「平沢進/P-MODEL」カテゴリーアーカイブ

発掘原稿: Limbo-54 への道 (10)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
FAMIGAへの投稿目的で書かれているため、AMIGAに関する予備知識のあることが前提で、システムやパーツに関する記述も説明ありませんが、この回はAMIGA事情を知らないとわかりにくいかもしれないので、ちょっと解説。
AMIGAにはオンボードでグラフィック・チップが載ってますが、拡張スロットにグラフィック・カードを搭載することも可能です。ここらへんは現在のPCと同じ。
ただ、AMIGAの場合、アプリケイションによってはオンボードのグラフィック・チップが出力する画面(ネイティヴ・スクリーン)でしか動作しないものも多いわけです。
特にAMIGAのハードウェアと密接な関係にあるグラフィック系ソフトは、ネイティヴ・スクリーンにしか出力できないものが多い。
しかも、グラフィック・カードの出力するスクリーンは一般的なPCモニタに映せても、ネイティヴ・スクリーンは映せなかったりするので、2種類のモニタを使用するとか、スキャンダブラ(ToastScanについては第7回で解説)と併用するとか、めんどくさい状況が生まれます。
この回はそんなお話。


Interactive Live 2003 への道 — その10 その後のToastScan篇

ToastScanはSuperGenと一緒に使えない――。
その事実は第5回で判明したわけですが、それでToastScanがお払い箱になった、というわけではありません。
SuperGenで使えなくとも、ToastScanには液晶モニタでAmigaを使うという用途がまだ残っています。

ところがそう簡単にいかないのがAmigaでしょうか。
平沢さんのスタジオで使用している液晶モニタは3台ともToastScanの出力を表示することはできませんでした(笑)。
いや、笑いごとじゃないんです。
NTSC:HighResやHighResLacedといったスクリーンモードでは640×240, 640×480, 720×400といった解像度で表示しますが、スタジオのモニタはそれらに対応しておらず、800×600以上じゃないとダメだったんです。

また、スタジオの液晶モニタはToastScanなしでDbNTSCやMultiScanといったモードで表示することもできません。
解像度が対応していないだけでなく、水平周波数の下限が30kHzあたりまでちゃんと映るモニタでないとDbNTSCやMultiScanでは表示できないそうなので
そちらの問題もあるかもしれません。
平沢さんから液晶モニタの詳しい仕様はきいてませんが、これはToastScanのせいでも、Amigaのせいでもなく(事実、三吉さんの液晶モニタではToastScanは有効だったようです)単にモニタの問題だったようです。
でも、困りました。

平沢さんのスタジオはソーラー・システムで電力供給しているので、できるだけ低消費電力の液晶モニタを使いたいところです。
ちなみに平沢さんはエミュレータで済む場合はラップトップに仕込んだUAEのAmigaで作業しています。

液晶にこだわるなら、ToastScanの使える液晶を探すほかに15kHz対応の液晶モニタを探すという手もあります。
SONYのCPD-L150はAmigaにばっちりなそうですが、このころナナオ(EIZO)やトートクの液晶を物色したりもしていました。
ま、実際は買いませんでしたけれども。

では、どういう方向に行ったかといいますと、やはり定番のグラフィックス・カードの導入です。
Amigaのデスクトップで作業する時はグラフィックス・カードを使い、ネイティヴスクリーンを使うアプリはスキャンダブラ、という両刀使いです。

グラフィックス・カードを使うと、一般的なPCモニタが使えてデスクトップがカラフルでゴージャスになるという見た目以外にも次のようなメリットがあります。

  1. 表示領域が増える
  2. ChipRAMの使用量が減る
  3. システムへの負荷が減る

(識者の方へ:このあたり勘違いがあったら訂正お願いします)

ただし、Amigaでグラフィックス・カードを使用するには
基本的に以下のいずれかの環境が必要になります。

  1. 2系統入力のあるモニタ
  2. 映像入力切り替え機
  3. モニタx2台

PicassoIVなどパススルー機能のあるグラフィックス・カードならばカード自体で自動切り替えができて両刀使いも気になりませんが、いかんせんすでに製造中止です。
Cybervision64/3Dは現行商品のようですが、オプションのフリッカフィクサはもう製造していないようです。
あったとしても自動切り替えができるのかどうかは不明です。
(お持ちの方がいたら教えてください)

とはいえ、平沢さんがよく使うBars&Pipesをはじめとしてグラフィックス・カードに対応しているソフトも多いので、大部分の作業は液晶モニタで済みます。
未対応のソフトであっても、NewModeというツールで対応させることが可能だったりします(ハスヲさん、ありがとう)。
ただし、ライヴの要であるScalaで、TVとの融合が必要なソフトだけにネイティヴ・スクリーンでしか表示できませんが、そういうのはToastScanとCRTモニタで表示させればいいわけです。

そういうわけで、最初はまずZorroスロット用グラフィックス・カード導入を検討したのですが、今や新品で容易に入手可能なのは前述のCybervision64/3Dくらいしかありません。

今さらZorroスロット用を購入するくらいならばMediatorPCIで安価で高性能なPCI用グラフィックス・カードを使ったほうがいいのではないかという方向へ傾きました。
(といっても、今やAT機用のグラフィックス・カードはAGPに移行していてPCI用は品薄ですが)
幸い、PowerTowerにPCIドータボードはついているのでMediatorPCIだけの出費で済みます。

結論といたしましては、MediatorPCIとVoodooをSoftwareHutに注文し、交換マザーボードと一緒に送ってもらうことにしました。
MediatorPCIはグラフィックス・カードだけでなく、ネットワーク・カード、サウンド・カードなども使えるので夢(もしくは悪夢)が広がります。

そのような妄想を繰り広げていたころ世間ではお盆ですっかり地獄の釜の蓋が開いたにもかかわらず、わたしは単行本の締め切りが近くて仕事をしていました。
深夜、事務所の入っているビルの下水が故障し、汚水が逆流してさんざんな目に遭ったのも今はいい思い出です(笑)。
幸い、Amigaが置いてあった部屋には汚水が入ってこなかったので難を逃れました。

次回は「帰って来いよ」または「かくも長き不在」をお送りする予定です。

PicassoIV
アドオンのスキャンダブラ装着済みの
Village Tronic Picasso IV
Cybervision64/3D
カード下部のへこんだ部分にオプションのスキャンダブラを装着できる DCE Cybervision 64/3D

発掘原稿: Limbo-54 への道 (9)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
本文のあとに『来なかった近未来』よりAMIGA4000の解説を引用。


Interactive Live 2003 への道– その9 — PowerTowerは2度死ぬ篇

2002年8月6日、筑波にある平沢さんのスタジオへと搬入されたPowerTowerA4000がその後どうなったかといいますと、まったくの役立たずぶりを発揮していました。

その症状はといいますと、起動しない(笑)。
起動中に調子が悪くなるのではなく、起動する時としない時があり、最初は起動率50%くらいだったのが30%を切るようになり、終いには0%すなわちまったく起動しないという事態に。

原因はぐらついていたPARボードの接触不良などいろいろ想像されました。
最悪なのは炎上事件の再来ですが、電源すら入らないということはないそうでLEDやリセットスウィッチが外れてショートしているということはないようでした。
電源は入るが、濃いグレー画面が出るだけでFDにもHDにもアクセスせずまったく起動しない状態らしいです。
平沢さんの調査によると、どうやらPARよりもドータボードがあやしいとのこと。

となると、やはりマザーボードの不良でしょうか。
マザーボード1号の返品によってやってきたこのマザーボード第2号もかなり汚れた中古品でした。
ニッカド充電池は外され、コイン電池ホルダに付け替えられていましたが、時計機能は働かず、どうやらこのマザーも時計チップが死んでるようです。
液漏れ痕もあり、信頼性が低いです。

しかし、原因を探っている暇はなく、そろそろ平沢さんの新作スケジュールが迫ってきています。
作曲にはAmigaが必要です。Bars & Pipes なくして平沢さんは作曲できません。

というわけで、8月15日、PowerTowerA4000は筑波から戻ってきました。まるで出戻り娘です。
しかし、お預かりしていた平沢さんのA4000もHighFlyerも、まだまともに動きません。
入れ替わりに筑波へ旅立ったのはわたしの4000Tです。頑張って奉公してくるのだぞ。

ところで、わたしは常日ごろ無機物や動物を擬人化した表現は、するべきでないと周りの者を戒めております。
しかし、ことAmigaに関してはついつい擬人化してしまいます。なぜなんでしょう。

それはさておき、出戻りPowerTowerはいろいろいじくっているうち動くようにはなりました。
原因はやはり、ZIII/PCIドータボードのようです。
ドータボードが悪いのか、マザーボード側のコネクタが悪いのかはわかりませんが、かなりネジをきつく締めて圧着しないと接触不良を起こし、そのエラーのために起動しないようです。
ドータボードの接触不良時にはハードディスクにもアクセスせずシーンとなっている、もしくは真っ暗な画面にノイズが走るという状態になります。
単なる接触不良ならば、ドータボードを認識しないだけで起動してもよさそうなものですが、それ以上は素人のわたしにはわかりません。

さらに悪いことには、PARがぐらつかないように押し込むとドータボードが浮き、ドータボードを押し込むとPARが浮くというまさにあちらを立てればこちらが立たず状態。
ちなみにPARの接触不良時にはハードディスクにはいくが立ち上がらない、または画面が黄色くなったりノイズが走ったりするいう状態になります。
ひょっとするとマザーボードのパターンのどこかに亀裂が入っているのかもしれません。

とにかく、このような状態では「おうちで使う用」ならまだしも、輸送の衝撃にも、ライヴ中の振動にも耐えられないことは確実。
SoftwareHutとの返品交渉にはひと悶着ありましたが8月20日、マザーボード2号はアミーリカへと帰っていきました。
中古とはいえ、保証付きでほんとよかったです。

このころ実は、Windows版のScalaを使うのはどうか、という検討も平沢さんはされていました。
しかし、オーバーレイをはじめとしてAmiga版Scalaでないと達成できない機能があり、見送られる結果となりました。
そんなこんなでやっぱりAmigaじゃなきゃいけないわけですが、こんなに問題山積で次回はいったいどーするよ。


『来なかった近未来』より

AMIGA4000

新世代チップセットAGA搭載のデスクトップ機。
グラフィック分野でのプロフェッショナル・ユースを想定したフラッグシップ・モデルで、72pinのSIMMスロットやIDEインタフェイスを搭載するなど、AT互換機やMacintoshを意識した設計となった。
拡張スロットはAMIGA3000との互換性が高く、アクセラレータやVideoToaster4000をはじめとする多種多様な拡張ボードが発売された。
AMIGA2000と比べると筐体が小さいため、より拡張性を高めるタワー化キットもサードパーティからリリース。
2000年以降もPowerPCアクセラレータやPCIバスなど、新しい拡張機器が発売されている。

AMIGA4000
平沢進が使用していたAMIGA4000

AMIGA4000T

Commodore倒産後に Amiga Technologies(Escom)からリリースされたフルタワー型のワークステイション。
Commodore末期の1994年に極小ロットがリリースされたA4000Tとは、筐体デザインもマザーボードも異なる。
基本性能はAMIGA4000と同じだが、IDEコントローラとSCSIコントローラの両インタフェイスを搭載し、デストップ型のA4000に比べドライブ・ベイや拡張スロットの数も多く拡張性は遙かに高い。
Videoスロットが2本あるため、PicassoIVなどのグラフィック・カードとVideoToasterの両方を同時に搭載できる。

AMIGA4000T
インタラクティヴ・ライヴ“LIMBO-54”でも使用されたAMIGA4000T

発掘原稿: Limbo-54 への道 (8)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
写真がいろいろ発掘されたので本文のあとに掲載しました。


Interactive Live 2003 への道 — その8 HighFlyerお前もか篇

2002年8月6日、筑波のSolarStudioから動かないノーマルA4000と、動きの悪いHighFlyerA4000が運ばれてきました。
入れ替わりにPowerTowerA4000は筑波へ運ばれていきました。

状況把握のためとりあえず、A4000とHighFlyerA4000は全部バラします。
どちらも非常に分解しににく、けっこう手間取りした。A2000のほうがずっとラクです。
A4000の設計者って、あまりメンテナンス性は考慮しなかったのではないでしょうか。特に前面パネルの外しにくさといったらもう。

マザーボードの状態を観察したところ2台ともニッカド充電池の液漏れで腐蝕しています。
とりあえず半田鏝で液漏れバッテリを外し、腐蝕箇所はアルコール系接点復活剤で洗浄しました。

もともとA4000にはCommodoreのA3640が、HighFlyerA4000にはMacroSystemsのWarpEngine4040が、それぞれ載っていました。
このWarpEngineは問題があるかもしれないと平沢さんから聞いていましたので、A3640でテストしてみます。

HighFlyerはFDからの起動を確認。
A4000のほうはやはりダメで、真っ赤な画面が出て起動しません。
「赤」はKickstartROMのエラーらしいので、HighFlyerのROMと取り替えてみます。
(A4000は3.1ROM、HighFlyerは3.0ROMでした)
A4000を3.0ROMで起動してみると、こんどは通常の起動前の色(超ダークブルー)にはなるのですが、FDくれくれ画面にならず、それ以上うんともすんとも言いません。
逆にA4000に載っていた3.1ROMでHighFlyerを起動しても問題ありません。
ROM自体には問題ないようです。

A4000のはほうっておくことにして(笑)HighFlyerA4000の整備に取りかかることにしましょう。

液漏れによる機能障害チェックのため、新しいバッテリを取り付けて時計機能の確認。
……ダメです。
時間を保存するチップが死んでいると思われます。周りの緑青に侵蝕されたようなチップ類もかなり逝っている可能性大です。動いてるほうが不思議(笑)。
動いているうちにハードディスクのバックアップを取っておきます。

実はすでにA4000のハードディスクは逝ってしまっていてカコーンカコーンン…という、わかる人にはわかる死亡ハードディスク特有のもの悲しい異音を発しています。
HighFlyerA4000のハードディスクも相当の年代物なのでいつ逝ってもおかしくありません。

というわけで新しいHDを探さなくてはなりません。
しかし、IDEにしろSCSIにしろ、昨今の大容量ハードディスクは認識しない可能性が高いです。
CyberStormのUW(ウルトラワイド)SCSIが精一杯新しいコントローラですがそれでももう5年ほど前のチップのはずです。
中古ディスクをあたるという手もありますが、ライヴで使うには信頼性が低くなります。
ここはダメモトで新品にチャレンジするしかないでしょう。

まずは、相性問題の少ないと言われるSCSIから。
秋葉原を探し回ってようやく9GのUW-SCSIをゲットしてきました。
しかし……認識しません。
ターミネータのせいかなとか、かなり試行錯誤をしましたが、どうもダメっぽいです、諦めます。

それではIDEにトライしてみようかと考えていた8月13日、世間的にはもうお盆で地獄の釜の蓋も開こうという時節。
だしぬけにHighFlyerA4000のマウスが横にしか動かなくなりました。
起動中にマウスの抜き差しをしたような覚えはないのですが…。ハードディスクどころではありません。
と、困り果てているころ、筑波でも困り果てている人がいました。

次回、PowerTowerなんか動くもんか、です。

A3640
Commodore純正のCPUアクセラレータ A3640

A3640 Clock
A3640は本来MC68040/25MHzだが、CPU(MPU)とクリスタルをさしかえ、コントローラをジャンパして33MHzにクロックアップしている(クリスタルの1/2の速度で動作する仕様)

Warp Engine 4040
A4000マザーボード上の MacroSystem Warp Engine 4040

A4k_leak
マザーボード上のRTCバッテリの液漏れ痕

発掘原稿: Limbo-54 への道 (7)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
そのわりにずいぶんディテイルまでリアルに描写されているのは、記憶だけでなく、メイルのログなど記録もとに書いているためです。
本文のあとにスキャンダブラについての解説を掲載しました。


Interactive Live 2003 への道 — その7 PowerTowerA4000炎上篇

話は2002年7月に戻ります。
PowerTowerA4000には次の問題が発生していました。

(1)熱問題

耐久テストのため、Scalaでムーヴィを3時間ほど再生していると音声・映像の出力がおかしくなり、ワークベンチ画面もフリッカがひどく、不安定になりました。
電源を切って数時間ほうっておいたら直りましたが、どうやら熱のせいのようです。ほかのスキャンダブラ同様、ToastScanもかなり熱くなっていましたし、ケース(筐体)の電源付近、上部もかなりあたたかくなっていました。
ケースを開けてみると、CPUはファンで直接冷やしてるのでそんなに熱を放出してません。
問題はPARとVideoToasterです。
両方とも使ってなくてもかなり熱くなるんですね。
そこで、5inchベイ収納式の空冷ファンをに取り付けてみました。
けっこういい感じで風が回って、熱問題は解決かと思われました、が…。

(2)衝撃・電源問題

ケースの上部にキーボードを乗せる、軽く叩くという程度の衝撃で電源が落ちる、再起動するという問題も頻発していました。
CPUの接触不良やマザーボードのせいではなく、どうも電源関係が怪しいようです。
また、たまに電源が入らないこともあって、電源ケーブルの抜き差し、放置、といった対策で復旧(?)していました。
衝撃落ち、電源不入は同一の原因かもしれません。

記録によりますと、7月13日深夜のこと。
動作チェックしているうちに、とうとうどうやっても電源が入らなくなりました。
そこで、手持ちのATX電源と交換したところ(PowerTowerで使われているのは普通のATX電源のコネクターを変換したものです)起動するようになりました。
やはり電源が壊れかけていたのでしょうか。

ところが、本体から外したあとに念のため再度チェックしたら、壊れたはずの電源が動作しました。
謎ですが、あまり深く考えないことにしてケースも閉め(衝撃で電源が落ちる現象は直っていませんが)今日はこれで終わりにしようと思いました。

(3)PowerTowerA4000炎上

すると突然、ケースの排気口からもくもくと煙が!!
一瞬、すべて台無し…すべて弁償…という言葉が頭を過ぎり、在りし日のPowerTowerA4000の姿が走馬燈のように駆けめぐりながらも
条件反射で電源を切り、ケースを開けてみました。

HDDアクセスLEDとマザーボードを接続するビニール線が端から端まで焦げていました。
ケース前面のリセットスウィッチ、パワーオンLED、HDDアクセスLEDとマザーボードやドーターボード上のコネクタを結ぶケーブル(ビニール線)が束になっているのですが、焼け焦げたのはHDDアクセスLEDの線のみです。
幸い、マザーボード上のコネクタ附近に焦げはありません。
ほかの部分も異常がないように見えます。
燃えたのはビニール線だけだったようです。

つまり、HDDランプ用の線のどこかがショートして線全体が電熱線のようになったのだと思います。
電源交換など保守作業中になにかしでかしてしまったのでしょうか。

(4)解決篇

LEDケーブル類の束を外して恐る恐る電源を入れたところ、意外にも正常に起動しました。
電源、マザーボード、アクセラレータといった主要部には問題ないようです。
不思議なことに、衝撃で電源が落ちる現象や電源オンオフの不具合も直っています。
これから察するに(1)〜(3)の問題はすべてLEDケーブルの接触不良または短絡が原因で起こっていたのかもしれません。

燃え落ちたHDDアクセスLED用ケーブルのLED側接続先をチェックするため、ケースを分解しました。
LED類は1枚の小さな基盤に収められ、本来はフロントパネルの所定位置にピンで固定されているはずです。
しかし、そのLED基盤は完全に外れており、基盤の裏側が金属シャーシに接触する状態になっています。
きっと、そのためにショートしてしまったのでしょう。
電源の不具合もそれで説明がつきます。ちょっとした衝撃で電源が切れたり、再起動していたのは、リセットスウィッチがショートでオンオフしてしまったためでしょう。
電源が入らなかったのもショートのためだと思います。
(現在、PowerTower4000は手許にないため、このあたりの構造は記憶を頼りに書いており、基盤の説明など細部は間違いがあるかもしれません)

LED基盤はネジ留めこそされていないもののプラスチックのピンでかっちりと固定されているべきもので輸送時の振動で外れるとは思えません。
たぶん最初からきちんと固定されていなかったのでしょう。

また、PowerTowerが到着して初めてケースを開けた時にまろび出てきたネジやプラスチックの破片の正体もわかりました。
これらはフロントパネル固定用ネジとそのネジ穴の破片だったようです。
6箇所あるフロントパネルのネジ穴のうち2箇所が破損していました。
たぶん、回しにくい場所にネジがついているのでヘンな角度でネジを入れてネジ穴を壊してしまったのだと思います。
このようないい加減な組立をする人間ならばLED基盤を適当にくっつけていたとしても不思議ではありません。

そう思うと自分の落ち度がなかったような気がして安心します。
というわけで原因も解明し、晴れ晴れと歌をうたいながら半田鏝を操りケーブルなどありあわせのパーツで復旧しました。

その夜、アメリカから日本に核ミサイルが降り注ぐ夢を見ました。
持って逃げる荷物にラップトップPCを入れるあたり、妙に生々しかったです。
ブッシュ政権によるイラク攻撃が話題になっていたころですね。

次回、HighFlyerお前もか、の巻。


原稿にたびたび出てくるスキャンダブラ(商品名ToastScan)というのは、AMIGAのRGB出力(水平走査周波数)を15kHzから約2倍の31kHzにして一般的なPCモニタが使用できるようにする機器。
AMIGAは、80年代にはまだ高価だったPCモニタを使用しなくても、TVモニタに映せるようヴィデオ出力を標準装備していたが、それに合わせてRGB出力の水平周波数も15kHzとなっていた。
80年代のPCは低解像度だったので、そうした低い水平周波数帯を使うPCも珍しくなく(NECのPC98は24kHzだった)80年代にはAMIGA専用モニタ以外にも15kHzや24kHzあたりが使えるデュアルシンクやトリシンクのPCモニタが普通に流通していたので問題はなかったのである。
しかし、90年代に入ってPCの高解像度化進むとマルチシンク・モニタが一般的となり、30kHz未満の水平周波数には対応しなくなったため、AMIGAで使えるモニタは少なくなった。
そこで登場したのがスキャンダブラで、AMIGA3000というモデルにはオンボードでスキャンダブラが搭載されているほか、数多くのサードパーティから外付けや内蔵のスキャンダブラがリリースされた。インタレース・モードでのフリッカを抑えるフリッカ・フィクサ機能を備えるものも多い。
なお、ゲーム機の映像をPCモニタに映すための機器として売られているアップスキャン・コンバータも似たようなものだが、AMIGAではたいてい使えない。

MV1200
ToastScanと外観はまったく同じスキャンダブラMV1200(ACT Elektronik Vertriebs GmbH)

Video Magician
Videoスロットに装着するタイプのスキャンダブラVideo Magician(Bio-Con Taiwan Corp)はRGB出力のほかヴィデオ出力も搭載

ffv2_denise
Deniseのソケットに挿すタイプにスキャンダブラFlicker Free Video 2(ICD)

『来なかった近未来』あとがきのあとがき その2

Limbo-54への道」のせいですっかり埋もれてしまったが、ちょっと前に表紙について書いた「あとがきのあとがき」その2である。

昨日は『来なかった近未来』の発売日。市場に流通しためでたい日ではあるが、さっそく脱字の指摘などを受け、ややうなだれ気味。
もちろん品質向上のためには指摘大歓迎で感謝しておりますし、直しやすいのが電子書籍のいいところ。修正版はリリースする予定。
とはいえ、いくらプロの校正を通しても、やっぱり誤字脱字などは出てきてしまい、あーとうなだれるのが編集者の常なのである。
などと責任転嫁&一般化してはいけないな。自分が無能なだけです。

ただ、電子書籍といっても修正はWebページほど簡単ではない。
『来なかった近未来』は組版ソフトのInDesignでデザインし、PDF出力したものを、Acrobatで編集(リンク張ったりとか)している。
デザイナーと編集者で同じソフトウェアを揃えておけば作業はスムーズで、誤記修正くらい編集者がささっとできてしまいそうなものである。
実際、原理的にはそうである。しかし、現実にはそうはいかない。フォントの問題がある。

フォントには著作権があり、商用フォントでは使用条件が厳しく定められているため、使用フォントをすべて揃えていなくては、文字修正すら思うようにいかないのである。
大きな出版社ではデザイナーとまったく同じ環境を編集側にも用意できるが、零細出版社やフリーの編集者ではそうもいかない(小さな出版社では編集部内でデザインするケースもよくあるが)。

代替フォントを使って修正することもできるが、変更箇所またはページ全体がほかとは異なるフォントになってしまい、えらくカッコ悪い。
よっぽど目立たない箇所ならまだしも、普通そういうことはできない。
あまっさえ、Acrobatでの編集は使用フォントがなければ改行すらできなかったりするし、C&Pくらい認めてほしいもんであるが、それもできない。
デザイナーと異なるOSで作業しているせいか「選択したフォントと文書のフォントエンコードの不一致を解決できなかった」などというエラー・メッセージが出てフォントの変更もできなかったりする。

じゃあなんでePubとかにしないでPDFにしたかっていうと、理由はここに書いてある通りで、2年前からそんなに状況は変わっていない。
もちろん、将来的に電子書籍はePubとHTML5が統合された仕様に落ち着くとは思し、個人史的にPDFは好きじゃないのだが、現状のePubでは仕様もヴューワも発展途上であり、独自の仕様を解釈できる独自ヴューワにするくらいだったら、PDFのほうがよい。

『来なかった近未来』は横書きだし、ルビ、数式、化学式、特殊な記号などもない。
ePubにする利点は、スマートフォンなど画面の小さなデヴァイスでの可変レイアウト表示くらいしかないが、それならPDFヴューワの「テキスト・ヴュー」モードでこと足りる(すべてのヴューワに備えている機能ではないが)。

また、現状では印刷前提の組版ソフトのほうがグラフィック・デザイナーにとって使いやすい。
ePubはむしろWebデザイナーの領分になるのかもしれないが、電子書籍のフォーマットとして普及するには、グラフィック・デザイナーが使いやすいePubエディタは必須だろう。もしくは、InDesignなどの組版ソフトのePub出力がもっと使えるものになってくれるとよいのだが。

特定デヴァイスに最適化したアプリ形式ならば、また違ったやり方になるだろうが、内容がマニアックだけに、デヴァイスで間口を絞るわけにもいかず、どんな環境でも読める汎用フォーマットが前提である。
異なる環境での読みやすさ、という点では、デザイナーの中井さんが骨を折ってくれた。
iPhoneクラス(3.5インチ/960x640px)以上の画面サイズと解像度ならば全ページ表示でも読めるはず。
ちなみに自分が使用している初代Desireは画面サイズ3.7インチだが、解像度が800x480pxしかないので全ページ表示じゃムリ。悔しい。

電子書籍は、音楽ファイルと同列に読書ファイルなどと呼ぶべきだとは前から思っている。
紙の本と電子書籍の違いは、CDと音楽ファイルとの違いのような「物理媒体の有無」よりむしろ、スピーカとヘッドフォンのような体験の違いのほうが大きい。音楽がラジカセで聴くのと大型スピーカで鳴らすのとでは違う体験なように、電子書籍もPCで読むのとスレイトやスマートフォンで読むのとでは違う体験だ。
紙の本も判型など仕様によって異なる体験を提供できるが、固定されているので、ユーザ側に選択の余地はない。

仕様の次に思案したのが価格設定である。
紙の本と違って材料費がかからない電子書籍の原価はほとんどが労務費(著者印税含む)と経費である。
紙の本のような計算では価格を算出しにくいのである。電子書籍の価格設定は、ゲーム業界やPCソフトウェア業界に近いのだろう。
また電子書籍は初版部数というものがないので、初版分の印税保証のような商慣習ともなじみにくい。
いまはある程度の印税保証をしている出版社のほうが多いのかもしれないが、紙の本よりも印税率が高いかわりに保証なし、というほうが「電子書籍的」ではあるとは思う。

などなど吟味しつつ、仕事量を勘案し、部数を読み、著者、編集者、デザイナーそれぞれの印税比率を決めたのであるが、1800円という値段は高価いいと思われるだろうなあという懸念はあった。
周囲やSNSなどで高価い高価いと言われたわけではないが、自分自身の感覚として電子書籍で2000円超えはないよな、というのがまずあった。
単価1800円というのは労働量からすると妥当かむしろ安価だとすら思うし、紙で同じ仕様の本を出すなら4000円くらいになってしまっただろう。
単純に比較はできないが、1993年に出た『AMIGAは最高!』(4C/8ページ, 1C/328ページ)なんて実際、3800円もしている。

ちなみに編輯作業を始めたのは10月で、本文の再構成や註釈を書くのにえらく時間がかかってしまった。写真点数も多いのでデザインにも時間がかかっている。
本文だけならもっと安くできただろうが、ただでさえまだ商品性を認められづらい電子書籍というメディアであるからして、できるだけヴォリューム感や附加価値をつけたかったのだが、大きなお世話だっただろうか。
将来的には本篇だけの「軽装版」があってもいいかもしれない。
構成を変えるなら、リクエストされるまで忘れていた「マンデルブロの森にテクノ有り」あたりを併録してもいいかも、などといまから思っている。

来なかった近未来

発掘原稿: Limbo-54 への道 (6)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
文章の最後に『来なかった近未来』より SuperGenSX に関する解説を引用しました。
『来なかった近未来』には平沢進が Video Toaster と SuperGen に関する抱腹絶倒エピソードが掲載されています。


Interactive Live 2003 への道 — その6 SuperGenSXがんばって篇

ToastScan 購入前にSoftwareHutに聞いた話では、 ToastScan は SuperGen を含むほとんどすべて(almost any)のGenlockで動作可能とのことでした。
しかし、Hutに問い合わせると、以下の答え。

SuperGenは古い製品だし、なにか問題があったはずだ。
コンデンサかなにかを付け替えれば解決できたはずだが詳しいことはわからない。
後継機の SuperGenSX なら動作するはずだが、在庫はない。
GVPのG-LOCKならちゃんと動くし、まだ売っている。

しかし、平沢さん的にはG-Lockではダメなそうです。
G-Lockは面白い機能があるけれども、かつて「地獄を秘めている」ことが発覚したらしい(笑)。
それに対してSuperGenを使う理由は「SuperGenは“ナイト”あるいは“武士”のような忠誠心をもってARexxに応答」することにあるそうです。
この「ARexxコマンドに対する美しい応答」はライヴで映像業者が持ち込んだプロ機器との連携においても数々の武勇伝を残し、また、いざという時には手動制御も可能という危機管理においてもスグレモノらしいです。

というわけで、 ToastScan で使えるらしい SuperGenSX を獲得する方向で動くことに。
その前に SuperGenSX の動作保証の言質を取るべくHutとの文通したのですが、どうも話がかみ合いません。
やっと得た答えは…。

G-lock以外のGenlockはテストしていないけれども ToastScan は100個出荷して未だ苦情はないので、たぶんどんなGenlockでも動くだろう。
SupergenSXもたぶん動くはずだが、テストはしてないので確約はできない。

こらこら、しょーがないね、まったく。

結局、 ToastScan で動く保証はないものの、望みをかけてネットオークションでSupergenSXを物色することにしました。
意外とブツは早く見つかり7月23日、カナダから SuperGenSX が到着いたしました。
しかし、届いた SuperGenSX は正常動作いたしませんでした(泣笑)。
ヴィデオソースとAmigaのRGB出力をミックスしてコンポジット出力するGenlockモードは正常なのですが、なぜだかヴィデオソースなしでAmigaのRGB出力だけをコンポジット出力するStandAloneモードでは働きません。
英文マニュアル片手に試行錯誤するも同じ。
壊れてるっぽいです。

う〜ん。

ただ、こんな SuperGenSX でも ToastScan との相性を見ることではできそうなので、テストします。
ToastScan なしで15kHzモニタにつなげると SuperGenSX のRGBパススルーからは正常に出力されます。
しかし、ToastScan をつけると、SuperGen の時と結果は同じ。
ToastScan はバイパスしてしまってスキャンダブリングしません。

う〜ん。

とりあえずカナダの売り主に、返品・返金の要求を出しましたところ
「こっちではずっと完璧に動いていたが、ダメつーなら送り返しやがれ」
という返事が来ました。
しかし、そのくせいざ返品しようとすると、使い方が間違っているとか、それで仕様だとか、なかなか返品&返金を承諾せず話はこじれ、逃げようとするカナダ人にしつこく迫りまくること3か月。
ようやく11月半ばに返品を受け入れさせ、本体価格を返金してもらい SuperGenSX はカナダへ帰っていきました。

しかしながら、たとえ ToastScan に適合しなくとも SuperGen はライヴのバックアップ用にもう1台必要なため返品交渉と並行して代替品を物色していたのですが、なんとカナダ産の半額でアメリカ産の上物をゲット。
マニュアルやソフトは附属せず本体のみでしたが動作確認したところ、ばっちりでした。

さて、ToastScan問題の解決に動いている間、Amiga本体のほうはうまく動いていたかというと、そういうことはまったくございません(笑)。
次回、A4000が萌えます。


『来なかった近未来』より
一般的な映像用語ではGenlock(Generator Lock の略/ゲンロック/ジェンロック)とは基準となる信号に合わせて複数の映像の同期を取ることを指す。そこから転じて、AMIGAにおいては、カメラやVTRなどの映像ソースとAMIGAの画面出力とを合成してヴィデオ出力する機器を指す。Digital Creations社の SuperGen はAMIGA用の代表的ゲンロックで、後継機に SuperGenSX がある。

SuperGenSX

発掘原稿: Limbo-54 への道 (5)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
文章の最後に『来なかった近未来』より Video Toaster に関する解説を引用しました。
『来なかった近未来』には平沢進が Video Toaster を動作させるまでの顛末が描かれています。


Interactive Live 2003 への道 — その5 ToastScanがんばって篇

2002年7月1日、SoftwareHutからの荷物第2弾が到着しました。
返品から1週間とは素早いです。

  • A4000 motherboard
  • ToastScan x2
  • X-surf x2
  • Lyra PC Keyboard adaptor

マザーボードはいかにも中古という感じでけっこう汚く不安がかきたてられます。
一応、充電池は取り外され、ボタン電池ホルダにつけかえられていましたが、基盤には多少液漏れっぽい汚れがあります。
気を取り直して組み立てます。

マザーボードには、スペーサー(六角型オスメスネジ)も取り付けCyberStormをきっちり固定します。
CyberStormにはCPUファンも取り付けたことだし、あとはなぜか足りないドータボードのスペーサーを取り付ければカンペキでしょう。

CyberStormに搭載されていた8MBのSIMM x 4枚を16MB x 4枚に換装し、合計64MBに増設。
マザーボードのスロットにもMaxの4MB x 4で埋めます。
(後日、マザーボード上のメモリは不調の原因と見て外してしまいましたが)
SIMMの新品はとんと見かけなくなりましたが、手持ちもけっこうありますし、中古ならたくさん市場に出回っています。
(当時、16MBは1枚100円くらい、32MBは1枚800円くらい)

X-surf(クロスサーフ)ネットワークカードは2枚とも正常に動作しました。
ちゃんとインターネットにもつながります。

PARは操作方法を知らないのですがハードディスクとつないでみたところ、動作しているようです。
ただ、10GのHDのうち8Gちょっとしか認識していません。
これはいわゆる「8Gの壁」で、ボードの限界でしょう。
にしても、中古のPARをソフト付きといって売っていながらいながらソフトを添付しないHutにちょっと疑問だったのですが、DPS(Digital Processing Systems)のサイトで
ダウンロード可能だったのでよしとします(笑)。
ちなみにDPSはLeitch Technology Corporationに吸収されましたが、ブランドは残っています(*)。

*2003年当時の話

余談ですが、今年(2003年)某放送局の映像制作セクションへ取材へ行きましたら、WindowsでDPSのソフト(dpsVelocityかなんか)を使っていました。
非常に使い勝手がいいので重宝しているそうです。

さて、そうそうすべてうまくいくわけがないのがAmigaの常。
ToastScanの出番です。
ToastScanはSoftwareHutが開発した外付けのスキャンダブラ/フリッカフィクサで外観はACT(Apollo) MV1200とまったく同じです。
他製品に比べて画面が明るく、黒がボタった感じがしないので、第1印象はよかったのです。
問題はウリにしている、VideoToasterやGenlockとの共存で、それはライヴでの使用においても重要なポイントです。

VideoToaster(以下VT)の画面は問題なくPC用モニタに映すことができました。
VTは、単なる23pin→15pinのVGAアダプタでも種類によっては画面が乱れて映らなかったりするくらい神経質なハードなのでたいへん感心しました。
お次は、Genlockです。
SuperGenで試してみました。
SuperGenにはRGBのパススルーポートがついており、下記のように接続します。

Amiga(RGB)→SuperGen→(パススルー)→ToastScan→PCモニタ
|
(コンポジット)→TVモニタ

その結果は以下の通り。

  • スキャンダブラが機能せず、バイパス状態になる
    (ToastScanのBYPASSランプが点灯する)
  • 15kHz対応モニタに映してもフリッカが出て画面が乱れる
  • SuperGenからTVへの出力はキレイに表示する
    (A1200やA600のコンポジット出力よりキレイです)

試しにVideoスロットに挿すタイプの内蔵スキャンダブラ、コモドール製A2320(Amber)で試したところ、A2320のVGA出力、AmigaのRGB出力、SuperGenのコンポジット出力、
ともに問題ありませんでした。
SuperGenのRGBパススルーポートを使わないからかもしれません。
これではToastScanを導入した意味が半減です。

う〜む。

次回はSuperGenSXゲットへ動きます…しかし!?


『来なかった近未来』より

*Video Toaster

Video Toaster は1990年にNewTek社からリリースされたヴィデオ編集用のハードウェア/ソフトウェア。
AMIGAのVideoスロットに搭載する拡張ボードと、Switcher,Toaster Paint,Toaster CG,LightWave3Dというソフトウェアによるシステム。
映像ソースのスウィッチング、リアルタイム・エフェクト、映像の合成や加工、タイトル作成、ペインティング、3DCGの制作といったことがVideo Toaster搭載のAMIGAだけで可能になる。
非圧縮・無劣化で放送規格のクオリティであったため、小規模な映像制作会社やCATV局などで盛んに使われるようになった。
さらには、のちにリリースされたハードディスク・レコーディング・ボードのFlyerと組み合わせることでノンリニア編集を可能にし、DTV(Desktop Video)という分野を切り拓いた。
Video Toaster は1999年にはWindowsNTに移植され、現在は TriCaster という製品にその血脈が受け継がれている。
クリエータの人気を集めたLightWave3Dは、のちに単体でもリリースされるようになり、WindowsやMacintoshに移植され、現在も3DCG制作ソフトウェアの定番となっている。

movie.b-artist.co.jp/kiji/nikkeicg/dv199908-01.html

Newtek Video Toaster 2000
Newtek: Video Toaster
Video Toaster のSwitcher画面

発掘原稿: Limbo-54 への道 (4)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。

SoftwareHutというのはアメリカにある老舗のAMIGAショップで、FAMIGAでは「爆速ハット」の異名を取り「ほんとは日本にあるんじゃないか」とか「日本の通販より早い」とか言われるほどサーヴィスがよくて人気があった。
わたしも初めてのAMIGAパーツ購入はこの店。
技術部門もあって、ToastScan(スキャンダブラ)などの商品開発、AMIGAの修理、中古品やデッドストックのリファビッシュ販売も行っていた。
ただ、この時期に購入した中古のA4000マザーボードはどうにも調子が悪く、なんども交換してもらったのである。


Interactive Live 2003 への道 — その4 Scala先生お願いします

OS3.9インストール後、調子に乗ってライティングソフトBurnIT!を入れてCD-Rを焼いてみたところ、不思議にもちゃんと焼けました(笑)。
ドライヴは自動認識しませんでしたけどね。

次は本命のScalaMM400のインストールです。
FDが11枚もあってめんどくさいです。
VideoToasterの45枚には負けますが(笑)。

はい、インストールしました。
が……動きません。
起動するとシステムがフリーズします。
2度インストールしてみましたが、同じです。
起動を試みるとなぜかデスクトップに

DF0:Unreadable

というアイコンが出現します。
Scalaってフロッピを読みにいくのかと思い、適当なディスクを入れてから起動しましたが同じでした。
システム自体がフリーズしているかと思いましたが、ATAPIドライバの「シェアウェア登録しろメッセージ」が出たりするので、動いているプロセスはあるようです。
試みにキーボードでウィンドウ操作をしてみたところ、キーボードは動きました。
マウスが止まってしまうだけかもしれません。
ドングルが腐っているかもしれないと思い、もうひとつのドングルにつけかえましたがこれも同じ。
ディスクが腐っていたかと思い、ほかのマシン(A4000T/060)にインストールしてみるとなんの問題もなく動きます。
User-Startupの記述かとか、素人なりにいろいろと原因を探ってみますが、わからず。
Scalaだけでなく、MultiViewでアニメーションを再生したりしても、デスクトップに

DF0: Unreadable

と出現します。
いったいなんなんでしょう。
しょうがないのでその問題は置いておき、ハードウェアの整備。

  • CyberStormを固定するためのスペーサー(六角型オスメスネジ)取り付け
  • CyberStormのCPUクーラー取り付け(060にはなくてもいいらしいですが)
  • マザーボードにニッケル水素電池またはボタン電池用ソケットの取り付け
  • メモリの増設

といったところでしょうか。
にしても、このPowerTowerA4000はたぶんSoftwareHutで組み立ててるのでしょうが、雑です。
ケースの中でカラカラ鳴ってるのでなにかと思ったら、どっかのネジが外れていました(笑)。
バスボードなども固定ネジをつけるべきところを省いていたりといいかげんです。

CyberStormとバスボードを外し、マザーボードをよく見ると充電池を取り外しただけでなく、ちゃんとボタン電池ホルダにつけかえられていました。
ちょっと見直しました(でも半田付けはヘタ)が、しかし、よ〜く観察すると、電池の回りは液漏れのあとがあり、パターンやチップも若干浸蝕されているようです。
ボタン電池の電圧を測ってみたところ2Vもなかったので、新品のボタン電池につけかえてもやはり時刻設定は保存できません。
時計機能が働かないのは電池切れではなく液漏れで時計チップが死んでいるのでしょう。
Scalaのフリーズなどの不具合もそのせいかもしれません。

さらに、MS-DOSフォーマットのフロッピ(2DDも2HDも)が読めないことが発覚。
PC0をSys:DEVS/Dosdriversに入れて自動マウントにしておくとAmigaのディスクを入れても永遠に待機状態でシステムがフリーズに近い状態(PC0を読もうとして時計アイコンが止まらない)になります。
FDDの不具合はほかにもあり、まとめる以下になります。

  • フォーマットできない
  • 書き込みできない
  • 2HDのディスクを読めない
  • MS-DOSのディスクを読めない

要は2DDのAmigaディスクを読むことしかできないわけです。
ドライブ自体はほかのマシンにつけかえると正常動作するので、どうやらマザーボードのFDコントローラがおかしいようです。
よくOS3.9のインストールディスクを作成できたものだと思いますが、あまり深く考えないことにします(笑)。

というわけで、マザーボードの返品決定!!
2002年6月24日、アメリカへと旅立っていきました。

新しいマザーボードが届くまで、汚い中古キーボードの分解掃除、丸洗いでもしていましょうか。
そうそう、Hutはキーボードが中古だったお詫びにPCキーボード変換アダプタLyraを送ってくれることになりました。
すでにAmigaの新品キーボードは在庫がないそうです。
にしても、春には出荷予定だったToastScanはどうなってるのでしょう。
今ごろ、Hutのスタッフが総出で半田付けしているのでしょうか。

さて、次回は荷物第2弾到着「ToastScanがんばって」篇です。

発掘原稿: Limbo-54 への道 (3)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
文章の最後に『来なかった近未来』より PAR に関する解説を引用しました。
『来なかった近未来』には平沢進が PAR のサイズにスロットに合わなくて困った話が出てきます。


Interactive Live 2003 への道 — その3 ブツ第1弾到着篇

2002年6月10日、SoftwareHutから注文品第1弾が到着しました。
内容は以下の通り。

  • PowerTower A4000 System
  • キーボード
  • マウス
  • Powerケーブル
  • OS3.1 FD
  • OS3.9 CD x2
  • OS3.1 ROM set (HighFlyer用)
  • Cyberstorm MK III 060/50MHz x2 (1機はPowerTowerに搭載済み)
  • Cyberstom ドライバFD
  • Cyberstom マニュアル
  • ScalaMM400

これに先立ち、10GBハードディスク付きの中古PARも入手してあります。
(PARの新品はすでに売っていません)
以下のものは在庫切れで、後発バッチとなりました。

  • ToastScan x 2
  • X-Surf Ethernet Board x 2

PowerTowerA4000は[060/34MB/4.5GB HD/40xCDROM]という仕様のはずでしたが、ベゼルから判断するにCD-ROMではなくCD-R/RWが装着してあるようです。
マウスは新品でしたが、キーボードは明らかに中古の小汚いものでした。
MagicPackというソフトウェアセットも附属するはずですが、ありません。
Cyberstormは2機買ったのにソフトやマニュアルは1セットしかないし、
不審な点はいろいろありますが、それはさておき、気をとりなおして起動してみます。

パワー・オン!!

…起動しません。

電源ランプはつくし、CD-Rのアクセスランプもつくので、パワーはきているようです。
Cyberstormが外れているくさいです。
分解してみると、予想通りCyberstomが外れていました。
それも当然で、アクセラレータの固定ピンが1コも装着してありません。
これでは移動のたびに外れるのはもちろん、横から縦にしただけで外れます。
固定するためのネジは後日、秋葉原ででも調達するとして、とりあえずは以前A4000Tで使っていたゆるい固定ピンで取り付け、起動しました。

ハードディスクの中味を見てみると、OS3.1がインストールしてあるだけで、あとはがらんどうです。
MagicPackも入っていませんし、おまけで入ってるはずのScalaMM300ありませんでした。
IDEのCD-R/RWドライヴも、ドライバがないので動きません。
それくらい設定してあるかと思ったことらが甘かったようです。
060のライブラリは入っていただけマシでしょうか。
ひょっとしてOS3.9がインストールされていたりして…なんてのは妄想です(笑)。

ハードウェアを点検するとほかにも問題がいろいろありました。
まず、マザーボードが中古でした。
HutのWebショッピングコーナーには、どこにもusedという表記はなく、デッドストックのマザーボードとタワーケースを組み合わせて出荷していると思いこんでいたのですが、どこからどう見ても中古です。
液漏れで故障の原因となるニッカド電池は取り外してあります。
新しい電池を取り付けたとして、果たして時計機能は生きているかどうか…。

また、さらに重要な問題が発覚しました。
バスボードがなんとPCI仕様です。
ISAスロットがありません。
これではTBCが使用できません。
どうやら、すでにタワーのデフォルトのバスボードはISAではなくPCIになっていたようです。
平沢さんに確認すると、TBCはライヴでは使わないのでないそうなので、とりあえずPCIでもよしとしました。

では、まずはOS3.9のインストールをすることにします。
ハードディスクのパーティションは現状で

  • Workbench 196MB
  • Work 1893MB
  • Work2 1898MB

となっているので、OS3.1と3.9のデュアルブートが可能なように切り直します。

さて、OS.3.1のインストール・ディスクで起動しようとしますが、グルが出てしまいます。
060のライブラリが入っていないからだろうと判断し、インストール・ディスクに入れました。
(ディスクはパンパンなので当面不要なファイルは削除しなくてはなりません)
あとでわかったことですが、アラートが出る原因はOS3.1の040ライブラリがCyberstomに適応しないためで、OS3.1の040ライブラリを削除するかCyberstom用の040ライブラリと入れ替えれば060ライブラリがなくても起動は可能なようです。

おおよそ次のような感じでパーティションを切り直してました。
(1パーティションで2Gを超えるとOSのヴァージョンによっては不具合が出るという話をどこかできいたので、2GB以下におさえておきました)

  • System0 50MB
  • System1 100MB
  • Work 2GB
  • Store 2GB

このSystem0にOS3.1をインストールし、次はOS3.9のインストールです。
そのためにはCD-ROMを使えるようにしなくてはなりません。
SCSIのCD-ROMは使っていますが、IDEのCD-ROMは今まで動作させたことがないので、チャレンジするしかなさそうです。
有料のAsmiCDFSを購入すれば話は早いのでしょうが、まずはフリーウェア、シェアウェアを試してみましょう。

Aminetから以下のファイルをダウンロードしました。

  • cd.device (Atapi_PnP300.lha)
  • AmiCDFS (amicdfs240.lha)

cd.deviceがATAPIのデバイスドライバで、AmiCDFSがファイルシステムです。
AmiCDFSは旧ヴァージョンではAmiCDROMと呼ばれていたフリーウェアで、
cd.deviceはシェアウェアのようです。

ドライブ自体が認識しやすいものだったのか、インストールや設定は問題なく
すぐに終わり、これでCD-ROMも使えるようになりました。
(もちろんCD-Rとして使うには別途、BurnIT!などライティングソフトを買わなければなりません)

OS3.9のEmergency-Disk(インストールディスク)を作成しても
デフォルトでは起動できないので、Devsドロワにcd.deviceを入れ、
DosDriversドロワのEMERGENCY_CDの中味を少し書き換えます。
具体的には
Device = “scsi.device”
という行を
Device = “cd.device”
にするだけです。

というわけでOS3.9のインストールも済みました。
ちなみにOS3.9のCDはバージョンアップしているらしく、以前買った自分のCDとはラベルからして違っていました。
なぜかEmergency-Diskで起動する途中で「ENVがないぞ」というアラートが出ます。
これはほかのマシンで試しても同様なので、ニュー・エディション3.9CDのバグかもしれません。
キャンセルすれば起動するのでいいんですけどね(笑)。

では、次回はまたまたトラブル発生です。


PAR (Personal Animation Recorder) はDPS (Digital Processing Systems) より1993年にリリースされた、IDEハードディスクに動画を記録・出力する内蔵ボード。
PAR

発掘原稿: Limbo-54 への道 (2)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54?」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
FAMIGAへの投稿目的で書かれているので、AMIGAに関する予備知識があることが前提で、システムやパーツに関する記述も説明なしです。


Interactive Live 2003 への道 — その2 仕様決定篇

紆余曲折を経て、Amigaのメンテナンスおよび増強の計画は
以下のような方向になりました。

1.新品のPowerTower for A4000 セットを導入
2.HighFlyer4000の安定化
3.PowerTowerとHighFlyerを下記の同仕様にする

  • Cyberstorm MK III(060/50MHz)搭載
  • RAM増設
  • PowerTowerA4000にPAR搭載(HighFlyerには搭載済み)
  • ネットワークカード X-surf搭載
  • ScalaMM400インストール(1セットはあり)

4.ToastScanで液晶モニター化

不確定要素がある2台をメンテするより、1台は確実なもののほうがいいだろうというわけで、新品のPowerTower for A4000 導入を決めました。
HighFlyer4000は、タワーに近い(?)構造なので、そのケースはそのまま使ってタワーと仕様を揃えノーマルなA4000はHighFlyer4000のパーツ取りにする、というわけです。

“PowerTower for A4000″は、Elbox Computerが”E/BOX 4000″という名前で製造しているA4000(デスクトップ)用のタワー化キットですが、イギリスのショップ(ベンダ?)PowerComputingがPowerTowerと名付けて売っているようです。
購入予定のSoftwareHutでもPowerTowerという商品名で売っています。
PowerTower for A4000 (以下、PowerTowerA4000と略)には以下の仕様のバスボードがセットになっています。

  • 7 x ZORRO II/III Slots
  • 2 x Video Slots
  • 5 x ISA Slots

ただ、このころすでにPowerTower向けのMediatorPCI用バスボードも別に発売されており、それは以下の仕様になっていました。
7 x ZORRO II/III Slots
1 x Video Slot
5 x PCI Slots (Enabled by optional Mediator 4000)

わたしは最初、PCIバスがついたバスボードのことをMediatorPCIと呼ぶと思っていたんですが、PCIバスを有効にするコントローラカードがMediatorPCIなんですね。
しかも、MediatorPCI用バスボードには、PowerTower向け以外にもデスクトップ用など数種類があり、けっこう混乱した記憶があります。

で、ここで問題となるのが、PCIを取るかISAを取るかということです。
と言いますのも、搭載予定のPARはZorro用なのでどちらでもいいのですがTBCはISA用なのでPCIバスボードでは使えません。
TBCのためにはPowerTowerデフォルトのISAバスを選択することになります。

ちなみにHighFlyerのバスボードは、A4000のオリジナルバスボードと組み合わせて使うのですが、組み立てると以下のような仕様になります。

  • 4 x Zorro III Slots
  • 2 x Video Slot (1 inline with Zorro)
  • 6 x ISA Slots (3 inline with Zorro)

では、次回はようやくブツが到着したの巻です。