いわゆるPDA/スモール・コンピュータ/ハンドヘルドPCといった類のデヴァイスはPSIONに始まり、Linuxザウルス、W-ZERO3と使ってきた。
PSIONやザウルスは本体に狭義の通信・通話機能はなく、ネット接続には外付けモデムや無線LANカードが必要だった。
ZERO3はいわゆるスマートフォンであるが、ウィルコムの電波が心許ないないのでほとんど電話としては使っていない。
つまり、ずっと電話とハンドヘルドPCの「二本差し」であったのだが、それもだんだん邪魔くさく、経済的にも無駄と感じるようになってきた。
さらには昨今のスマートフォンの機能向上とLinuxベースのOS Androidの登場である。
ここはひとつ統合してみようじゃないか、という気がしてきた。
Android を乗せた Xperia X1 でも出たらいいなぁなどと思っていたのだが、ドコモから日本発売されるのはX1系ではなく、キイボードのないコードネーム Rachael であった。
ずっとハードウェア・キイボードは必須だと思っていたのだが、それもなんだかどうでもいいような気がしてきた。
もうauなんかやめてレイチェル・スウィートにしちゃおうか、auはスマートフォンには消極的だし、今やガラパゴス携帯電話の権化だし、とか思っていた矢先、見透かしたようにauもスマートフォン本格参入の報。
ほう、これはモトローラの Droid か Google の Nexus One でも投入する気か、とちょっとだけ期待が膨らむ。
そして3月末、auのAndroidフォン、IS01は発表された。
しかしてそれはスマートフォンではなくスマートブックなるものであった。
作ったのはシャープで、ザウルス、D4, Netwalker の系譜にあるデヴァイスである。
イヤフォン・マイクなしでは一般的な意味での通話不可能な非電話である。
製品発表会の生中継をUstreamで見ていたら、もう落胆の声・声・声。
わたしもそのひとりだ。
あ〜あ。
ただ、それは通話不可能なスマートブックなるものだったからではない。
確かに今わたしが望んでいるのは普通に通話のできるスマートフォンだが、ちょっと前までは「ザウルスがどこでもネットにつながればいいなあ」と思っていたクチである。
IS01はスペックを見る限り悪いハードウェアではないと思うし、デザインも深澤直人である。
2年前の自分なら買っていたと思う。
問題なのは独自仕様へ執着するauの勘違いぶりだ。
実は携帯電話というものは昔から好きではなかったし、今も好きではない。
仕事上の必要というか外部的要請で使い始めたが、携帯電話への依存度は低いし、たぶん今日から携帯電話がなくなったとしても、自分自身はそんなに困らないのではないかと思う。
調べてみたらauとの契約期間は144箇月とあるから、携帯電話を持ったのはちょうど12年前の98年、編集/ライターという職業ではかなり遅いほうである。
一方、携帯電話より前から使っている電子メイルやWebといったインターネット・サーヴィスはどうかというと、なくなると困る。
圧倒的に困る、仕事になんないし、日常生活でも困る。
であるからして、欲しいのはどこでもインターネットにつながるハンドヘルドPCであり、電話機能はオマケくらいでいいのである。
ましてや、いわゆるガラパゴス携帯電話特有の機能は不要だし、EZwebのような携帯電話専用の閉鎖的コンテンツ・サーヴィスなんて使ったことがない、どうでもよいのだ。
積極的にスマートフォンを使いたいと思っている層というのは、だいたいこういうもんじゃないのか。
特にコアな層というのは、海外の端末がそのまま使えればいいくらいに思っている。
より一般に近い層でも、iPhoneのヒットを見ればわかるように、スマートフォンに日本的携帯電話としての機能は望んでなんかいない。
このあたりソフトバンクはよくわかっているから、海外発売とのタイムラグを最短にして、最新の Android 2.1 を乗せた Desire の4月末発売を発表した。
これからも海外の人気端末をどんどん出してくるだろう。
ところが au は IS01 のウリとして、CメールやEZwebが使えるだの、ワンセグや赤外線通信が付いてるだの、LISMO! や auナビウォークに対応するだのとauの独自仕様・日本的な独自仕様の充実ばかりアピールしている。
発売はまだまだ先の6月で、そんな機能のために発売日を遅らせているとしか思えない。
しかも、これだけ出遅れていながら Android のヴァージョンは1.6だ。
なにもわかっていないのだ。
スマートフォンのユーザはそんな独自機能は望んでいないのである。
ましてや電話として使えないスマートブックなるもののユーザはそんな機能はあっても使わないだろう。
重要なのはPCでふだん使っているインターネットのコンテンツをどれだけ便利に利用できるかだ。
携帯電話のようにユーザを囲い込んでコンテンツに金を落とさせセコく商売したい気持ちもわからないではないが、契約が減っては元も子もないだろう。
その点、Ustreamをがんがんアピールしてパケット代で稼ごうとするソフトバンクのほうがずっと賢い。
かつてはオッサン臭くお役所的なドコモやオンナコドモ相手のJ-PHONEに比べて、先進性・デザイン性の優越が強調されていたIDO/auの姿はもうどこにもない。
というわけで Desire の予約に行ってきます。