周年

先日(といってももう2週間も前か)天安門事件20周年というのをニュース番組で見ていて、そういえば……と思い出した。
今年は、株式会社ファッシネイション設立20周年であったのだ。
といっても特に感慨はないのだが、感慨にひたるべき事件が別に起きてしまった。
10年以上使い続けた仕事用の椅子が壊れてしまったのである。

アームレストにガタがきていたし、ウレタンがへたって座り心地も悪くなっていたので、そろそろ買い換え時期ではあったのだが、修理を試みたところ、トルクスのネジ頭を潰してトドメを刺してしまった。
ふだんは使うことのない固くなりがちな箇所のネジに潰れやすい材質のトルクスを採用するのはいかがなものかと思うが、これも寿命と思って諦めることにした。

ところで、愛着があるようなこと書いておきながら、その椅子のメーカなどはまったく覚えていなかった。
というのも、自分で探して購入した品ではなく、知人に「同じ椅子を2脚買ったんだけど、1脚は不要になってしまったから引き取ってくれないか」と売りつけられた椅子なのである。
ファッシネイション恵比寿時代の話だから、少なくとも10年前、もしかすると12年とかもっと前かもしれない。
デザインがいいので買い取ることにしたが、こだわりをもって選んだわけではないので、使っているうちに愛着がわいたという感じである。

椅子をひっくり返してみると「vitra」とある。

www.vitra.com/
www.hhstyle.com/cgi-bin/omc?port=33311&req=IPRODUCT&code=info_vitra

スイスの家具メイカーで、イプシロンやメダといったシリーズが有名らしい。
わたしが使っていたのはそれらより以前の商品でWebにも載っていないが、見た目だけでなく、座り心地もよく、各部調節機構も当時としては高機能だった。

さて、新しい椅子だが、ウレタンは蒸れやすくへたりやすいので、今回はメッシュ素材のものにしてみたかった。
メッシュ素材の事務用椅子と言えば、ハーマン・ミラーの元祖アーロン・チェアや、岡村製作所のコンテッサ、バロンといったあたりが有名どこである。
近年は買い物に関してまったく横着になってしまって、ネット通販で実物を見ることなく買ってしまうことが多いが、椅子はやっぱり座ってみなければわからない。
というわけで、ゴー・新宿、ゴー・大塚家具。
ちなみに大塚家具のショウ・ルームは、受け付けが必要で、案内人がついてまわるが、押しつけがましいことはなく、非常に好感がもてた。

試座してみて、気に入ったのは、やはりアーロン。
さすが名にし負うMoMA所蔵品である。
もうひとつは、コンテッサでもバロンでもなく、エルゴヒューマンという無名の椅子。
座った瞬間に身体が包み込まれるようで「おっ!!」という感覚があったのである。
今監督には悪いが(ってほどではないか)コンテッサは座ってみても、そういう「発見」のようなものはなかった。
椅子なんてものはもちろん体型によって合う・合わないはあるだろうが、大袈裟に言えば、エルゴヒューマンは身体が軽くなった気がしたのである。
「“意外と”いいですね」と言うと「みなさんそうおっしゃいます」と店員。

しかし、デザインが…なあ…。
エルゴノミクスなデザインというのは珍妙な外観を呈していることも少なくないが、どうも馴染めそうにない。
後ろ姿はよく言えばサイバー・パンク(懐)なのであるが、わたしはシルエットの美しいすっきりしたデザインが好みなので、こういうごちゃついたのは趣味ではない。
なんちゃってアーロンとか貧乏人のためのコンテッサといった酷評もあるようだが、メッシュ素材というだけで、デザインはぜんぜん似ていない。
むしろ似ていて欲しかった(笑)。
最大のウリである「独立したランバー・サポート」というのが外観上は奇異に見える。
デザインだけなら格下のブラントのほうがマシな気がする。
ごめんよ、呉耀全(Neil Wu)さん。

しかも、ブランド品を所有する快楽とは程遠いよくわからん製品である。
そもそもなにが怪しいって、メーカが不明なのだ。
日本やアメリカの輸入代理店の公式サイトはあるが、メーカの記載はない。
得体が知れないとはまさにこのこと。
www.ergohuman.jp/

調べてみると、どうやらエルゴヒューマンというのは2005年くらいに登場した商品で、デザイン(開発?)は台湾、メッシュなどの部材はアメリカ、生産は中華人民共和国本土、検品は日本ということらしいが、オフィシャルな情報はない。
なにか隠さなくてはならない事情でもあるのか。
台湾とかチャイナとかいうと、ひとによってはマイナスなブランド・イメージがあるからかもしれない。
しかし、ASUS, AOpen, ABIT, GIGABYTE, MSI, VIA….と、日ごろ接している素晴らしい台湾ブランドもたくさんあるではないか。
それともコンピュータと椅子では事情が違うというのか。
そりゃ違うよな。

問題はデザインに馴染めるかだなあと、考えること1週間。
結局、買ってしまった。
vitraの椅子は入れ替わりに引き取られていってしまった。

ブランド・イメージよりも自分の体感を信じたわけだが、果たして吉と出るか凶と出るか。
Web上でヘッドレストはかえって邪魔という意見を散見したが、確かにヘッドレストは前過ぎかも、とか早くも思っていたりもする。
気がついたら別なvitraに座っていたという事態は避けたいものである。

あ、マイナー・ブランドを応援するつもりで書いたのに、微妙な終わり方になってしまった。

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