「平沢進/P-MODEL」カテゴリーアーカイブ

発掘原稿: Limbo-54 への道 (1)

インタラクティヴ・ライヴ「LIMBO-54」に関するFAMIGAへの投稿メモのようなものが発掘された。
技術寄りの話なのでAMIGAを知らないひとにはあまり面白くないだろうし、全16回もあって長いけれども、この際だから整理しなおして公開してしまおう。

タイムスタンプからすると2003年2月くらいからメモを作り始めたようで、最終更新は2004年1月。
インタラクティヴ・ライヴ「LIMBO-54」開催が2003年4月28日から5月5日にかけてで、そのDVD『Interactive Live Show 2003 LIMBO-54』のリリースが2003年11月26日なので、そのあたりに書き留めておいたのだろうと思う。

ではまず第1回。


Interactive Live 2003 への道 — その1 復活の野望篇

お題に「Interactive Live 2003 への道」とあるように、FAMIGAではすっかりおなじみのミュージシャン、平沢進さんのコンサート“LIMBO-54”の準備段階裏話みたいなものです。
もちろん、今回のライヴもFAMIGAのメンバが協力し、Amigaが大活躍しました。
これも音楽寄りの話ではなく、要はAmigaのメンテナンス話で、PowerTowerやMediatorPCIなど最近のクラシック・アミーガ事情にまつわるエピソードがけっこうありますので、書かせていただこうと考えた次第。
実はずいぶん前に書きかけたままほったらかしにしていたため、すでに記憶はかなり薄れているのですが、ライヴDVD『INTERACTIVE LIVE SHOW 2003 LIMBO-54』も出ることですし、これを機に投稿したいと思います。

話は2002年3月にさかのぼります。
当時、平沢さんは2002年末に新作のリリースとライヴを予定しており(実際は翌年になりましたが)アルバム制作にもライヴにもAmigaに活躍してもらう必要がありました。
しかし、平沢さんがメインに使っていた2台のAmigaは、両方とも故障中とのこと。
1台はHighFlyer (*1)で拡張したA4000で、こちらは不調ながらも動作するそうですが、ノーマルなA4000(D)はまったく起動しない状態。
早急になんとかせねばなりません。
というわけで、平沢さんからは以下のような増強プランが提案されました。

1.起動しないA4000の蘇生
2.HighFlyer4000の安定化
3.ノーマルA4000とHighFlyer4000を下記の同仕様にする

  • CyberStorm PPC搭載
  • RAM増設
  • Cybervision 64/3D などグラフィックカード搭載
  • ノーマルA40000にPARとTBCを搭載(HighFlyerには搭載済み)
  • ネットワークカード搭載
  • HighFlyer4000にScalaMM400インストール(ノーマルA4000にはインストール済み)

4.両機のタワー化
5.液晶モニター化

検討の結果、結局、CyberStorm PPCとCybervision 64/3Dは不要という結論になりました。
要は、平沢さんの作曲作業やライヴにはそれらのものがなくてもよく、ゴージャス化目的でなくてもよいものを搭載するとロクなことにならないのがAmigaの常と(笑)。

ここで平沢さんのインタラクティヴ・ライヴの基本となるAmigaシステムをおさらいしておきしましょう。
中心となるのはScala, Bars & Pipes, PAR (Personal Animation Recorder), そしてGenlockです。
Bars & PipesによるMIDI出力、PARによる映像(アニメーション)出力、Scalaからの映像出力、Genlockによる映像の合成、それらをすべてScalaで制御します。
物理的には、PARからのコンポジット出力とScalaなどAmigaのRGB出力はGenlockに入り、Genlockで合成された映像が会場のスクリーンに投影されます。
このScala, Bars & Pipes, PARの操作画面はすべてWorkbench画面上のウィンドウではなく、アプリケーションの独自スクリーンを使うのでグラフィック・カードは意味がないわけです。
(Bars & PipesはAmigaのネイティヴ・スクリーンではなく、グラフィック・カードの表示を使うことができますが、Workbench画面上のウィンドウで表示するわけではありません)

というわけでグラフィックス・カードの重要度は低いことになります。
グラフィックス・カード(フルカラーボード)よりもスキャンダブラ/フリッカフィクサのほうが導入する意味があるのではないか、というのが結論です。
折良く、このころSoftwareHutでは「VideoToasterやGenlockでも使える」のがウリのショップオリジナル製品ToastScanの発売がアナウンスされていましたのでこれを導入する方向に決めました。

アクセラレータは、ノーマルA4000にはコモドール製A3640(68040/25Mhz)が、HighFlyer4000にはMacro Systems製WarpEngine4040(68040/40Mhz)が載っています。
A3640については性能はともかく、RAMスロットがないので、マザーボード上の16MBが限界です。
RAMを増設するには、ほかのアクセラレータを載せ換えるか、RAMが増設できるボード類を搭載する必要があります。
一方、WarpEngine4040に関しては、そのパフォーマンスで平沢さんは不都合なしとのことでしたが、もはやWarpEngineは新品では売っていないので、2台ともWarpEngineで揃えて環境を整えるのは難しい。

2台のAmigaを「同じ仕様にする」というのは、1台がコケた時のバックアップとしてもう1台を使うためであり、不測の事態が起こりがちなライヴなどでは重要になってくるわけです。
2台のマシンをハードウェア的にもソフトウェア的にも同じ構成にしておくとパーツを入れ替えたり、ハードディスクを載せ換えたりもしやすく、アクシデントへの対応、不具合の検証もしやすいですからね。
(と、力説しなくても年季の入ったAmiganならば周知でしょうか)

さて、新品のアクセラレータで揃えるとなると、意外と選択肢は狭まります。
というか、A4000用のアクセラレータで新品で入手が容易なのはCyberstormくらいしかない(笑)。
Cyberstormは040か060、それぞれにPPCがついたものが出回っています。
PPCアクセラレータは、将来のOS4では必須とされますが、クラシックAmigaでは、一部のアプリケーションしかPPCに対応しておらず、これもまた、現状の平沢さんのシステムにとっては不要です。
将来のOS4へ備えて導入しておくという考え方もありますが、OS4が出た時にどんなPPCカードが出ているかわからないですし、OS4を使うにはAmigaOneなどマザーボードを新調したほうがいいかもしれません。
未確定要素がありすぎ、OS4への対応は、OS4が出た時に考えればいいということでPPCは見送られました。
というわけで、候補に残ったのはCyberstorm MK III(060/50MHzまたは040/40MHz)になりますが、どうせ新調するなら040ではなく060でもいいじゃないかという感じで060に決定しました。

*1…平屋のデスクトップ型A4000を2階建てにする強引な拡張キット。
スロット、ハードディスク収納スペース、電源が増える。
しかし、電源は2個に増えるだけで、増やした電源は前面のスウィッチからはオンオフできない。
また、インチネジとミリネジが混在しているようないいかげんな作りで、組み立ても分解も非常にめんどくさいです。
www.amiga-hardware.com/showhardware.cgi?HARDID=1331

『来なかった近未来』あとがきのあとがき その1

もうじき発売になる平沢進のエッセイ集『来なかった近未来』の編輯をした。
これは編者あとがきに書かなかったどうでもよい舞台裏、あとがきのあとがきである。

AMIGAといえば、知っているひとは80年代のサブカルチャ的なものを想起するだろう。
『ウゴウゴルーガ』あたりのチープでポップなCGやDEMOのアンダーグラウンドな世界。
そうしたAMIGAに対する印象は間違ってはいないし『来なかった近未来』が連載されたFAMIGAも「ギークの女王」なんてフレイズを使っていた。

しかし『来なかった近未来』の単行本化ではそういう路線の装幀はやめようね、というのがデザイナーとの共通認識であった。
さらに言えば、これまでの平沢作品のジャケットからも外れたデザインがいいよね、というのも共通認識であった。

安直な譬えをするならば、あっさりとした純文学系書籍のような、もしくは女性誌のような(って幅ありすぎ)感じ。
結果としてそうなっているかどうかはともかくとして、要はダークだったりメカニカルだったり男性的だったり変態的だったりするのはやめようということである。
キッチュだったりスチームだったりサイバーだったりといった近未来SF的なデザインにするのはやめようということである。

じゃあこんなんはどうだろうと、デモ写真をデザイナーに見せたところ「なんだか“来なかった感”があっていいんじゃないですか」とのこと。
プロに頼むには過酷すぎる撮影条件だし予算もないので、結局、使用写真も自分で撮ることになったのであるが、作品ではなくあくまで素材なので芸術性は問わないでいただきたい。

12月末の夜明け前、デザイナーの遠隔ディレクションのもと、極寒(大袈裟)のなか高所恐怖に耐えながら、数日にわたって異なる天候条件のもといくつかのパターンで撮影。
被写体はA600という小型マシンなのだが、自分自身もさることながら、ビル最上階の舳先みたいなところに置かれたA600が地上45mから転げ落ちそうで不安であった。
目が眩み身体はびびりながらも撮影は決死の覚悟(だから大袈裟だって)でなんとか完遂。
にもかかわらず、デザイナーによって表紙に採用されたのはデモで撮った最初の写真。
ま、世のなかそんなもん。

実は表紙には裏コンセプトのようなものがあって、クラスター&イーノイーノ・メビウス・レデリウス『アフター・ザ・ヒート』そしてフリップ&イーノ『イヴニング・スター』のジャケットである。
単に画面が空と地上で2分割されてるとか、その真ん中にブツが映ってるとか、そういう程度ではあるが、ああいうひんやりとした孤独感が出せればいいなあと思ったのである。
思っただけで出せなかったけど(笑)。
そんなこんなで年末年始はイーノばっかり聴いていたのであった。

来なかった近未来

HOTELからDOMEへ / 20世紀+BOX HALDYN DOME / 平沢進

平沢進が20世紀(メジャー・レーベルに所属した時代)に残した作品集『20世紀+BOX HALDYN DOME』がいよいよ2月29日(ことしは閏年)にリリースされる。
曲順など詳細は未定だが、おおよそ以下の作品を収録予定。

価格は31,500円と値が張るが、1999年までにメジャーから発表されたソロ関係の作品は網羅されており、CD1枚の単価に換算すると「お安い」と言える。
まだ平沢作品を揃えていない最近のリスナにとってはお得なパッケージと言えそう。
また、豪華化粧箱入り、タイで撮り下ろした写真満載のストーリイ・ブック(平沢が自身の活動をフィクション化した亞種音的物語と推察)付きというアイテムの仕様からして、平沢のキャラクタが好きというファンにとっても嬉しい作品だろう。

平沢進 at タイ
Hirasawa監視50000秒 09/27/11 より

平沢進でドームとくれば『スローターハウス5(屠殺場5号)』だけど、
監視5万秒は透明ドームで営みを観察されているようなものだった

さて、問題はすでに平沢作品を揃えてしまったリスナや、平沢進の音楽にしか興味のないようなリスナだ。
そういうリスナが喜ぶような完全な未発表曲はないし、未発表ヴァージョンも少ない。
カセット・テープや動画、MP3のみでリリースされたような作品のCD化もあまりない。
新録のボーナス・トラック、特に平沢ヴォーカルの「地球ネコ」がいちばんの目玉(えらく平易な表現だ)と言えそう。
あとはTVドキュメンタリ『カムイ・ミンタラ』のサウンド・トラックのCD化だろうか。
LDから音楽だけ抽出していたようなマニアには喜ばれること請け合い。
実際の音源は未聴だが、鎮西エンジニアがのべ3か月かけたというリマスタリングにも期待したいところ。

もしかすると「地球ネコ1曲に3万円かよ!!」と年季明けしたリスナたちの暴動が起きるのではないかと心配していたが、twitterで様子をうかがったところ、寛大な反応が多く安心した。
なお、今回の企画にわたしは関与していません(笑)。解説の中野店長やデザインした中井さんといった外部スタッフも選曲や企画には関係していない、完全なるケイオスユニオン内部企画品です。

ボーナス・トラック収録の「densha」「loop」「IDN」は、インタラクティヴ・ライヴに映像提供もしたアメリカのアート・ユニット twenty2product の映像作品に平沢進が提供した音楽。どっかで聴いたような気もするけど(笑)。
現在も動画を見ることができる。
www.twenty2.com/

平沢進 / 20世紀+BOX HALDYN DOME

2012年2月29日発売予定
テスラカイト(ケイオスユニオン)
31,500円

●オリジナル・アルバム
時空の水
サイエンスの幽霊
ヴァーチュアル・ラビット
オーロラ
Sim City
SIREN セイレーン
救済の技法

●シングル
ソーラ・レイ(SPECTRUM 2 TYPE)
バンディリア旅行団(Physical Navigation Version)
ハルディン・ホテル(Fractal Terrain Track)
電光浴(default version)
BERSERK―Forces―
BERSERK―Forces―(GOD HAND MIX)
BERSERK―Forces―(TV version)

●ライヴ・アルバム
error CD

●サウンド・トラック
デトネイター・オーガン 1,2,3
グローリー戦記
ロストレジェンド 失われた伝説の大陸
カムイ・ミンタラ 嶋田忠・森のメッセージ
剣風伝奇ベルセルク
ベルセルク 千年帝国の鷹篇 喪失花の章
Sign/Sign-2

●旬
OOPARTS
Landscapes
計算上のKun Mae

●不幸のプロジェクト
不幸はいかが?

●Global Trotters
Parallel Motives

●ボーナス・トラック
星を知る者(新録)
ルクトゥン or DIE(新録)
地球ネコ(平沢ヴォーカル)
ガーベラ(折茂昌美ヴォーカル/還弦ヴァージョン)
densha
loop
IDN

来なかった近未来

年頭のご報告。
平沢進のエッセイ『来なかった近未来』をPDF形式で単行本化します。

『来なかった近未来』は、1998年12月から2002年3月まで、いまは無きFAMIGA(ニフティサーブのAMIGAフォーラム)7番会議室に「x占拠x:平沢進の“来なかった近未来”」として連載された文章。
10年前からの平沢リスナーなら読んでいるかもしれないが、ニフティサーブといういわゆるパソコン通信のサーヴィス自体がなくなってしまったので、近年のリスナーは誰かが保存したテキストを「回し読み」させてもらうくらいしか目にする機会がなかったし、そもそもこの連載の存在すら知られていないかもしれない。

AMIGAというのは、1985年に発売されたマルチメディア・コンピュータで、平沢進はPVやCGの制作、インタラクティヴ・ライヴのオーサリングなどに使用してきた。発売元のコモドールは1994年に倒産してしまったけど、コミュニティがAMIGAを延命させ、恐ろしいことにことしも新しいモデルが発売予定だったりする。
連載の前半は「平沢進のAMIGA事始め」的な懐古譚が中心となっているが、AMIGAに関する専門的な話ではなく、誰でもげらげら笑い転げながら読めるようなエンタテインメントに徹している。いま読み返してみても充分に面白い。

編集作業は昨年10月に始めたのだけど、文章整理や素材蒐集に思いのほか手間がかかり、2か月以上も費やしてしまった。
すでに終わった連載に素材を揃えるもなにもないだろうと思われるかもしれないが、本文に加筆訂正リミックスが施されたほか、けっこうな分量のAMIGA解説がつく。AMIGAを知らないひとに向けた解説のつもりだったが、豊富な資料写真などはむしろAMIGAユーザのほうが楽しめるかもしれない。
まだ未確定要素もあるので、プレス・リリースとして発表できる段階ではないけれど、おおよその内容はこんな感じ。
各回のタイトルを見ただけでそそられる、かも。

【第1章 近未来のバッタ物】

■近未来のバッタ物
■その組は、電脳科学日本
■大型住宅用コンピューター
■グルよ、わたしはフィリピーナが恐い

【第2章 すすむくん がんばって】

■TRANSGENDER AMIGA
■すすむくん がんばって
■お願いだから1000にして
■ウソつきはAMIGAの始まり
■キミのボードに神の奇跡が降りますように

【第3章 存在してはいけません】

■アメリカ製マウスパッドの傾斜角
■存在してはいけません
■小鳥ちゃんJAZZの巨匠をつつきなさい
■アジアでAMIGA

【第4章 来るかも知れない近未来】

■インタラクティブ・ライブ準備レポート開始
■最後の奉公娘?
■8つの結末
■金属のイジメ方
■来るかも知れない近未来
■課題が見出されすぎるCG
■世界初!本番中にインストールする男?
■大阪前々日、深夜のエコカー暴走
■宙吊りのハードディスク
■シェーの恐怖

【第5章 グルよ、太陽系に連れてって】

■Solar AMIGAへの道 予告篇
■グルよ、太陽系に連れてって
■オニイサン、知りたいのは値段なんだ
■アラブを我が手に
■自殺するアクセサリー
■機械の中の田井中

【附録】

■[FAMIGA特別企画]平沢進さんとアミーガでQ&A
■平沢進 LONG INTERVIEW about AMIGA
■註釈/AMIGA用語解説
■CLASSIC AMIGA LINEUP
■平沢進/AMIGA 略年譜

発売元はケイオスユニオン、編集はファッシネイション、発売日は未定だけど、たぶん2月ころ。
詳細は決まり次第お知らせしますが、まだ確定情報ではないので、ケイオスユニオンへのお問い合わせはお控えください。

A2500

11月の黄昏サラヴァメモ

11月の黄昏 Crépuscule de novembre
2011.11.20(Sun) at サラヴァ東京

  • テノリエリ(tenorierie) http://www.myspace.com/tenorierie
  • 上野洋子 http://www.uenoyoko.com/
  • Shampoo http://www2.biglobe.ne.jp/~shampoo/SHAMPOO/HOME.html

▼初めて入るサラヴァ東京は椅子は60席ほどで、ライヴ・ハウスというよりカフェのように洒落ている。それもそのはずSaravahは1965年にピエール・バルーが設立したヨーロッパ最古のインディペンデント・レーベル、らしい。
▼隣のM田さんが「屋根裏くらいの広さかな」などと言う。もちろんロンドンと同じビルにあった屋根裏のことで、客席の広さはそんなものだが、サラヴァのステージはグランド・ピアノを置けるくらい広く屋根裏の倍以上ある。屋根裏はライヴ・ハウスの単位なのか。

▼テノリエリは、ライヴ前にMySpaceで「予習」した際「谷山浩子meetsテノリオン」とか思ったけど、そう外れてなかったみたい。
▼TENORI-ONによる弾き語りってことで、なかなか聴かせる。小さな風船を次々と割って音を出すのはなかなかなアイディア。
▼TENORI-ONって裏から見てもきれいなのね。

▼上野洋子はモールス信号をフィーチュアしたナンバーからスタートし、お、中野テルヲか高橋芳一かと思ってしまう。
▼ライヴ・コンセプトの「テクノかつファンタジー」というリクエストに応えるため「金沢明子meetsクラフトワーク」なパフォーマンス。「RADIO ACTIVITY/FUKUSHIMA」でソユーズ・プロジェクトとも勝手にシンクロ。
▼プログラマブルな世界最古のテクノ楽器という解釈でパンチカード式オルゴール(シート式オルガニート)で弾き語り。
▼さらには、テノリエリに感化されたたとかでTENORI-ONならぬKAOSSILATORでカオシヨーコな「雨降りお月さん」はなかなかぴったりなアレンジ。

▼Shampooは正装したKCのグランド・ピアノをバックに真っ白い盛装の折茂昌美が歌う「花束のプレゼント」でスタート。
▼横川理彦のヴァイオリン、molekul(PEVO2号)のフレットレス・ベースが加わりバンド編成になると、戦前の場末のナイト・クラブみたい(見たことないけど)な様相でジャズ、シャンソン、ボサ・ノヴァといった要素が混じり合う。
▼「シャンプーmeetsピエール・バルー」といった趣きのサラヴァ東京まんまなステージだったが、ピエール・バルーの「冬のある日」は、この日のためではなくたまたま以前もカヴァーしたこともあったとか。
▼ステージごとに様相の異なるシャンプーだけど、特にこのステージを見られたのは貴重だったかも。コーディネイトした木暮さんに感謝。

Shampoo
デザイナー・天津学さん撮影によるシャンプーのステージ。大きいサイズはfaccebookへ。レポートもここの文章よりわかやすく詳細で素晴らしい。
BLIZZARD DRIVE
Shampooのアルバム・タイトルおよび曲名にちなんだオリジナル・カクテル BLIZZARD DRIVE pix by mazda u

▼サラヴァ余談

  • 前日の高円寺HIGHのステージおよびバック・ステージに集った面々の重複率が高かったけれど、この日、中野テルヲと鎮西暴力音楽技師の2ショットを見られたあなたは幸運かもしれない。
  • 菊池達也、横川理彦、中野テルヲという歴代P-MODELベーシストによる奇蹟の3ショット(わたしは見ていない)に遭遇したあなたは、もう先が長くないかもしれない。
  • そこに三浦俊一まで会していたのだから、全P-MODELメンバの1/3が集結していたこになる。
  • 黒いPowerbookが世界一似合う中野テルヲは、白いiPhoneは世界一似合わないミュージシャンであることも判明。
  • そんな元P-MODELメンバがもっとも気にかけているのが田井中貞利の行方である。
  • 田井中貞利はP-MODEL内のアイドルだったらしい。

11/23附記: 小西さんはサラヴァには来ていなかったそうで(前日の記憶が混濁)その箇所は修正しました。

マルチプル高円寺ハイメモ

4-D mode1 presents Multipel Konversation
2011.11.19(Sat) at 高円寺HIGH

  • 高橋芳一 http://twitter.com/#!/UTS_takahashi_y
  • バチバチソニック http://bbsonic.exblog.jp/
  • monogramme http://seal-s.com/
  • 4-D mode1+Sabrina http://4dmode1.jp/

▼高橋芳一は以前のライヴの印象もあり、アンビエント・テクノ的なサウンドのスタティックなパフォーマンスを想像していたら、中野テルヲに続きまさかのハンド・マイク。ノイバウテンのブリクサを彷彿とさせる唸り声に驚愕。
▼あとできいたところ、平沢進以外で高橋芳一が敬愛するヴォーカリストはデヴィッド・シルヴィアン、ペル・ウブ(デヴィッド・トーマス)、キャプテン・ビーフハート、ダモ鈴木、原マスミらしい。
▼なるほどデヴィッド・シルヴィアン的うねりヴォーカルもありました。

▼バチバチソニックってこんなにグルーヴィだったっけ。前に観た時とえらく印象が違う。
▼005Harryのアタックが強くてスネアが派手なドラムと伊藤英紀のフレットレスじゃないのにフレットレスみたいなベース(なんという幼稚な表現)のコンビネイション。seogram(Vo)のパフォーマンスも余裕が出てきた。
▼PEVO1号のタルボは言及するまでもないのだが、あれ、前からLEDついてたかな。
▼バチバチソニックによる強烈にパーカッシヴな「ATOM-SIBERIA」を聴いたので、翌日、非常に久しぶりに『ANOTHER GAME』を聴いてみたのだが、どうも物足りない。記憶の音はライヴなのだ。005Harryのドラムは田井中さんみたいに派手かつ荒木さんみたいに音がデカくて正確だった。

▼いまのトリオ編成モノグラム(monogramme)のライヴは初めてだが、これまで観たなかではベストではいか。
▼その時々でメンバーも音楽性も変化してきたモノグラムなのだけど、今回は中学時代のメンバーとかでモノグラムの原点。
▼キイボードはシーケンサに任せて、ギター、ベース、ドラムというシンプルな構成、ロックン・ロールでも不思議ではない3ピース・バンドだ。
▼中井敏文のヴォーカルが際立つ。ついうっかり中井さんが歌が上手いってこと忘れてました、すみません。
▼途中、シークレットというかサプライズって感じで、ゲストのケラが登場。一時期は中井敏文も参加していたザ・シンセサイザーズの「だいなし」モノグラムがナゴムから出した「てみやげ」そしてP-MODELの「HEAVEN」と3曲をデュエット。
▼この日は中井本人もベスト・パフォーマンスの自覚と感慨があったそうで、終演後も充実感をたたえていた。

▼4-Dは、ニュー・アルバムにも参加しているというゲストのサブリナから登場。カメラマンだとばかり思っていたので、その正当派ソプラノに驚く。
▼モノグラムの「HEAVEN」に呼応するかのように演奏されためちゃくちゃファンキイなアレンジの「AFTER DINNER PARTY」で盛り上がる。イトケンのドラムも冴える。
▼アンコール「Very」はあのPVのせいでつい笑ってしまう。
▼来年で結成30周年という4-Dだが、mode1の3人はソロでもパフォーマンスできるそれぞれが自立したミュージシャンによるユニットだからこそ、どんなメンバーやゲストが入っても成り立つ。その強みと魅力を活かした記念イヴェントの開催を期待してしまう。

4-D mode1
4-Dのジャケットも手がけるデザイナー・天津学さん撮影による4-Dのステージ(大きいサイズはfaccebookへ)

▼驚いてばっかりだった4時間の余談

開演前に中井さんから、ことぶき光がP-MODEL在籍時代に 「different≠another」をやっていたかときかれた。
P-MODELのライヴにおいて「different≠another」は、伝統的にキイボードが「different!!」とシャウトすると平沢進が間髪入れず「another!!」とシャウトし返すのがお約束になっていた。
高橋芳一の解脱シャウトは印象的だったが、ことぶき光のシャウトは覚えがないなあという話。
(ここで実際には中井さんが、ことぶきさんのモノマネで「different≠another」をシャウト)
あとで調べてみたら、ことぶき光在籍時に「different≠another」は1回だけ1990.9.23にやってるのだけど、その際はゲストのケラが「different!!」とシャウトしたのだった。

沈みたい / 中野テルヲの発振するシグナルとノイズ

震災からこっち、節電のため大出力のアンプリファイア+スピーカで音楽を再生することは控えていたのだが、禁を破ってしまった。
ごめんなさい、すべて中野テルヲというひとが悪いのです。

3月4月と世間的にも個人的にも精神的にも肉体的にもしんどいことが続いて、さすがにちょっと疲れていた矢先に中野テルヲの『Signal / Noise』が届いた。
オリジナルとしては96年の『User Unknown』から15年ぶり、コンピレイション(って言っていいのかな)『Dump Request 99-05』からでも6年ぶりのソロ・アルバム。
これがほんとに心地よいのだ。

自分に限ったことかもしれないが、これまで中野テルヲの音楽というのは、聴くほうを構えさせるところがあった。
それはなにも悪いことではなく、生真面目に、真剣に作った音なのだから、こちらも心して聴かねば失礼という対峙の仕方。
だからまさか中野テルヲの音楽に身を委ねることがあろうとは思わなかったのだ。

レトロ・フューチュアなデヴァイス群で奏でる懐かしいシグナル、安堵するノイズ。
「好きに聴いてください」「聞き流してくれてけっこう」
そんなふうに言っている気がする。

特にM3「My Demolition Work」から「フレーム・バッファ I」「Eardrum」の流れ、ラスト・ナンバでタイトル・ソングとも言える8分7秒の「ファインダー」は、音楽で心身のマッサージを受けるが如し。
我慢して携帯プレーヤやPCで聴いていたのだけど、このサウンドに身を沈めたくてオーディオ装置の前に座った。

M6「Long Distance, Long Time」以外はミディアム・テンポ〜スロウ・テンポの曲ばかり。
中野テルヲが少年時代からなじんできた短波ラジオのチューニング・ノイズ。
UTS(Under Techno Sysytem)の発するプリミティヴな信号音。
シンプルで抑制されたシンセサイザーの発振音とメロディ。
半分くらいはインストゥルメンタルのような気がしていたのだが、聴き終わって確認したら全曲が歌入りだった。
押しつけがましくなく品がある中野ヴォイス。
なにより気持ちがいいのは身体を包み込むようなダブっぽいエコー。

ジャケットがまたいい。
と思ってクレジットを見たら中野テルヲ自身によるアート・ワークだった。
すべてが中野テルヲそのもの。
テクノ・ポップにおけるアコースティック、テクノ・ポップにおけるローファイってこういうんじゃなかかろうか。

このアルバムを聴いたあとに1stアルバムを聴いてみたら、以前とは違って聞こえた。
もしかすると中野テルヲ自身はなんの変化はなくて、受け手である自分が変わっただけかもしれない。

中野テルヲ公式サイト
www.din.or.jp/~teru-o/

Beat Surfers
2011年7月23日には高円寺HIGHにでワン・マン・ライヴ
beatsurfers.syncl.jp/

Signal / Noise

加弦知らず

音源があがってから3週間。
わけあって封印していた平沢進のニュー・アルバム『変弦自在』だが、発売日も迫ってきてそうも言ってられなくなったので開封することとする。
これも仕事だ。

変弦自在 / 平沢進
変弦自在
2010年11月10日発売
ケイオスユニオン(TESLAKITE)
CHTE-0051

バンディリア旅行団

一聴したところの第一印象を列挙してみる。

01: 夢みる機械
ナイロン弦からスカラ・プールへ。アースを取ってスパークで奏でる。優雅な調べでヒエロニムスの回路を通る。大太鼓打ちすぎ。

02: サイレン*Siren*
一団が棺を掲げて角を曲がってくる。小太鼓打ちすぎ。警報鳴りすぎ。神田川の増水じゃないっつーの。泣くっつーの。

03: MOTHER
母になった千代子がどこまでもいつまでも疾走していく。タイ語の経文に乗って。

04: 金星
雷雨の去ったアンデスの空に輝く宵の明星。

05: バンディリア旅行団
低解像度アナログから高解像デジタルHDへ。進化したペルーの草原の中継映像。ティンパニ鳴らしすぎ。

06: トビラ島(パラネシアン・サークル)
ナイロン弦で祝うポリネシアの火祭り。倍量の薪で燃える。地表を埋め尽くす暗雲のごときありえぬ低音。ストレス・ボンドのごとく襲来す。

07: 環太平洋擬装網
暗黒のAPECを呪詛するがごときシンバルにからむデストロイ・ギター。ピアノだって内部は弦楽器。音数多すぎ重厚すぎ。どこが還弦かわからぬほど台無しにする劇的な素晴らしき終焉。

合い言葉は過剰。
オリジナルとの差別化もあるだろう。
やりすぎと言っていいほどやりすぎている。
けれど「もっとやれ」と言いたくなるほど心地よき豊穣な過剰。
溢れだしてキミへと届くように。

このアルバムは「今敏追悼アルバム」と銘打っているわけではないし、全体がそのように設計されているわけではないだろう。
しかし、少なくとも「サイレン」は追悼曲として作っているし、マスタリング後には仏前試聴会も開かれたくらいだ。
M02〜M06の流れは『SWITCHED-ON LOTUS II』と呼びたくなるくらいである。
その流れを笑いを醸すM01とM07で挟み込んでいるのだから恐るべき調和。

というわけで、やはりこのアルバムはしばらくの間は聴き込むことができそうにない。
よって再封印。
どうせライヴのころのはまた聴くことになるだろう。

SWITCHED-ON LOTUS

電子書籍と呼ばれない

電子書籍と呼ばれて」と書いたもののさっぱり電子書籍とは呼ばれない『改訂復刻DIGITAL版 音楽産業廃棄物』が10月16日に発売された。

通販がメインなのでダウンロード開始とか発送開始というのが正しいところだろうか。
パッケージ版は製版データ入りという衝撃の仕様なのだが、出版業界人でなければさほど衝撃は受けないと思われる。
いや出版業界人でもそんなに驚くことじゃないか、ほかに例がないってだけで。
これは電子書籍というものへの皮肉という意味合いもあったのだけど、ま、いい。

当初、DIGITAL版はダウンロード販売だけのつもりだったのだが、Shop Mecano 店主の中野さんが強く推奨するので、予約が500以上集まったらパッケージ版も作ることにした。
だってほら、パッケージもんって作るのも売るのもめんどくさいじゃん。
そうしたら、予約が500も集まっちゃったから大変。
予約開始前からコンテンツはほとんどできあがっていたので、中身に関してはよかったのだけど、問題は外側である。
より正確に言うならば外側をデザインするひとである。

もともとはパッケージ版を出すとしても、ブロードバンドが一般化する以前のLinuxみたいにダウンロードできないひとへの救援策くらいに思っていたので、単にDVD-Rに焼いただけのバルクDVDでいいんじゃないかと考えていたのだが、せっかくだからP-MODEL30周年/平沢進20周年の記念品的な意味合いも持たせて、手にして嬉しいものにしようじゃないかという考えにシフト。
そこで、おなじみイナガキキヨシ巨匠にお願いしたのであるが、クライアント泣かせで有名なのである、いろんな意味で。

メイルのログによると依頼をしたのは7月24日。
超意外なことに8月6日には第1案があがってきている。
それが、コレ。

カッコいいと思う。
思うが、うーん、店頭販売だけだったらまだしも、どうやって発送すんの?
袋に入れて、折れたり割れたりしないように箱に入れて……あ、それだとデザインのコンセプトとズレる?
そんなやりとりをしていろいろ検討したけれども、見積もりの結果、穴開け文字の「型代」だけで40万円くらいするとかで、価格が500円ほど上がってしまいそうなため、あっさり挫折。
せっかく「どこでもCDクリップ」みたいなのまで探してもらったんだけどね。

途中、USBメモリ案なども浮上するもやはりコストで断念。
ピザ・ケース案を経て8月23日に出てきたのがコレ。

う〜ん。
店頭でコレが並んでたら確かにオカシイ。
某監督も画像を見て軽く笑った。
でも、買ったひと、どう思うだろ。
パッケージを開けたあと、どうやって保管するのよ、発送の時にどうやって梱包するのよ。
などなど難点が多かったものの、とりあえずと見積もり依頼を出したところ、CDが入る大きさの食品トレイの手配がつかず、型から作るとコスト高になるというのでまたしても玉砕。
同時提出された通常のDVDケースを使用する案へと方向性は固まったのであった。

DVDのスリーブ(外箱)デザインにはこういうアイディアもあって迷ったのであるが、現行のものに決定。
このデザインだと版を重ねるごとにどんどん写真が入れ子になっていっておかしかったのだけど。
でもって、デザイン案があがってから実際に入稿データができるまで1か月を要したところが巨匠が巨匠たる所以であり、まったく気が抜けない。
最終ヴァージョンはコレ。

実はこのデザイン、質感を出すため、いったん出力したものをさらに撮影し、それを印刷用データにしたそうである。
裏には「ヘソ」も残っている。
さらに梱包用段ボール箱も作った。

限定1000枚で作ったパッケージ版は結果として、すでに700枚以上売れ、Mecano納品分も加えると800枚は捌けている。
対してダウンロード版は30程度。
ダウンロード版完敗。
これも中野店長の読み通りである。
中野店長にも完敗。
ここらへん真面目に分析すると面白そうなネタではある、しないけど。

そして、パッケージ版が好評なのは2か月を費やした装幀のおかげでもある。
パッケージ商品が減っていくご時世だからこそ、パッケージとしてのありがたみがないとパッケージで出す意味はない。
そういう当たり前のことを改めて感じた次第である。

新説P-MODEL史

本日発売の『キーボード・マガジン 2010年10月号 AUTUMN』の特集「アーティスト列伝 P-MODEL」を電子書籍よろしくPDFで読んでいる。
自分で言うのもなんだが面白い。
いや、自分で書いたところ以外が面白い。

メインであるP-MODEL歴代キーボード・プレーヤの取材記事は感心することしきり、発見も多い。
さすが四本淑三だ。
機材知ゼロ・楽器知ゼロのわたしでは「プレーヤの心ライター知らず」でこうはいかない。
というか、いままでこういう側面から捉えたP-MODELの包括的記事ってなかったのではないか。
キーボード・プレーヤを軸として機材面・サウンド面から見たP-MODEL史。
ほんと新しいP-MODEL像が見えてくるといっても過言ではない。

取材には同席させてもらったのだが、田中靖美というひとは音楽から離れていてもミュージシャン的かつノン・ミュージシャン的でめちゃくちゃカッコよかった。
同行した特集企画者・中井敏文(モノグラム)感涙。
よく似ていると言われる初期XTCと初期P-MODELだが、同じフレーズも同じ音色も使ったことはないそうで、似て聞こえるとすれば、バンドのアンサンブルのせいであろう、と。

國崎晋編集人が特別寄稿したコラム「跳ねる田中靖美」も名文だなあ。

詳細な解凍P-MODELのサウンド解説ってのも初めてじゃないかな。
ライヴはほとんどシークエンサ任せだとみんな思ってたはず(自分だけか?)だが、リアルタイムで処理していた部分も多かったという。
ヤスチカのキックが実は音は出ていなくてシークエンスのテンポを作るためのトリガーだったとか、驚き。
あの「キーボード要塞」は伊達ではなく、裏では信じられないほどキテレツなことをやっていたらしい。
あ、詳細は記事を読んでくださいね。
そういえば記事にはならなかったけど、80年代のことぶき光がいっつもライヴでガム噛んでたのは、緊張感を高めるための彼なりの工夫だったらしい。

中野泰博Mecano店長による全アルバム・レヴューもものすごい勢いで「P-MODEL早わかり」できちゃう力作。
スペースの都合で入れられなかったけど、廃盤となっている解凍P-MODELの2作は「ゴールデン☆ベスト」というカップリングで入手可能なので、ぜひMecanoで買おう。

話は前後するが、自分で書いたP-MODEL略史も、細かいことは忘れて短くまとめることで実は自分なりに発見があった。
これまで見えなかった骨格が見えたというか。
けど、あんまり書けることじゃないなあ。
要は『パースペクティヴ』でP-MODELはいったん終わってるってことなんだけど、わかるひとにはわかるよね。
掲載された文章自体はビギナー向けで新しい情報なんかないので、予備知識がある方は2ページとばしてください。
あ、その2ページにも写真は珍しいのもあるか。
ほかのページも含めて書籍『音楽産業廃棄物』には載っていないレア写真がけっこうあります。
よく見る写真にしてもやっぱり大きいと迫力が違うしね。

一応、ラストには平沢進のインタヴューもあって、例の煙に巻く名調子で楽しませてくれる。
いつも感心するのは、この記事によらず田中靖美と平沢進の発言というのは、申し合わせたように整合性がとれていること。
不思議に思って平沢進に質問してみたことがあるのだが「なぜ田中とはP-MODELを共有できたかがわかるでしょ」との答え。
P-MODELはノイズと誤用のバンドである、か。
最後の最後で14ページにわたる大特集を台無しにするような「オチ」までつけてくれてちゃってる。

キーボード・マガジン
キーボード・マガジン 2010年10月号 AUTUMN 2010.年9月10日発売 リットーミュージック