ことぶき光というAIが生成したポップ・ミュージック

ことぶき光
ポップミュージック

IRQ inc.
2026年4月28日発売
IRQC-1987

01 : バナナスライド
02 : ポプリ
03 : リッチー
04 : シナモンポスツ
05 : あでで
06 : 舞いココア
07 : 無人
08 : ゼリージェリーグライド
09 : テラピン
10 : ヨーグルトヨンダー
kotobukihikaru.com/kotobuki-hikaru-pop-music/

生成AIが一般化しはじめた2年ほど前。
(ChatGPTの公開は2022年11月なそうなので、それしか経っていないのだ)
SNSは主に笑いの対象として「生成に失敗した絵」で溢れた。
腕が脇から生えていたり、首が2本あったり、というあれだ。
ミクロ的には精細な描写でありながら、マクロ的には不自然どころか、意図的でなければ人間が描かないような「大きな間違い」を偶発的に含んだ絵が「さすがAI」として取り上げられた。
それは一時期の現象で、いまではもうあまり目にすることはない。
いまは精巧に悪意を織り込んだような質(たち)の悪い「フェイク」が溢れている。

ここ数年のことぶき光の(表立っての)活動は異様に活発である。
2024年にプノンペンモデルが再始動して(と、端からは見えた)台湾や国内でライヴを行い、翌年にかけてのリリース・ラッシュ。

●CD
プノンペンモデル『Vast Empty Pulse』2025年4月30日リリース
ことぶき光『mosaic via post 〈2011 Remastered Version〉』2025年5月23日リリース
プノンペンモデル『金邊模型1994-2024』2025年6月20日リリース

●本
『モデムとエンジンと、夜の千キロ』2025年7月11日リリース
『ポップミュージックの方法』2025年8月28日リリース

さらには YouTube にて「ロジックの王道」をや動画版「ポップミュージックの方法」を公開するなど、目まぐるしい。
そして、24年ぶりのソロ・アルバム『ポップミュージック』のリリース。
音楽理論書『ポップミュージックの方法』(*1)の実践篇と田中雄二は位置づけていたが、流れからいってそうなのだろう。
申し訳ないがわたしは未読(断片的に読んだが理解できなかった)。
海外ツアー記は楽しく読んだけど。

ジャケットの画像やPVは『Vast Empty Pulse』『金邊模型1994-2024』同様、ことぶき光が生成AIを利用して作成したもの。
ことぶき光と生成AIの親和性というのはさもありなんで、生成AI登場前から、ことぶき光は自分の脳内で生成AIを使っていたのである。
というより、ことぶき光自身が生成AIだったのだ。
生身の人間でありながら、人工知能のように思考する。
人工知能のように情報を扱うことが可能な人間と言ったほうがよいか。

アルバム『ポップミュージック』を聴いた第1印象は「考えすぎじゃないか?」というものだったが、むしろ敢えて人間のようには考えなかったのかもしれない。
ことぶき光という生成AIに古今東西の音楽理論の情報を取り込ませ出力させた結果だ。
ポップ・ミュージックというものを理論通りに、情報通りに精緻に組み上げていった結果できあがった「失敗した生成AI画のような」異形のポップ・ミュージック。
部分的にはおかしくないが、全体としては奇妙で人間の生理を逆撫でする音楽。
J-POPすら取り込みながらもそのメイン・ターゲットたちは残念ながら寄せ付けない。
世にあふれる生成AIで作成した音楽とは次元が異なる。
このアルバム自体も生成AIを利用してはいるのだろうが、結果としてできあがったものは、ことぶき光そのものである。

*1 大学講師をやっていた時のレジュメと思われるPDFが自サイトで公開されている。大著『ポップミュージックの方法』はその集大成らしい。
kotobukihikaru.com/method/

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