インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
FAMIGAへの投稿目的で書かれているため、AMIGAに関する予備知識のあることが前提で、システムやパーツに関する記述も説明ありませんが、この回はAMIGA事情を知らないとわかりにくいかもしれないので、ちょっと解説。
AMIGAにはオンボードでグラフィック・チップが載ってますが、拡張スロットにグラフィック・カードを搭載することも可能です。ここらへんは現在のPCと同じ。
ただ、AMIGAの場合、アプリケイションによってはオンボードのグラフィック・チップが出力する画面(ネイティヴ・スクリーン)でしか動作しないものも多いわけです。
特にAMIGAのハードウェアと密接な関係にあるグラフィック系ソフトは、ネイティヴ・スクリーンにしか出力できないものが多い。
しかも、グラフィック・カードの出力するスクリーンは一般的なPCモニタに映せても、ネイティヴ・スクリーンは映せなかったりするので、2種類のモニタを使用するとか、スキャンダブラ(ToastScanについては第7回で解説)と併用するとか、めんどくさい状況が生まれます。
この回はそんなお話。
Interactive Live 2003 への道 — その10 その後のToastScan篇
ToastScanはSuperGenと一緒に使えない――。
その事実は第5回で判明したわけですが、それでToastScanがお払い箱になった、というわけではありません。
SuperGenで使えなくとも、ToastScanには液晶モニタでAmigaを使うという用途がまだ残っています。
ところがそう簡単にいかないのがAmigaでしょうか。
平沢さんのスタジオで使用している液晶モニタは3台ともToastScanの出力を表示することはできませんでした(笑)。
いや、笑いごとじゃないんです。
NTSC:HighResやHighResLacedといったスクリーンモードでは640×240, 640×480, 720×400といった解像度で表示しますが、スタジオのモニタはそれらに対応しておらず、800×600以上じゃないとダメだったんです。
また、スタジオの液晶モニタはToastScanなしでDbNTSCやMultiScanといったモードで表示することもできません。
解像度が対応していないだけでなく、水平周波数の下限が30kHzあたりまでちゃんと映るモニタでないとDbNTSCやMultiScanでは表示できないそうなので
そちらの問題もあるかもしれません。
平沢さんから液晶モニタの詳しい仕様はきいてませんが、これはToastScanのせいでも、Amigaのせいでもなく(事実、三吉さんの液晶モニタではToastScanは有効だったようです)単にモニタの問題だったようです。
でも、困りました。
平沢さんのスタジオはソーラー・システムで電力供給しているので、できるだけ低消費電力の液晶モニタを使いたいところです。
ちなみに平沢さんはエミュレータで済む場合はラップトップに仕込んだUAEのAmigaで作業しています。
液晶にこだわるなら、ToastScanの使える液晶を探すほかに15kHz対応の液晶モニタを探すという手もあります。
SONYのCPD-L150はAmigaにばっちりなそうですが、このころナナオ(EIZO)やトートクの液晶を物色したりもしていました。
ま、実際は買いませんでしたけれども。
では、どういう方向に行ったかといいますと、やはり定番のグラフィックス・カードの導入です。
Amigaのデスクトップで作業する時はグラフィックス・カードを使い、ネイティヴスクリーンを使うアプリはスキャンダブラ、という両刀使いです。
グラフィックス・カードを使うと、一般的なPCモニタが使えてデスクトップがカラフルでゴージャスになるという見た目以外にも次のようなメリットがあります。
- 表示領域が増える
- ChipRAMの使用量が減る
- システムへの負荷が減る
(識者の方へ:このあたり勘違いがあったら訂正お願いします)
ただし、Amigaでグラフィックス・カードを使用するには
基本的に以下のいずれかの環境が必要になります。
- 2系統入力のあるモニタ
- 映像入力切り替え機
- モニタx2台
PicassoIVなどパススルー機能のあるグラフィックス・カードならばカード自体で自動切り替えができて両刀使いも気になりませんが、いかんせんすでに製造中止です。
Cybervision64/3Dは現行商品のようですが、オプションのフリッカフィクサはもう製造していないようです。
あったとしても自動切り替えができるのかどうかは不明です。
(お持ちの方がいたら教えてください)
とはいえ、平沢さんがよく使うBars&Pipesをはじめとしてグラフィックス・カードに対応しているソフトも多いので、大部分の作業は液晶モニタで済みます。
未対応のソフトであっても、NewModeというツールで対応させることが可能だったりします(ハスヲさん、ありがとう)。
ただし、ライヴの要であるScalaで、TVとの融合が必要なソフトだけにネイティヴ・スクリーンでしか表示できませんが、そういうのはToastScanとCRTモニタで表示させればいいわけです。
そういうわけで、最初はまずZorroスロット用グラフィックス・カード導入を検討したのですが、今や新品で容易に入手可能なのは前述のCybervision64/3Dくらいしかありません。
今さらZorroスロット用を購入するくらいならばMediatorPCIで安価で高性能なPCI用グラフィックス・カードを使ったほうがいいのではないかという方向へ傾きました。
(といっても、今やAT機用のグラフィックス・カードはAGPに移行していてPCI用は品薄ですが)
幸い、PowerTowerにPCIドータボードはついているのでMediatorPCIだけの出費で済みます。
結論といたしましては、MediatorPCIとVoodooをSoftwareHutに注文し、交換マザーボードと一緒に送ってもらうことにしました。
MediatorPCIはグラフィックス・カードだけでなく、ネットワーク・カード、サウンド・カードなども使えるので夢(もしくは悪夢)が広がります。
そのような妄想を繰り広げていたころ世間ではお盆ですっかり地獄の釜の蓋が開いたにもかかわらず、わたしは単行本の締め切りが近くて仕事をしていました。
深夜、事務所の入っているビルの下水が故障し、汚水が逆流してさんざんな目に遭ったのも今はいい思い出です(笑)。
幸い、Amigaが置いてあった部屋には汚水が入ってこなかったので難を逃れました。
次回は「帰って来いよ」または「かくも長き不在」をお送りする予定です。