発掘原稿: Limbo-54 への道 (1)

インタラクティヴ・ライヴ「LIMBO-54」に関するFAMIGAへの投稿メモのようなものが発掘された。
技術寄りの話なのでAMIGAを知らないひとにはあまり面白くないだろうし、全16回もあって長いけれども、この際だから整理しなおして公開してしまおう。

タイムスタンプからすると2003年2月くらいからメモを作り始めたようで、最終更新は2004年1月。
インタラクティヴ・ライヴ「LIMBO-54」開催が2003年4月28日から5月5日にかけてで、そのDVD『Interactive Live Show 2003 LIMBO-54』のリリースが2003年11月26日なので、そのあたりに書き留めておいたのだろうと思う。

ではまず第1回。


Interactive Live 2003 への道 — その1 復活の野望篇

お題に「Interactive Live 2003 への道」とあるように、FAMIGAではすっかりおなじみのミュージシャン、平沢進さんのコンサート“LIMBO-54”の準備段階裏話みたいなものです。
もちろん、今回のライヴもFAMIGAのメンバが協力し、Amigaが大活躍しました。
これも音楽寄りの話ではなく、要はAmigaのメンテナンス話で、PowerTowerやMediatorPCIなど最近のクラシック・アミーガ事情にまつわるエピソードがけっこうありますので、書かせていただこうと考えた次第。
実はずいぶん前に書きかけたままほったらかしにしていたため、すでに記憶はかなり薄れているのですが、ライヴDVD『INTERACTIVE LIVE SHOW 2003 LIMBO-54』も出ることですし、これを機に投稿したいと思います。

話は2002年3月にさかのぼります。
当時、平沢さんは2002年末に新作のリリースとライヴを予定しており(実際は翌年になりましたが)アルバム制作にもライヴにもAmigaに活躍してもらう必要がありました。
しかし、平沢さんがメインに使っていた2台のAmigaは、両方とも故障中とのこと。
1台はHighFlyer (*1)で拡張したA4000で、こちらは不調ながらも動作するそうですが、ノーマルなA4000(D)はまったく起動しない状態。
早急になんとかせねばなりません。
というわけで、平沢さんからは以下のような増強プランが提案されました。

1.起動しないA4000の蘇生
2.HighFlyer4000の安定化
3.ノーマルA4000とHighFlyer4000を下記の同仕様にする

  • CyberStorm PPC搭載
  • RAM増設
  • Cybervision 64/3D などグラフィックカード搭載
  • ノーマルA40000にPARとTBCを搭載(HighFlyerには搭載済み)
  • ネットワークカード搭載
  • HighFlyer4000にScalaMM400インストール(ノーマルA4000にはインストール済み)

4.両機のタワー化
5.液晶モニター化

検討の結果、結局、CyberStorm PPCとCybervision 64/3Dは不要という結論になりました。
要は、平沢さんの作曲作業やライヴにはそれらのものがなくてもよく、ゴージャス化目的でなくてもよいものを搭載するとロクなことにならないのがAmigaの常と(笑)。

ここで平沢さんのインタラクティヴ・ライヴの基本となるAmigaシステムをおさらいしておきしましょう。
中心となるのはScala, Bars & Pipes, PAR (Personal Animation Recorder), そしてGenlockです。
Bars & PipesによるMIDI出力、PARによる映像(アニメーション)出力、Scalaからの映像出力、Genlockによる映像の合成、それらをすべてScalaで制御します。
物理的には、PARからのコンポジット出力とScalaなどAmigaのRGB出力はGenlockに入り、Genlockで合成された映像が会場のスクリーンに投影されます。
このScala, Bars & Pipes, PARの操作画面はすべてWorkbench画面上のウィンドウではなく、アプリケーションの独自スクリーンを使うのでグラフィック・カードは意味がないわけです。
(Bars & PipesはAmigaのネイティヴ・スクリーンではなく、グラフィック・カードの表示を使うことができますが、Workbench画面上のウィンドウで表示するわけではありません)

というわけでグラフィックス・カードの重要度は低いことになります。
グラフィックス・カード(フルカラーボード)よりもスキャンダブラ/フリッカフィクサのほうが導入する意味があるのではないか、というのが結論です。
折良く、このころSoftwareHutでは「VideoToasterやGenlockでも使える」のがウリのショップオリジナル製品ToastScanの発売がアナウンスされていましたのでこれを導入する方向に決めました。

アクセラレータは、ノーマルA4000にはコモドール製A3640(68040/25Mhz)が、HighFlyer4000にはMacro Systems製WarpEngine4040(68040/40Mhz)が載っています。
A3640については性能はともかく、RAMスロットがないので、マザーボード上の16MBが限界です。
RAMを増設するには、ほかのアクセラレータを載せ換えるか、RAMが増設できるボード類を搭載する必要があります。
一方、WarpEngine4040に関しては、そのパフォーマンスで平沢さんは不都合なしとのことでしたが、もはやWarpEngineは新品では売っていないので、2台ともWarpEngineで揃えて環境を整えるのは難しい。

2台のAmigaを「同じ仕様にする」というのは、1台がコケた時のバックアップとしてもう1台を使うためであり、不測の事態が起こりがちなライヴなどでは重要になってくるわけです。
2台のマシンをハードウェア的にもソフトウェア的にも同じ構成にしておくとパーツを入れ替えたり、ハードディスクを載せ換えたりもしやすく、アクシデントへの対応、不具合の検証もしやすいですからね。
(と、力説しなくても年季の入ったAmiganならば周知でしょうか)

さて、新品のアクセラレータで揃えるとなると、意外と選択肢は狭まります。
というか、A4000用のアクセラレータで新品で入手が容易なのはCyberstormくらいしかない(笑)。
Cyberstormは040か060、それぞれにPPCがついたものが出回っています。
PPCアクセラレータは、将来のOS4では必須とされますが、クラシックAmigaでは、一部のアプリケーションしかPPCに対応しておらず、これもまた、現状の平沢さんのシステムにとっては不要です。
将来のOS4へ備えて導入しておくという考え方もありますが、OS4が出た時にどんなPPCカードが出ているかわからないですし、OS4を使うにはAmigaOneなどマザーボードを新調したほうがいいかもしれません。
未確定要素がありすぎ、OS4への対応は、OS4が出た時に考えればいいということでPPCは見送られました。
というわけで、候補に残ったのはCyberstorm MK III(060/50MHzまたは040/40MHz)になりますが、どうせ新調するなら040ではなく060でもいいじゃないかという感じで060に決定しました。

*1…平屋のデスクトップ型A4000を2階建てにする強引な拡張キット。
スロット、ハードディスク収納スペース、電源が増える。
しかし、電源は2個に増えるだけで、増やした電源は前面のスウィッチからはオンオフできない。
また、インチネジとミリネジが混在しているようないいかげんな作りで、組み立ても分解も非常にめんどくさいです。
www.amiga-hardware.com/showhardware.cgi?HARDID=1331

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