富士山麓に平沢啼く

これまでさんざ野外フェスなんか行かないと公言してきた手前どうにも言いづらいがフジロックへ行ってきた。

そもそもアウトドアは苦手であるし、野音や学祭で行われる○○フェスだってあまり好きではない。
狭量な人間なので、たとえホールのオムニバス形式のコンサートであっても、興味のないバンドを聴いているのが非常に苦痛だったりする。
もちろんそこに音楽的な発見があるのもほんとうだし、これまで自分にもそうした発見があったけれども、もはやスタンディングで好きでもないバンドを観るような体力はない。

ましてや、フジロックのような過酷な自然環境の大会場に大勢の人間が集まるお祭り騒ぎの高揚感とか。
ああ、ぜんぶダメ。
そんなのダメダメダメダメ人間。

だが、そのフジロックにインドア資質の極北と思える平沢進が出るという。
相変わらずあり得ないとされることをやるひとだね。
その意味では、平沢進のフジロックというのは、孤高のへそ曲がりの現れである。
さあ、困った。
いまどきフジロック出演を勲章のようにして大騒ぎするのはどうかと思うが、これはちょっと気になるではないか。
しかしなー、平沢進と同じ最終日のヘッドライナーはキュアーか。
実は自分でも意外なことにキュアーにはまったく思い入れがない。
好きか嫌いかと言われれば好きな部類に入る程度である。
むしろ、初日のケミカル・ブラザーズとトム・ヨークが3日目であれば、迷わず行ったと思う。

最終的に背中を押したのは、レッド・マーキーという庇つきステージであることと Zeusaphone Z-60 が登場すること、そして会場内ホテルが取れたことである。
人生なにごとも経験だとかなんとか陳腐な言い訳で自分を言いくるめた。

かくして2019年7月28日・日曜日。
東京から新幹線でたった1時間半、9:30には越後湯沢へ到着。
さして並ぶことなく11時前にはシャトルバスで苗場着。

80年代にその名を轟かせたお洒落なはずのリゾートホテルは粉々に壊れ廃墟のようであった。
いや、壊れたというのは言い過ぎだがなかなか荒廃した感じ。
フジロックでしか稼働していない棟もあるという。

荷物を預け、昼食をとって奥地(フィールド・オブ・ヘヴン)へ辿り着くと、渋さ知らズオーケストラが終わるころであった。
雨はほとんど降っていないが、前日襲来した颱風のせいで濁流が流れそこらじゅうが泥濘(ぬかる)んでいる。
立ち並ぶ飲食ブースは、代々木公園のタイ・フェスなんかと同様だが、こっちが先なのだろう。
会場内各所を徘徊し、いったんホテルへ戻って着替えればもう夕刻。
ひぐらしが鳴いている。
カレーを飲みこみ苗場食堂裏ステージの苗場音楽突撃隊へ。

池畑潤二+花田裕之+井上富雄という大江抜きのルースターズにヤマジカズヒデと細海魚が加わった洋楽カヴァー・バンド。
ゲスト・ヴォーカルも入って「ハッシュ」「アイ・ミー・マイン」とか(ルースターズ的には)意外な選曲をやる。
途中、雨足が強まりカッパをかぶる。
最後の3曲(だったかな)は花田裕之ヴォーカルのブルースっぽい曲で、門外漢にしてぜんぜん知らない曲だが、やはりよい。

にしても、隣の大音響DJブースが近すぎる。いくらフェスとはいえ、音が混ざりすぎ干渉しすぎ。
バトル・ロッカーズとマッド・スターリン の対決ライヴを思い出したくらいだ。

苗場食堂と隣のレッド・マーキーは近くて助かるが、20時スタートの平沢進とは時間差たった20分。
ジンギスカン臭漂う会場はすでに満員。
前半分は立っているが、うしろ半分は自前の椅子。
雨宿りの客も多いとうかがえる。

オープニング・ナンバーとしてはおなじみの(とはいえ久しぶりの)「TOWN-0 PHASE-5」から始まり「Archetype Engine」「フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ」という完全に攻めの選曲。
すでに「HYBRID PHONON」以来、平沢ソロ名義だろうがなんだろうがなんでもアリになっている。
平沢目当てではないオーディエンスも多かろうことを前提に、持ち時間の1時間に詰め込めるだけ詰め込んできた。
「アディオス」「聖馬蹄形惑星の大詐欺師」「アヴァーター・アローン」と比較的最近の曲に続いていよいよ「夢みる機械」へ。
The Musical Tesla Coil Zeusaphone Z-60 は2008年の「PHONON 2551」で初登場して以来11年。
5年前の「HYBRID PHONON」からは使われてなかった(はず)ので、故障してないか心配だったのだが、健在である。
前は見えないし、平沢のヴォーカルもあんまり聴こえなかったが、スパークの光と音はしっかり届いた。

続くイントロはなにこれと思ったら「ジャングルベッド I」というより「Astro-Ho」か。
「Astro-Ho」シリーズはソロ曲の位置づけなのでまったく違和感なかったのだが「ジャングルベッド I」だとすれば95年の「ENDING ERROR」以来。
続く新曲(タイトル不明)は「Perspective」かと思ったほどに素晴らしい。

「Nurse Cafe」「AURORA(4くらい?)」とまくしたてて「白虎野の娘」*であっという間に終了。
「AURORA」はまたぜんぜん変わっててイントロではわからんかった。
ラストはなにが来るかと思いきや「白虎野の娘」というのは、これが現在の代表曲ということか。正しい。

フジロック的に当然なのか異例なのかはわからないが、予想外のアンコールで想定外の「回路OFF 回路ON」を演って解散。

仕込み段階の平沢tweetから力の入りようが伺えたけれども、雨宿りの連中を踊らせるほどに、選曲もパフォーマンスもアレンジも完璧であった。
1時間くらいのコンパクトなライヴっていいものだ。
惜しむらくは低音がびびりまくる音響。
「Astro-Ho」には歌詞があったというが、ぜんぜんヴォーカルなんて聴こえなかったし、心臓に悪い。
散見するtweetなどを鑑みるに、Youtube中継(たぶんライン出力)のほうは音がよかったようだし、意図的とは思えないので、音響システムの特性やオペレーションあるいは仮設会場の構造によるものなのだろう。

その流れで言うとキュアーのライヴで驚かされたのは音のよさ。
科学の進歩を感じる音響システム。
いまどきの野外ライヴ(行かないから知らない)では当たり前なのだろうが、下手なホール・コンサートよりよっぽど音がいい。
ところで、キュアーってあんなに演奏のうまいバンドだっけ? そっちも相当に驚いた。

キュアーのあとホテルでひと休みして卓球のDJへ行こうと思ってたのだが、気がついたらすでに朝。
かっこうが鳴いている。
エレヴェータでチェックアウトへ向かう卓球に出くわしたのが妙に気まずかった。

そういえば、ホテルは出演者やスタッフも泊まっているのでけっこう見かけたのだが、意外とファンが騒いでる様子もなく、そこは大人のイヴェントか。
不愉快だったのは、規制がほとんどないライヴ中の撮影、これまた規制がほとんどなく自由過ぎる喫煙、会場内・ホテル内の導線といったあたりか。

シャトルバスの列の長さに恐れをなして、帰りは路線バスを使ったが、これはなかなかしんどかった。
とはいえ、颱風が前日に通過してくれたおかげで、予想したより困難は少なく、遠出の泊まりがけライヴ程度で済んだ。
点検隊に比べればふつうのライヴの範疇である。

梅雨が明けて一転猛暑のなか帰途へついた。

●役に立ったもの
トレイル・ランニング用防水スニーカ
救済の橋のギルドのミニ・リュック
カッパ

●まったく使わなかったもの
折りたたみ椅子
折りたたみ傘
論理空軍ウィンドブレーカ
ソーラレイ・ブルーシート

防水スニーカは軽くて歩きやすく非常に快適だったのだが、たった1回のライヴのためと思うと痛い出費である。
しかし、一生のうちもう1回くらい行くかもしれない。
その時まで取っておこう。

2019/08/08追記

*ラスト「白虎野の娘」と思ったのだけど、ネット上では「白虎野」と書いてるひと多し。あとは「白虎野+白虎野の娘」って書いてるひともいた。
会場でヴォーカルはあんまし聴こえなかっが、中継でちゃんと聴くと「白虎野」だったらしい。

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