中井本人もベスト・パフォーマンスの自覚と感慨があったそうで、終演後も充実感をたたえていた。

▼4-Dは、ニュー・アルバムにも参加しているというゲストのサブリナから登場。カメラマンだとばかり思っていたので、その正当派ソプラノに驚く。
▼モノグラムの「HEAVEN」に呼応するかのように演奏されためちゃくちゃファンキイなアレンジの「AFTER DINNER PARTY」で盛り上がる。イトケンのドラムも冴える。
▼アンコール「Very」はあのPVのせいでつい笑ってしまう。
▼来年で結成30周年という4-Dだが、mode1の3人はソロでもパフォーマンスできるそれぞれが自立したミュージシャンによるユニットだからこそ、どんなメンバーやゲストが入っても成り立つ。その強みと魅力を活かした記念イヴェントの開催を期待してしまう。

4-D mode1
4-Dのジャケットも手がけるデザイナー・天津学さん撮影による4-Dのステージ(大きいサイズはfaccebookへ)

▼驚いてばっかりだった4時間の余談

開演前に中井さんから、ことぶき光がP-MODEL在籍時代に 「different≠another」をやっていたかときかれた。
P-MODELのライヴにおいて「different≠another」は、伝統的にキイボードが「different!!」とシャウトすると平沢進が間髪入れず「another!!」とシャウトし返すのがお約束になっていた。
高橋芳一の解脱シャウトは印象的だったが、ことぶき光のシャウトは覚えがないなあという話。
(ここで実際には中井さんが、ことぶきさんのモノマネで「different≠another」をシャウト)
あとで調べてみたら、ことぶき光在籍時に「different≠another」は1回だけ1990.9.23にやってるのだけど、その際はゲストのケラが「different!!」とシャウトしたのだった。

デンシコン2高円寺メモ

2011.11.12 デンシコンツアー2 at 高円寺HIGH に関するメモ

1: デンシコンツアーとは三浦俊一が主宰するビートサーファーズのレーベル「電子音楽部」所属ミュージシャンによるコンサート・ツアー(東名阪)のことである。
出演 = 中野テルヲ / soyuz project / COSMO-SHIKI feat. miurashunichi

2: 清水良行のソロ・プロジェクトCOSMO-SHIKI(コスモ式)は、三浦俊一がギターでサポート。バンド・マスターではないし、いいあんばいにリラックス。

3: カヴァが1曲あったのだけど「あの曲なんだっけ、あの曲」と曲名を丸1日思い出せなかった。記録されていることは記憶しない主義なのだ。

4: 福間創のソユーズ・プロジェクトには「iPad VJ」として、デスクトップワークス代表の田口真行が参加。自社開発したVJアプリケイション(もうじきiTunes Storeで正式リリース)を使って、ステージ上でリアルタイムに映像処理する。

5: ビールを飲みながらプレイしていた福間さんよりも、アルコールが入っていないと思われる田口さんのほうがノリノリで踊りまくってVJしていたのが印象的。客席でiPadを回してオーディエンスがVJ参加する簡易インタラクティヴ・ライヴ的演出も楽しい。

6: オブジェクトをドロップしたりピンチ・イン&アウトしたりという簡単な操作でVJできるツールはほんとのインタラクティヴ・ライヴでも使えるかも。カメラのリアルタイム映像とミックスもできるし。

7: 中野テルヲはツアー用の必要最低限で組んだコンパクトなセットで登場。映像もなくいたってシンプルなステージは、さびしくはなく、むしろカッコいい。ただし衣装はドレス・アップ(笑)。

8: 独特の「寡黙(ストイック)なライヴ」で知られる中野テルヲだが、スカイセンサー(3バンド・ラジオ)を振り回したり、前に出てハンド・マイクで歌うといったサーヴィス(新境地?)もあり。

9: ダブ好きの中野テルヲはダブをフィーチュアした「My Demolition Work」シリーズというシングルを3枚リリース。京都市立芸術大学の学園祭では狂言と競演したらしいし、12月18日にはケラ&シンセサイザーズと新宿ロフトでライヴをやる。2年前まで5年ほど活動休止していたとは思えない。

10: このメンバーでのライヴなら客席は寿司詰めになるかと思いきや、少し余裕があって、当日券も出たもよう。去年から本年にかけて元P-MODEL界隈のライヴで見られた異様な熱狂は落ち着いてきたようだ。

11: 2012年2月11日(日)には高円寺HIGHでソユーズ・プロジェクトの1マン・ライヴがある。そこでまた新たな局面が見えてくるかもしれない。

2011年11月12日の月

喰わず嫌いの治し方 その2

実を言うと、わたしは日本で言うところのエレポップがダメだった。
テクノ・ポップやニュー・ウェイヴが好きな人間なら嫌いなわけはなかろうと思う向きもあるだろうが、なぜだかどしてだか苦手だった。
もともとディスコっぽいサウンドが苦手だったからではないかと思われる。
フュージョン+ディスコのYMOがダメだったのもそこらへんにルーツがありあそうだ。
なお、ここで言うエレポップは80年以降の音楽です。
それはさておき、エレポップ嫌いは10年ほど前にニューオーダーのシングル集とミュートのコンピレイションで悔い改めたので許してください。
でもOMDはやっぱり恥ずかしい。

さて、レーベル単位という狭いジャンルを克服してもしょうがいないので、もっと大きく出てみよう。
わたしの苦手な広大なジャンルにフォーク・ソングというのがある。
フォーク・ソングは直訳すると民謡になってしまうがそうではなく、もちろんフォーク・ギターで弾き語るアレである。
という説明をしなくてもたいていのひとはそう思う。
フォーク・ソングにも細かいジャンル分けや定義づけもあるだろうが、とにかくアレ一般がダメなのである。
フォーク・ギターでもってジャカジャカやるだけの音楽のどこがいいのか、まったくもって計り知れない。
それじゃあおまえが好きなロックとかいうのはエレクトリック・ギターでギュンギュンやる音楽でいいのかと言われれば、それでいいです。
それじゃあおまえが好きなテクノ・ポップとかいうのはシンセサイザーでピコピコやってる音楽でいいのかと言われれば、それでいいです。

とにかくフォーク・ギターでもってジャカジャカやる音楽の総本山とされるのが、たぶんボブ・ディランなんだろう。
まずはここから攻略してみよう。
これまで避けて通ってきたが、ジョン・レノンだって、デヴィッド・ボウイだって多大な影響を受けたどころかパクったとさえ言われているボブ・ディランである。
もしかして好きになるかもしれない。
しかしだ、ジョン・レノンにしろ、デヴィッド・ボウイにしろ、フォーク・ギターでもってジャカジャカやるタイプの曲はあんまり好きじゃないのである。
実を言うとデヴィッド・ボウイは『スペース・オディティ』を持っていないし『ジギー・スターダスト』より『アラジン・セイン』のほうが好きなのである。
「フリー・フェスティバルの思い出」とか、なんだかなあと思ってしまう、ごめんなさい。
ところで『スペース・オディティ』ってタイトルより『Man of Words, Man of Music』のほうがよかないか。
幼少時には2種類のタイトルがあって混乱したぞ。
『ハンキー・ドリー』も「Changes」「Oh! You Pretty Things」「Life On Mars?」とかすごくいいんだけど「Song For Bob Dylan」「The Bewlay Brothers」とかになるとしらけちゃうんだよなあ、ボウイの声はいいんだけど、ごめんなさい。
あ、でも「Quicksand」はけっこう好きかも。

というわけでディラン入門篇としては、ロック寄りになったと言われる『Highway 61 Revisited(追憶のハイウェイ 61)』あたりが抵抗感が少なかろうと予測されるので、ピーター・ガブリエルの還弦アルバム『New Blood』を買うついでにカートに入れた。
で、聴いみた。
ん? これ、ロック転身アルバムなんですか。
エレキを使ってるってだけで、あたしにはまごうことなきフォーク・ソングなんですけど。
もしくはブルース?
マイク・ブルームフィールドとかアル・クーパーも参加した作品として知られているが、わたしにとっては附加価値にならないんだよな、ここらへん。
そうですよ、そうですとも、アメリカン・ロックという極めて大雑把なくくりのジャンル分けがかつて存在しましたが、わかるひとにはわかるそこらへんのバンドはぜんぜんよさがわからなかったんだよなあ。
アメリカン・ロックとかブリティッシュ・ロックというジャンル分けが意味をなしたのは70年代までだろうか。
もうちょっと狭めてウェストコースト・サウンドとかサザン・ロックとかいうくくりもあったなあ。
ザ・バンドとか? ドゥービー・ブラザーズとか? CCRとか?
イントロでスルーしちゃいました、すみません。
ZZトップはバカバカしくてちょっとおかしいと思ったけど。
アメリカのバンドで聴いたのは、キッス、エアロスミス、ドアーズ、ヴェルベット界隈、テレヴィジョン界隈、トーキング・ヘッズ界隈、そしてDEVOくらいじゃないかろうか。
ああ、狭い。

そういえば、ジャカジャカ・ギターだけでなく、ハーモニカ、ブルース・ハープというやつもあまり好きでないのだな。
いや、実を言うとブルース、ブルーズ、あれがダメなんだから致命傷。
ブルースといえばロックにとっては親も同然。
神聖にして侵すべからず。
あれを否定する輩はロックも聴いちゃいけません。
そう言われそうだが、身体がまったくなじまないのだから仕方がない。
ハード・ロックにしてもプログレッシヴ・ロックにしても、ブルースの変形ということはわかるが、変形したものが好きだからといって原形が好きだとは限らない。

というわけで、やはりボブ・ディランは身体が受け付けませんでした。
フォーク・ソングを攻略するには別なルートから登ったほうがよいのかもしれない。
ブリテッィシュ・トラッドとかブリテッィシュ・フォークとかから聴いてみるべきであったか。
ケルト系はぜんぜん抵抗感がないからな。
ジャガジャガは嫌いだが、アルペジオは好きだぞ。
フェアポート・コンヴェンションとかペンタングルとか、ちゃんと聴いたほうがいいですか?
ただ、ジミー・ペイジが敬愛するバート・ヤンシュといっても、ZEPのフォークっぽい曲は飛ばして聴いてたほうだぞ。
ああ、狭量。

そして、喰わず嫌い(ほんとはちょっと食べたけど嫌い)を克服するためには、超えるべきさらなる巨大な山がある。
黒人音楽、ブラック・ミュージック、である。
ああ大きい。
実はブルースどころか黒人音楽全般が苦手なのである。
にしても「黒人音楽」というくくりはひどくないか。
人種はジャンルじゃないだろ。
白人音楽という言い方は文脈によってしないでもないが、イエロー・ミュージックとか言わないよなあ。
もちろん、黒人がクラシックをやっても黒人音楽とは言わないし、民族音楽としてのアフリカ音楽もあまり黒人音楽とは言わないので、ふつうはアメリカの黒人(民族もしくは集団)をルーツとする音楽を指すのだろうけど、それにしても幅が広すぎる。
そしてその広大かつ高く聳え立つ黒人音楽連峰が総じて苦手なのだから、困ったものだ。
抵抗感がないのは、せいぜいレゲエ(って黒人音楽?)くらいか。
ソウルやブルースも白人のぎこちないインチキくさいもののほうがやはりしっくりくる。

そういえばむかし、ひとから平沢進の音楽を指して「これだけ黒人音楽の影響を感じない音楽も珍しいよね」と言われたことがある。
ま、人間そんなもんだ。

Sweet Child

喰わず嫌いの治し方 その1

食べものに好き嫌いはほとんどない。
ましてや喰わず嫌いはない。
進んでは食べないものというのはあるが、食卓に供せられたならだいたいなんでもいただくほうである、虫以外は。

しかるに、音楽は好き嫌いが多い。
喰わず嫌いも多い。
いや、喰わず嫌いと言えば嘘になるが、アルバムをちゃんと聴くことなく、なんとなく耳に入ってきた数曲で嫌っているミュージシャンは多い。
ジャンルごと嫌いな音楽のほうが多いのではないかと思うくらいだ。
こう音楽の許容範囲が狭いと人間も狭量なのではないかという気がしてくる。
いや、気がするのではなく実際に小さいのだ。
人間極小だ。

かといって、音楽の趣味を狭めることで人生も狭めているのではないかと反省した、ということはまったくないのだが、第1印象で決めつけて聴かずに損をしている音楽もあるかもしれないし、それではもったいない。
というわけで聴いてみることにした。
きっかけは円高というか、ドル安、ユーロ安、ポンド安である。
輸入盤なら500円もせずに買えるアルバムは多い。
しかもボーナス・トラックやボーナス・アルバムがついてたりもする。
お目当てのアルバムを注文するついでに、どうでもよい(と自分では思っていた)アルバムを買ってみることにした。
10代はアルバム1枚買うのに吟味に吟味を重ねたものだが(5000円の小遣いでは月に2枚も買えないだから当然だ)溝に捨てる気持ちで買えるとはいい時代になったものだ。
ま、それでも激しく後悔はするけど。

第1弾はZTTレーベル系。
ジャンルを広げると言いながら、これまた狭いジャンルだが、ま、いい。
アート・オブ・ノイズはリリースされた当時、手法は面白いけど音楽はつまんない気がして買わなかったのだ。
なんか、技法のための習作集というか、音楽はただのお遊びみたいなもんで、1曲聴けばいいっていうか。
あれから四半世紀が経ち、ZTT時代のオール・イン・ワンみたいなベスト盤『Daft』が安く売ってたので、なんかちょっと聴いてみたくなって買ったみた。
しかし、四半世紀前の自分は間違っておらなんだ。
四半世紀を経て買ってしまった自分がバカ。
やっぱりつまんないよ、これ。
バグルスにしてもイエスにしても、トレヴァー・ホーンのかかわった作品はどれも企画モンくさいんだよな。
いや、好きなひとはそこを評価するんだろうけど。
ああ狭量。

プロパガンダはジャパンと交流があったくらいなので、好きな曲もあった気もするのだがすでに記憶の彼方。
『A Secret Wish (25th Anniversary Deluxe Edition) 』というオマケCDがついた2枚組が2.64ポンド。
買ってみた。
けど、ああ、やっぱダメだわ。
いや、曲によっては好きだったりするのだが。
たとえば「Jewel」なんかいいかなって思うし「P-Machinery」にしてもイントロダクションはいいんだけど、大仰で俗っぽいメロディのストリングスが入ってくると萎えてしまう。
「Dream Within A Dream」なんてつい恥ずかしくなってうつむいてしまう。
ああ、恥多き80年代を象徴するような音色群よ。
恥の多い生涯を送ってきました。
まあ、いまも恥は多いわけだが。

というわけで次回「フォークの神様は救ったか」に続く。

Daft-Art-Noise
Secret-Wish-25th-Anniversary-Propaganda

 

沈みたい / 中野テルヲの発振するシグナルとノイズ

震災からこっち、節電のため大出力のアンプリファイア+スピーカで音楽を再生することは控えていたのだが、禁を破ってしまった。
ごめんなさい、すべて中野テルヲというひとが悪いのです。

3月4月と世間的にも個人的にも精神的にも肉体的にもしんどいことが続いて、さすがにちょっと疲れていた矢先に中野テルヲの『Signal / Noise』が届いた。
オリジナルとしては96年の『User Unknown』から15年ぶり、コンピレイション(って言っていいのかな)『Dump Request 99-05』からでも6年ぶりのソロ・アルバム。
これがほんとに心地よいのだ。

自分に限ったことかもしれないが、これまで中野テルヲの音楽というのは、聴くほうを構えさせるところがあった。
それはなにも悪いことではなく、生真面目に、真剣に作った音なのだから、こちらも心して聴かねば失礼という対峙の仕方。
だからまさか中野テルヲの音楽に身を委ねることがあろうとは思わなかったのだ。

レトロ・フューチュアなデヴァイス群で奏でる懐かしいシグナル、安堵するノイズ。
「好きに聴いてください」「聞き流してくれてけっこう」
そんなふうに言っている気がする。

特にM3「My Demolition Work」から「フレーム・バッファ I」「Eardrum」の流れ、ラスト・ナンバでタイトル・ソングとも言える8分7秒の「ファインダー」は、音楽で心身のマッサージを受けるが如し。
我慢して携帯プレーヤやPCで聴いていたのだけど、このサウンドに身を沈めたくてオーディオ装置の前に座った。

M6「Long Distance, Long Time」以外はミディアム・テンポ〜スロウ・テンポの曲ばかり。
中野テルヲが少年時代からなじんできた短波ラジオのチューニング・ノイズ。
UTS(Under Techno Sysytem)の発するプリミティヴな信号音。
シンプルで抑制されたシンセサイザーの発振音とメロディ。
半分くらいはインストゥルメンタルのような気がしていたのだが、聴き終わって確認したら全曲が歌入りだった。
押しつけがましくなく品がある中野ヴォイス。
なにより気持ちがいいのは身体を包み込むようなダブっぽいエコー。

ジャケットがまたいい。
と思ってクレジットを見たら中野テルヲ自身によるアート・ワークだった。
すべてが中野テルヲそのもの。
テクノ・ポップにおけるアコースティック、テクノ・ポップにおけるローファイってこういうんじゃなかかろうか。

このアルバムを聴いたあとに1stアルバムを聴いてみたら、以前とは違って聞こえた。
もしかすると中野テルヲ自身はなんの変化はなくて、受け手である自分が変わっただけかもしれない。

中野テルヲ公式サイト
www.din.or.jp/~teru-o/

Beat Surfers
2011年7月23日には高円寺HIGHにでワン・マン・ライヴ
beatsurfers.syncl.jp/

Signal / Noise