横川理彦x中野テルヲ
one-s-one II 〜唯一無二のソロアーティストによる競演〜
2010年3月24日(水)渋谷SONGLINES
昨年の「DRIVE TO 2010」出演以来、活性化してきている中野テルヲ。
4-Dやソロのほか、さまざまなコラボレイションで多彩な活躍を見せる横川理彦。
ふたりがジョイントするというので行ってきた。
P-MODEL3代目ベーシストと4代目ベーシストの共演でもあり、個人的にはP-MODEL30周年記念イヴェントの一環である。
中野テルヲのライヴを観るのは2002年1月の表参道FAB以来10年ぶり、横川理彦ソロは学芸大学trayで観たのが5年ほど前であったろうか。
会場のソングラインズはカフェの一角にミニ・ステージがあるといった風情で弾き語りが似合いそうでもあるが、客入れはポップ・グループ(笑)。
まずは横川理彦がいつものようににこやかに登場。
今回はカヴァー4曲をインプロヴィゼイションで展開。
シーケンサーのリズム・トラック上に、ヴォーカル、サイレント・ギター、生ヴァイオリン、シンセサイザーなどをリアルタイムに重ねてループし、その上にさらに音を重ねてループ、さらに音を重ねて…というPCのメモリの限界に挑戦という手法。
というと非常に実験的なようだが、どれもすべて「心地いい」サウンド。
ただし、エレクトリックなノイズが嫌いでなければだが。
特に「口(くち)ドラム」で音を増やしていく「BABY’S ON FIRE」なんて、エンタテインメント性が高く楽しいし、楽曲のテーマ解説MCでも笑わす。
さすが映画のサウンドトラックからノイズまで音楽的バックボーンが幅広いマルチ・プレイヤーである。
「円熟したニュー・ウェイヴ」とでも表現したくなるヴェテランならではの場数を踏んだパフォーマンスだ。
横川理彦
01.WEIRD FISHES (Radio Head)
02.LOVE LOCKDOWN (Kanye West)
03.BABY’S ON FIRE (Brian Eno)
04.REQUIEM POUR UN CON (Serge Gainsbourg)
10年ぶりの中野テルヲであるが、機材の中心は変わらずUTS(Under Techno System)だ。
UTSはP-MODELだった高橋芳一による自作楽器で、センサーによって鳴ったり光ったりするシロモノ。
音がなければ手刀で居合いをやってるかのようである。
世界でただひとりの「ミスター・センサー・マン」によるセンサー・パフォーマンスだ。
「レッツ・ゴー・スカイセンサー」はやらなかったけど、おなじみ「ウーランストラッセ節」「RAM Running」「Uhlandstr On-Line」は披露。
めくるめく発振音と奇妙にねじれたメロディの上を這う「端正な」ヴォーカル。
指でフレームを作ってポージングする「フレーム・バッファ I」もそんな中野ポップ節が楽しめる新曲だが、収録の限定盤「PILOT RUN vol.1」は残念ながら完売。
トリビュート・アルバム収録のクラフトワーク「コンピュータ・ラブ」や、FLOPPYのアルバム『PROTOSCIENCE』でリミックスした「meta色吐息」といったカヴァーも。
全体にダブ的手法のアレンジが多く、びしょびしょのエコーと楽曲の解体具合が気持ちよかった。
そういえば中野テルヲのアルバム『Dump Request 99-05』には「コンピュータ・ダブ」なんてのも収録されてるのだった。
終演後に話をうかがったところ、やはり元ニュー・ウェイヴ少年としてはダブが大好きだったそうである。
中野テルヲ
01.ウーランストラッセ節
02.RAM Running
03.フレーム・バッファ I
04.Run Radio IV
05.Uhlandstr On-Line
06.meta色吐息
07.コンピュータ・ラブ
中野ソロのあとは、アンコールのような形で、といっても間はおかずにセッション・タイム。
同じP-MODELに在籍していたとはいえ、時期が重なっていないので共演は初めてのはず。
もっとも、横川理彦の在籍時に中野照夫(当時)はP-MODELのスタッフをやっていたので、気心は知れている。
1曲目は横川理彦のギターで、えーと、なんだこれ、ロンバケ?
と思ってあとで調べたらロング・バケーションの「LEGS (SWEETIE MIX)」のリアレンジだったもよう。
よく覚えてたもんだ、ファンなのか。
ラストにはなんとP-MODEL『カルカドル』収録の「PIPER」という平沢進・作詞/横川理彦・作曲のナンバー。
横川理彦はヴァイオリンとヴォーカル、想像だけどたぶんトラックも加えている。
記憶ではP-MODEL時代のライヴでも横川理彦のヴォーカル・パートもあったはずと思ったが、どうやら錯誤であったらしく、アルバムを聴き直したら平沢進しかヴォーカルをとっていなかった。
あてにならないもんだ、ファンじゃないのか。
追記: あとで中井さんにきいところ、P-MODELのライヴでは横川さんがヴォーカルをとって、平沢さんはソデに引っ込んでいたような記憶があるとのこと。
録音物がないので確証はもてないが、わたしの記憶が捏造されたわけではなかったのかもしれない。
追記2: 還弦主義サイトに1985/12/26ロフト音源の「PIPER」が投稿された。
やはり横川ヴォーカルであったようだ。
8760.susumuhirasawa.com/modules/ooparts/index.php/photo/144/
横川理彦 x 中野テルヲ
01.Legs More Sweetie
02.Piper
というわけで2時間のステージは終了。
終演後には、三浦俊一、高橋芳一といった元P-MODELのメンバー、シャンプーの折茂昌美、FLOPPYの戸田宏武(P-MODELの『ANOTHER GAME』で道を踏み外したらしい)らが集まった。
以上、敬称略。
曲目はライヴを企画した中井敏文(モノグラム)のサイトより。
いつまで残っているかはわからないが、Ustreamのアーカイヴはこちら。
横川理彦
www.manuera.com/altoki/j-yokogawa.html
中野テルヲ
www.din.or.jp/~teru-o/
次回ライヴはC・J・ラモーンのベースが盗まれたことでも有名な高円寺HIGHで。
Teruo Nakano Solo-Live 2010
6月20日(日)東京・高円寺HIGH
開場 17:30/開演 18:00
blog.seal-s.com/2010/02/post-8.html
アルバム『Dump Request 99-05』に再プレスは在庫あり。
seal-s.com/dr99-05/