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発掘原稿: Limbo-54 への道 (14)

2003年11月ころ、FAMIGA投稿用に書いたインタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年3月に始まった仕込みのことから書きはじめ、ようやく2003年4月のライヴ本番の話に至ったようです。
ライヴDVD『LIMBO-54』のブックレット原稿はこの回をもとににしています。
本文のあとにVidiAmigaとについての解説を『来なかった近未来』から引用しておきます。


Interactive Live 2003 への道 — その14 来なかった近未来はやってくるのか篇

2002年3月にメンテナンス計画を立ててから1年(笑)。
2003年3月末にようやく2台のAmiga4000の環境が整いました。
ライヴ初日は4月28日、もう1か月しかありません。

今回のライヴ会場でのコンピュータは以下のような役割分担になっています。

○Amiga-1(PowerTowerA4000/060)
オーサリングおよびアニメーション出力用

○Amiga-2(A4000T/060)
[光の軌跡]用

○Amiga-3(A1200HD/030)
[PhononGrabber]用

Amiga予備: HighFlyerA4000/060, A1200HD/040, A600HD/030

○PC/AT-1(ブックPC/Celeron700MHz)
静止画配信/テキスト配信/Web監視

○PC/AT-2(タワー/Athlon1.8GHz)
DANCER(*1)ハンドル一覧/音声配信/LIMBO-SCOPE(*2)動画配信用

○PC/AT-3(ラップトップ/Celeron300MHz)
LIMBO-SCOPE制御/Web監視

○PC/AT-4(ラップトップ/Crusoe600MHz)
Web監視用

PC/AT予備: ラップトップ/Pentium166MHz

本来、人的にもシステム的にもできるだけシンプルに構成するのが平沢式。
ライヴでこんなにたくさんのコンピュータを使うのは平沢さんの美意識に反することであり、初めてのことです。
しかし、見事なくらい最新のコンピュータは1台もなく、機械自慢にはなりません(笑)。

今回、このように台数を増やして仕事を分散したのは、単純にリスク回避のためです。
かつては2台のAmiga2000だけでライヴを進行したこともありましたが、そうした一極集中型のシステムは効率がいい半面、1台コケるとみなコケる危険性があるわけです。

今回もアニメーションの再生、映像やサウンドの制御といったライヴ全体のオーサリングのほか、観客との「インタラクティヴ」なイヴェントにももちろんAmigaが活躍します。
その一端をご紹介しましょう。

[光の軌跡]

VideoToasterのTrail Effect(光跡がつながるエフェクト)を利用したイヴェント。
観客に光源を渡して観客同志でリレーしてもらい、光源の動きを会場の天井に設置された広角カメラで捉えます。
A4000Tに送られた映像データはVideoToasterでTrail Effectをかけられ、PowerTowerA4000のPARが出力するCGと合成されて会場のスクリーンに投影されます。
観客はスクリーンを見ながらスタート地点からゴールまで、光跡が途切れないよう、またCGで描かれた「爆発物」を避けながら、一筆書きのようにして光跡を描いていきます。
同様のイヴェントは94年の第1回インタラクティブ・ライブの際に準備されていながら、天井カメラの不調で本番では実現しなかったそうです。

今回、難しかったのはカメラと光源の選定。
光源にはある程度の明るさが必要なのですが、電球のように割れたりするものは危険なので使えず、かといって蛍光塗料など畜光タイプのものでは暗いわけです。
化学発光体サイリュームをバルーンに仕込んだものが形状としては理想的だったのですが、実験の結果、暗くて光跡がつながらないことがわかりました。
結局、照明さんや小道具のスタッフが知恵を出し合って「危なくない明るいライト」を作ってくれたのですが、仕様は企業秘密です(笑)。
いえ、秘密というわけでありませんが、今まで書いたパーツをいい按配に組み合わせて器に入れただけです。

カメラはいろいろな種類を映像業者に用意してもらい天井から広いエリアを撮影でき、うまく光源を拾ってくれるカメラを選びました。
ところが、VideoToasterを通すと画像がぐしゃぐしゃになります。
こりゃダメかぁと思ったら、映像業者の方がTBC(TimeBaseCorrector)で調整してくれ
うまくいくようになりました。

VideoToaster自体は特殊な使い方をするわけではないのでセッティングはリハーサル直前に行ったのですが、なぜか肝心のTrail Effectがありません。
どうやらTrail Effectが収録されているのはVideoToasterの3.x系ソフトまでで4.x系には収録されていないようです。
(このあたり間違っていましたら訂正してください、識者の方々)
そんなわけで4.2を3.1にダウングレード(または両方インストール)する必要があるのですが、3.0はFDで45枚もあり、3.1へのアップデータが5枚あります(笑)。
しかも、ディスクが不良というわけでもないのに必ず22枚目でコケる現象に見舞われました。
VideoToasterのFAQサイトにもたくさん載っていますが3.0のインストールディスクはバグがあるそうです。
結局、バックアップしてあったハードディスクのファイルをコピーしてインストールするハメになりました。
4.x系のメディアはCD-ROMでラクなんですけどね。

[Phonon Grabber]

DVカメラで撮影した動画をA1200に接続したVidiAmiga12RTでキャプチャし、Pixoundというソフトでリアルタイムに音へと変換、同時にキャプチャのプレヴュー画面(モノクロ)を会場のスクリーンに投影するというシステムです。
PixoundはAmigaのパブリックスクリーンや各アプリケーションのスクリーン上でマウスポインタが示す位置のRGB情報をサウンドに変換する古〜いソフト。
本来、Pixoundは静止画上でマウスを動かして音階を奏でるソフトですが、Phonon Graberではマウスポインタを固定し、画像のほうを変化させるという逆転の発想で使用しています。
ちなみにPixsoundは現在、Windows用およびMacintosh用のアプリケーション、Webブラウザのプラグインとして提供・販売されています。
(以前はMac用のみでしたが、最近Win用ができたようです)
www.pixound.com/

Phonon Grabberは前回のライヴでFAMIGAの支援プロジェクトが開発したもので、三吉さんが書いてくださったマニュアルは今回、たいへん役立ちました。
アイディアの原型は、平沢さんが「梅津和時の“続々・大仕事”」(92年)というライヴで考案したものの実現しなかったシステムにあります。
ことの顛末は7番会議室「x占拠x : 平沢進の”来なかった近未来”」で書かれていますね。
(ここで「Pix Mate」となっているソフトは、Pixoundの間違いなそうです)
Phonon Grabberいわばその雪辱戦です。
「次のインタラクティブライブで使ってみるか」「観客の動きを音楽に変換するのもおもしろいぞ」と連載では書かれていますが、それが実現したわけです。
Pixound君の近未来はやってきたのです。

さて、ライヴでは前述のようにA1200+VidiAmiga12RTで行ったのですが、リハーサルでは場所を取らないA600でもできないかと試してみました。
しかし、どうにもキャプチャのプレヴュー画面の動きが悪いです。
使えないわけではないのですが、ショウとしては今ひとつ。
やっぱりA600ではダメなのかなぁと諦めたのですが、A1200でやってもうまくいきません。
う〜む。
よっく見ると接続していたのはVidiAmiga12RTではなくVidiAmiga12です。
「RT」がありません(笑)。
VidiAmiga12RTは入力が2系統、VidiAmiga12は1系統という差だけでなくバッファメモリの容量なども違っていたようです。
VidiAmiga12はバックアップ用に用意していたものだったのですが「RT」のあるとなしでは大違いだったようですね。

さて、次回はライヴ本番、1200が暴走します。

*1…DANCER
自宅などの会場外の(まれに客席の)コンピュータからネットワークを通じてコンサートに参加する「在宅オーディエンス」を今回のライヴでは物語の設定上「DANCER」と呼びました。
Webで登録したDANCERのハンドルネーム一覧は会場のスクリーンに投影されるのですが、数百人の名前がスクロールする様はまさに圧巻!!
もちろん登録システムやDANCERの名前をスクロールさせるプログラムはFAMIGA支援プロジェクトのメンバによって作られました。

*2…LIMBO-SCOPE
DANCERたちは、さまざまなトラップが仕掛けられたWeb上の迷路を通り抜け「LIMBO-SCOPE」の「操作室」へと辿り着きます。
LIMBO-SCOPEというのは会場に設置された望遠鏡で、DANCERの指示によって動き、LIMBO-SCOPEが捉えた映像はネットワークを介してDANCERへフィードバックされます。
そのシステムはコンピュータでコントロール可能な望遠鏡DS-115EC(MEADE)とコントローラAutostar#494をベースに作られています。
LIMBO-SCOPEはスクリプト言語Rebolによって制御されますが、ユーザインタフェイスはFAMIGA支援プロジェクトのメンバによって開発されました。


『来なかった近未来』より

カメラの映像をデジタイズしてAMIGAに取り込み、Pixoundを使って音楽に変換するシステム「Phonon Grabber」は、平沢進のインタラクティヴ・ライヴ「賢者のプロペラ(2000)」「Limbo-54(2003)」で使用された。
LIVE!ではなくパラレル・ポートに接続する Vidi Amiga 24RT (Rombo製) で動画のキャプチャを行った。

VidiAmiga
VidiAmiga

発掘原稿: Limbo-54 への道 (13)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2003年3月のことを2003年11月ころに思い出しながら書いているようです。
4月末から5月のいわゆる大型連休に開催されるインタラクティヴ・ライヴが迫ってきて、かなり焦りが出てきた模様。
次回からようやくライヴ本番へ突入。

Interactive Live 2003 への道 — その13 復活のHighFlyer篇

ここにきて、ちょっとこんな考えも頭をもたげました。

マシンの仕様を揃えるためにA4000(D)にこだわってやってきましたが、もはやPowerTowerとHighFlyerではかなり違う仕様になってきていますし、中古マザーボードでこんなに苦労するくらいならば、最初から新品のA4000Tを買っていたほうが予算的にも時間的にも労力的にもよかったのではないか。

しかし、これはもはやいわゆる後の祭り、後悔先に立たず、葬式済んで医者話というやつです。
あ、縁起でもない。

HighFlyerの不調マザーボードをなんとか利用できないかとも考えました。
最大の問題点である「マウスが横にしか動かない」現象ですが、平沢さんからソフトウェア的な対処法を教わりました。
AminetにあるSetmouseというソフトでマウスとジョイスティックのポートを入れ替えることができ、それを使えば操作に不自由がないといえばないのですが、Startup-sequence(またはUser-startup)を読み込むまで入れ替えは機能しません。
つまり、マウスの両ボタン押しでStartupMenuを呼び出すなど、ROM段階での操作ができないのです。
(キーボードでもマウスを操作できることはできますが…)
ジョイスティックポートをマウスポートとして使うハードウェアはないものかとマウスとジョイスティックの自動切り替え器を調べましたが、どれもマウスポートを使って拡張するタイプで役に立ちそうにありません。

もし仮にマウスポート問題が解決されたとしてもこのマザーボードは液漏れでかなり侵蝕されていますし、趣味用ならまだしもプロの仕事用としては心許ない状態です。

結局、SoftwareHutから60日保証中古マザーボードを購入することになり、3月1日にオーダして3月12日には届きました。
UPSではなくUSPSを指定したのですが、それにしては早いです。
きっと今回は在庫があったのでしょう(笑)。
ちなみにHutでは、$100以上お買い物のお客様には1個、$200以上お買い物のお客様には2個のオマケつくのですが、今回はマウス型の極小トラックボールが2個、同梱されていました。

さて、このマザーボード通算5号、外観は大当たり、きれいです。
PowerTower用マザーでの失敗を反省したのでしょうか。
ChipRAMがついていませんでしたが「スペシャル(特売品)」だからしょうがないのでしょう。
ChipRAMは予備があるのでよしとします。

ところでA4000のChipRAMといえば、わたしは特殊な規格のメモリだと思いこんでいたのですが、後日、10円で買った(笑)2MBのSIMMを試したところ認識しました。
相性はあるのかもしれませんが、フツーのSIMM(2MB/72pin/FastPageモード/ノンパリティ)がChipRAMとして使えるんですね。
FastRAMのほうも、今まで認識しなかったメモリはなかったように思います。
運がいいのでしょうか。

さて、マザーボード5号をひととおりテストしたところ意外なことに問題ありません(笑)。
時計までばっちりです。
時計機能自体はなくてもあまり困らないのですが、バッテリの液漏れによるダメージの目安になります。
SIMMスロットのSIMMを固定するノッチが4スロット中1スロット折れていましたが、SIMMはCyberStormに挿せばいいし、いざとなれば輪ゴムなどで固定できるので(笑)これも実害なしと判断、よしとします。
もしほかに問題が発見されたとしても60日保証なのでその期間内なら交換すればいいことです。

それでは本格的に環境を整えます。
HighFlyerの整備状況は「その8」から止まっています。
まずはハードディスクドライヴ。
現在のHDDは古くて信頼性が低く、容量も数100M程度しかないので交換が必要です。
前回はSCSIで失敗したので、今度はIDEでいってみようと秋葉原で探し回りました。
いくらなんでも20G以下だよな〜とか思いつつ小容量のドライヴを物色してると、あるじゃありませんか20Gが……って、よく見たら120Gですよ(笑)。
でもまぁ、探せばあるもので、現在はMaxtorにストレージ部門が統合されたQuantumの6.4Gのデッドストックが大量に市場に出回っていました。

システム用はそれでいいとして、相性が非常に厳しいのはPAR(Parsonal Animation Recorder)用のドライヴです。
PARのマニュアルに載っている動作保証ドライヴは下記。

Seagate 3600A 540MB
Seagate 3655A 540MB
Micropolis 2205A 632MB
Micropolis 2210A 1.138GB
Micropolis 2217A 1.896MB

しかし、新品でこのようなドライヴは存在しません。
PowerTower用にSoftwareHutから購入したPARについてきたHDは MaxtorD 740X-6L 7.9GB というやつですが、これもすでに市場にはなさそうです。
そもそもこのドライヴもPARで使えるとはいえ自動認識はされません。
「unsupport disk」とアラートが出ます。ま、それが限界なんでしょうな。
動作実績のあるMaxtorのDiamond MAXシリーズ(つまりQuantum系のFireballシリーズではない)とSeagateのBarracudaシリーズのなかから小容量ドライヴを探し、結局、Maxtorの30Gをゲットしました。

早速試したところ、Maxtorの30Gはシステム用としては使えましたが、残念ながらPAR用としてはNGでした。
そのかわりQuantumの6.4GがPARでもシステムでも使えたのでこちらをPAR用にすることにします。

システムはPowerTowerA4000と同様、OS3.1とOS3.9のデュアル・ブートにするようフォーマットし、パーティションを切ります。
せっかく30GもあるMaxtorの静音薄型ドライヴですが、10Gしか認識しません(笑)。
ま、10Gも使えれば充分過ぎるわけですが。

OS3.9のインストールにはCD-ROMドライヴが必要ですが、どうせCDはOSやアプリのインストール時くらいにしか使わないので、とりあえず手持ちの4倍速ATAPIで間に合わせることにします。

ネットワークカードX-Surfも問題なく動作しまし、あとはCyberStorm(MC68060搭載アクセラレータ)にクーリングファンを付け替えたり、電源周りのケーブルのメンテナンスをしたりといった細かい作業。
実はこのHighFlyerは平沢さんが1stオーナではなく知人の方から譲っていただいたものなそうで、平沢さんもよくわからない改造が施されていたりします。
自分で把握できない部分があるのはいざという時に恐いのでそうした部分は再修正しておきました。

にしても、A4000は狭いですね。
HighFlyerで2階建てに拡張したとはいえ1階部分はそのままで、ドライブベイと電源の間が広くなるわけではありません。
CD-ROMドライヴと電源の隙間は2cmもないでしょう。
フラットケーブルからいわゆるスマートケーブルに付け替えてもサンドウィッチ状態になってしまうのは変わりません。
システム用のHDDは2階の3.5インチベイに引っ越したいのですが、ケーブルが届きません(笑)。

3月28日、めでたくHighFlyerA4000は筑波のスタジオへと運ばれていきました。
もうライヴまで1か月。
ノーマルA4000が残されていますが、時間がありません。
これはライヴ後の課題とし、Amigaのメンテナンスはこれで一段落。
一方、このころすでに支援プロジェクトではユーザ向けのWebサイトも立ち上げ、システム作りも佳境に入っていました。

次回はライヴの話や後日談でもできればと思っています。

Amiga Technologies 4060
AMIGA4000T専用のMC68060搭載アクセラレータ Amiga Technologies 4060

発掘原稿: Limbo-54 への道 (12)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。

この回はいま読み直しても苛つくし、ぜんぜん面白くないのだけど、ま、記録ということで。


Interactive Live 2003 への道 — その12 2度あることは3度も4度もある篇

現状のおさらいです。

○PowerTowerA4000(新規購入品)
6月10日に到着してから10月13日まで、
なんと4か月間もかけてマザーボードを2度交換し、3枚目でようやくマトモに動くようになりました。
ほんとに新規ユーザだったらどうするんでしょう。それとも、ただこちらに運がなかっただけなのでしょうか。

○HighFlyerA4000
マウスが横にしか動かない、時計機能が働かないなど、バッテリの液漏れによる損傷と思われる異常あり。

○A4000
まったく起動しません。電源を入れても映像出力からはほとんどなにも出ない植物状態です。
マザーボードはほぼ死亡と見られます。

HighFlyerにしろノーマルA4000にしろ、復活のためにはまず健全なマザーボードを入手しなくてはなりません。
(故障したマザーボードを修理する腕も知識もありませんので)
SoftwareHutでは“2種類”のA4000マザーボードが売っています。

ひとつは Online Amiga CatalogのPCB’sというカテゴリにある商品。
A4000D PCB w/ Rev 11 Buster and 3.1 ROMs $599.95

もうひとつはUsed Amiga Hardwareというコーナーにある中古。
A4000 Desktop Motherboard complete with 3.1 rom chip $ 295.00

前者が新品で後者が中古、というわけではありません。
どちらも中古のはずです。
ここはひとつHutに質問してみます。

Q1)
どっちも中古だろうに、4000のマザーに$599.95のと$295.00のがあるのはなんで?
A1)
スペシャルプライスだから。
(答えになってない)
もう残り3枚だから早く注文してね。
Busterはrev.9なのでrev.11にして欲しけりゃあと$25払ってね。

Q2)
電池の液漏れとかない? ちゃんと時計は動くの?
A2)
ダイジョブダイジョブ。電池はちゃんと交換してるし、カンペキに動くさ。なんてたって60日保証付きだよ。

Q3)
4000Tのマザーボードはある? CPUとかHDDなしの4000Tはいくら?
A4)
4000Tは新品だよ、エヘン。マザーだけなら$599だけど、ドーターカードはないよ。
CPUなし、HDDなしの4000Tは$1200さ。

A4000のマザーボードは海外のネットオークションでもけっこう高くて、動作保証あり(guarantee to work)の場合は$200以上で取引されています。
AS-IS(日本で言うところのジャンク、ノークレーム&ノーリターン)でも相場は$100以上です。

どうしようかな、と考えていると、ちょっとよさげな中古を海外のオークションサイトで発見しました。
メイルで質問すると、感じのいい返事がかえってきます。ちゃんと動作保証もしてくれるそうです。
これで安く落とせたらいいかな、と思って張っていると思いがけず低価格で落札できました。

2002年の暮れも押し迫ったころ、A4000マザーボード4号はクリスマス・プレゼントのようにイギリスからやってきました。

電池は液漏れする前に外したから問題なし、ときいていましたが、若干ですが液漏れ痕があります。
時計機能は死んでいました。
う〜む。
しかし、諸々テストしたところその他の機能は問題ありません。
HighFlyerのマザーボードよりはずっといいです。
マウスもちゃんと動くし(笑)。
テトリスを楽しみつつジョイスティックの動作、サウンド出力などもチェックしました。
VideoスロットやZorroスロットも健全に働くようです。
とりあえず“合格”ということにしました。

すでにライヴに向けてFAMIGAの支援スタッフによるMLもスタートし、三好さんやolfaさんは行動を開始しています。
こちらもうかうかしていられません。準備を急がねば。

だがしか〜し、やはり世の中そううまくはいかないようです。特にAmiga界は。
2003年がめでたく明け、正月休みも終わり、もうすぐ豆まきというころ、重大な欠陥に気づきました。
ScreenModeを256色に設定できないんです。
最高でLowResは32色、HiResは16色と、AGAマシンとしての機能を発揮せず、これではA2000などECSマシンと同じです。

Workbenchの表示色数を多く設定すると動きが悪くなるのでこれまで16色にしていたのすが、そのため気づくのが遅くなりました。
このマザーボード4号到着からはすでに1か月以上が経過しており、クレームをつけるには遅すぎます。
これは完全に自分のミス、まさに安物買いの銭失いです。

すっかりしょんぼりしてしまいましたが、次回は元気を回復できるでしょうか。

A4000 mother
液漏れしやすいニッカドの充電池をコイン型のリチウム電池に交換したA4000のマザーボード。逆流防止ダイオードが半田付けしてある。電池の上にあるROMがRTC(リアルタイム・クロック)で、右はSIMMスロット。

発掘原稿: Limbo-54 への道 (11)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。

ここに出てくるZIII/PCIドータボードというのは、本来はPCI拡張スロットを持たないAMIGAにPCIカードを装着可能にするサードパーティ製のパーツ。
A4000はもともとZorroIII拡張スロット(AMIGA独自の規格)がマザーボードとは別のドータボードになっているため、そのドータボードを差し替えるだけで比較的容易にグレードアップが可能。
PowerTowerというのは、デスクトップ型のA4000をタワー型に拡張するケースで、たいていはZIII/PCIドータボードとセットで使用。


Interactive Live 2003 への道 — その11 3度目の正直もしくは仏の顔も3度まで篇

A4000マザーボード2号がペンシルヴェニア州へ去って1か月。
9月の半ばを過ぎてもSoftwareHutからは荷物は届かず、連絡もありません。
問い合わせてみると「技術担当者が長期不在で…」とのこと。
う〜ん…こういうことは前にもあったなぁ…。
確かに遅めのヴァカンスといえなくもありませんが、想像するに、中古マザーボードの在庫が切れてしまっていて入荷待ちしているのでしょう。

しょうがいないのでPCIのサウンド・カードやらVoodooがダメだった時の予備のグラフィックス・カードやらを物色(笑)。
S3 ViRGE DXは手持ちがあったのですが、古いので動くかどうかは不明。

10月9日、ようやくHutからの荷物が到着。

  • A4000マザーボード3号
  • ZIII/PCIドータボード
  • MediatorPCI
  • Voodoo(型番は失念)

マザーボード3号は液漏れゼロのピカピカで新品同様です。
「最初からちゃんとこういうのを送れよ」という感じです。思わず笑ってしまいました。
電池は液漏れしやすいニッカド充電池でしたが、これも新品同様できれいなもんです。
(念のため後日、液漏れしにくいニッケル水素に交換しましたが)

ZIII/PCIドータボードはこちらの返品したものと同じようです。これは問題なしと判断したのでしょう。

組み立ててテストしてみたところ、不思議なくらい絶好調です。今までのトラブルがウソのようです。
MediatorPCIまでトラブルなしに動作し、Voodooで32bitカラーのWorkbenchを表示しています。
しかしながらPCIカードがきっちりネジ留めできない設計不良がある点などはさすがAmiga製品と言えましょうか。

また、現在はどうなっているかわかりませんが、当時ElboxはMediatorPCIでPicasso96ドライバを使っているくせにパテントを支払っていないとかでモメてるため、Voodooを動かすための手順がたいへん面倒になっていました。
インストーラでらくちんというわけにいきません。
こっそり書かれたインストール・ガイドをよく読んで、自分で設定しなくてはなりません。
これはアミーガ1年生には無理だと思いました。2年生でよかったです。
(このあたり誤解があるようでしたらどなたかご指摘ください)

サウンドカードは認識しなかったのですが、それもそのはず、調べてみると、安さにひかれて買ったVibra128PCIのチップは、動作確認されているSoundBlasterのチップとは違い動作しないことが判明。これはこちらの責任です。

さて、不気味なほど正常に動いたPowerTowerA4000ですが1点だけ問題がありました。
普通のマウス(2ボタン)は正常に動くのに、なぜかトラックボール(3ボタン)が正常に動作しません。
トラックボール(3ボタン)を接続していると、起動すらしないのです。
まだドーターなどのパーツを装着する前からの現象だったのでこれはマザーボードの不良と言えるかもしれません。
平沢さんはトラックボール・ユーザなのでどうかと思ったのですが、それくらいならば目をつむるとのこと。

10月13日、ついにPowerTowerは筑波のSolarStudioへと旅立ちました。
その後、PowerTowerA4000とA4000Tの活躍によって平沢さんの新作『BLUE LIMBO』の制作は無事終わり、2003年2月13日にリリース。
当初の予定よりリリースが遅れましたが、それは単なる計画の変更でAmigaのせいじゃありません(笑)。

さぁ、残るはHighFlyerA4000とノーマルA4000の復活です。
って、まだ当初の計画のうち半分も終わっていないわけです。
ライヴは4月28日〜5月5日。
なんとかせねば!!

Amiga 4000 mb
AMIGA4000マザーボード
Amiga4000db
Amiga4000ドータボード。マザーボードの中央に立てるように挿す

発掘原稿: Limbo-54 への道 (10)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
FAMIGAへの投稿目的で書かれているため、AMIGAに関する予備知識のあることが前提で、システムやパーツに関する記述も説明ありませんが、この回はAMIGA事情を知らないとわかりにくいかもしれないので、ちょっと解説。
AMIGAにはオンボードでグラフィック・チップが載ってますが、拡張スロットにグラフィック・カードを搭載することも可能です。ここらへんは現在のPCと同じ。
ただ、AMIGAの場合、アプリケイションによってはオンボードのグラフィック・チップが出力する画面(ネイティヴ・スクリーン)でしか動作しないものも多いわけです。
特にAMIGAのハードウェアと密接な関係にあるグラフィック系ソフトは、ネイティヴ・スクリーンにしか出力できないものが多い。
しかも、グラフィック・カードの出力するスクリーンは一般的なPCモニタに映せても、ネイティヴ・スクリーンは映せなかったりするので、2種類のモニタを使用するとか、スキャンダブラ(ToastScanについては第7回で解説)と併用するとか、めんどくさい状況が生まれます。
この回はそんなお話。


Interactive Live 2003 への道 — その10 その後のToastScan篇

ToastScanはSuperGenと一緒に使えない――。
その事実は第5回で判明したわけですが、それでToastScanがお払い箱になった、というわけではありません。
SuperGenで使えなくとも、ToastScanには液晶モニタでAmigaを使うという用途がまだ残っています。

ところがそう簡単にいかないのがAmigaでしょうか。
平沢さんのスタジオで使用している液晶モニタは3台ともToastScanの出力を表示することはできませんでした(笑)。
いや、笑いごとじゃないんです。
NTSC:HighResやHighResLacedといったスクリーンモードでは640×240, 640×480, 720×400といった解像度で表示しますが、スタジオのモニタはそれらに対応しておらず、800×600以上じゃないとダメだったんです。

また、スタジオの液晶モニタはToastScanなしでDbNTSCやMultiScanといったモードで表示することもできません。
解像度が対応していないだけでなく、水平周波数の下限が30kHzあたりまでちゃんと映るモニタでないとDbNTSCやMultiScanでは表示できないそうなので
そちらの問題もあるかもしれません。
平沢さんから液晶モニタの詳しい仕様はきいてませんが、これはToastScanのせいでも、Amigaのせいでもなく(事実、三吉さんの液晶モニタではToastScanは有効だったようです)単にモニタの問題だったようです。
でも、困りました。

平沢さんのスタジオはソーラー・システムで電力供給しているので、できるだけ低消費電力の液晶モニタを使いたいところです。
ちなみに平沢さんはエミュレータで済む場合はラップトップに仕込んだUAEのAmigaで作業しています。

液晶にこだわるなら、ToastScanの使える液晶を探すほかに15kHz対応の液晶モニタを探すという手もあります。
SONYのCPD-L150はAmigaにばっちりなそうですが、このころナナオ(EIZO)やトートクの液晶を物色したりもしていました。
ま、実際は買いませんでしたけれども。

では、どういう方向に行ったかといいますと、やはり定番のグラフィックス・カードの導入です。
Amigaのデスクトップで作業する時はグラフィックス・カードを使い、ネイティヴスクリーンを使うアプリはスキャンダブラ、という両刀使いです。

グラフィックス・カードを使うと、一般的なPCモニタが使えてデスクトップがカラフルでゴージャスになるという見た目以外にも次のようなメリットがあります。

  1. 表示領域が増える
  2. ChipRAMの使用量が減る
  3. システムへの負荷が減る

(識者の方へ:このあたり勘違いがあったら訂正お願いします)

ただし、Amigaでグラフィックス・カードを使用するには
基本的に以下のいずれかの環境が必要になります。

  1. 2系統入力のあるモニタ
  2. 映像入力切り替え機
  3. モニタx2台

PicassoIVなどパススルー機能のあるグラフィックス・カードならばカード自体で自動切り替えができて両刀使いも気になりませんが、いかんせんすでに製造中止です。
Cybervision64/3Dは現行商品のようですが、オプションのフリッカフィクサはもう製造していないようです。
あったとしても自動切り替えができるのかどうかは不明です。
(お持ちの方がいたら教えてください)

とはいえ、平沢さんがよく使うBars&Pipesをはじめとしてグラフィックス・カードに対応しているソフトも多いので、大部分の作業は液晶モニタで済みます。
未対応のソフトであっても、NewModeというツールで対応させることが可能だったりします(ハスヲさん、ありがとう)。
ただし、ライヴの要であるScalaで、TVとの融合が必要なソフトだけにネイティヴ・スクリーンでしか表示できませんが、そういうのはToastScanとCRTモニタで表示させればいいわけです。

そういうわけで、最初はまずZorroスロット用グラフィックス・カード導入を検討したのですが、今や新品で容易に入手可能なのは前述のCybervision64/3Dくらいしかありません。

今さらZorroスロット用を購入するくらいならばMediatorPCIで安価で高性能なPCI用グラフィックス・カードを使ったほうがいいのではないかという方向へ傾きました。
(といっても、今やAT機用のグラフィックス・カードはAGPに移行していてPCI用は品薄ですが)
幸い、PowerTowerにPCIドータボードはついているのでMediatorPCIだけの出費で済みます。

結論といたしましては、MediatorPCIとVoodooをSoftwareHutに注文し、交換マザーボードと一緒に送ってもらうことにしました。
MediatorPCIはグラフィックス・カードだけでなく、ネットワーク・カード、サウンド・カードなども使えるので夢(もしくは悪夢)が広がります。

そのような妄想を繰り広げていたころ世間ではお盆ですっかり地獄の釜の蓋が開いたにもかかわらず、わたしは単行本の締め切りが近くて仕事をしていました。
深夜、事務所の入っているビルの下水が故障し、汚水が逆流してさんざんな目に遭ったのも今はいい思い出です(笑)。
幸い、Amigaが置いてあった部屋には汚水が入ってこなかったので難を逃れました。

次回は「帰って来いよ」または「かくも長き不在」をお送りする予定です。

PicassoIV
アドオンのスキャンダブラ装着済みの
Village Tronic Picasso IV
Cybervision64/3D
カード下部のへこんだ部分にオプションのスキャンダブラを装着できる DCE Cybervision 64/3D

発掘原稿: Limbo-54 への道 (9)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
本文のあとに『来なかった近未来』よりAMIGA4000の解説を引用。


Interactive Live 2003 への道– その9 — PowerTowerは2度死ぬ篇

2002年8月6日、筑波にある平沢さんのスタジオへと搬入されたPowerTowerA4000がその後どうなったかといいますと、まったくの役立たずぶりを発揮していました。

その症状はといいますと、起動しない(笑)。
起動中に調子が悪くなるのではなく、起動する時としない時があり、最初は起動率50%くらいだったのが30%を切るようになり、終いには0%すなわちまったく起動しないという事態に。

原因はぐらついていたPARボードの接触不良などいろいろ想像されました。
最悪なのは炎上事件の再来ですが、電源すら入らないということはないそうでLEDやリセットスウィッチが外れてショートしているということはないようでした。
電源は入るが、濃いグレー画面が出るだけでFDにもHDにもアクセスせずまったく起動しない状態らしいです。
平沢さんの調査によると、どうやらPARよりもドータボードがあやしいとのこと。

となると、やはりマザーボードの不良でしょうか。
マザーボード1号の返品によってやってきたこのマザーボード第2号もかなり汚れた中古品でした。
ニッカド充電池は外され、コイン電池ホルダに付け替えられていましたが、時計機能は働かず、どうやらこのマザーも時計チップが死んでるようです。
液漏れ痕もあり、信頼性が低いです。

しかし、原因を探っている暇はなく、そろそろ平沢さんの新作スケジュールが迫ってきています。
作曲にはAmigaが必要です。Bars & Pipes なくして平沢さんは作曲できません。

というわけで、8月15日、PowerTowerA4000は筑波から戻ってきました。まるで出戻り娘です。
しかし、お預かりしていた平沢さんのA4000もHighFlyerも、まだまともに動きません。
入れ替わりに筑波へ旅立ったのはわたしの4000Tです。頑張って奉公してくるのだぞ。

ところで、わたしは常日ごろ無機物や動物を擬人化した表現は、するべきでないと周りの者を戒めております。
しかし、ことAmigaに関してはついつい擬人化してしまいます。なぜなんでしょう。

それはさておき、出戻りPowerTowerはいろいろいじくっているうち動くようにはなりました。
原因はやはり、ZIII/PCIドータボードのようです。
ドータボードが悪いのか、マザーボード側のコネクタが悪いのかはわかりませんが、かなりネジをきつく締めて圧着しないと接触不良を起こし、そのエラーのために起動しないようです。
ドータボードの接触不良時にはハードディスクにもアクセスせずシーンとなっている、もしくは真っ暗な画面にノイズが走るという状態になります。
単なる接触不良ならば、ドータボードを認識しないだけで起動してもよさそうなものですが、それ以上は素人のわたしにはわかりません。

さらに悪いことには、PARがぐらつかないように押し込むとドータボードが浮き、ドータボードを押し込むとPARが浮くというまさにあちらを立てればこちらが立たず状態。
ちなみにPARの接触不良時にはハードディスクにはいくが立ち上がらない、または画面が黄色くなったりノイズが走ったりするいう状態になります。
ひょっとするとマザーボードのパターンのどこかに亀裂が入っているのかもしれません。

とにかく、このような状態では「おうちで使う用」ならまだしも、輸送の衝撃にも、ライヴ中の振動にも耐えられないことは確実。
SoftwareHutとの返品交渉にはひと悶着ありましたが8月20日、マザーボード2号はアミーリカへと帰っていきました。
中古とはいえ、保証付きでほんとよかったです。

このころ実は、Windows版のScalaを使うのはどうか、という検討も平沢さんはされていました。
しかし、オーバーレイをはじめとしてAmiga版Scalaでないと達成できない機能があり、見送られる結果となりました。
そんなこんなでやっぱりAmigaじゃなきゃいけないわけですが、こんなに問題山積で次回はいったいどーするよ。


『来なかった近未来』より

AMIGA4000

新世代チップセットAGA搭載のデスクトップ機。
グラフィック分野でのプロフェッショナル・ユースを想定したフラッグシップ・モデルで、72pinのSIMMスロットやIDEインタフェイスを搭載するなど、AT互換機やMacintoshを意識した設計となった。
拡張スロットはAMIGA3000との互換性が高く、アクセラレータやVideoToaster4000をはじめとする多種多様な拡張ボードが発売された。
AMIGA2000と比べると筐体が小さいため、より拡張性を高めるタワー化キットもサードパーティからリリース。
2000年以降もPowerPCアクセラレータやPCIバスなど、新しい拡張機器が発売されている。

AMIGA4000
平沢進が使用していたAMIGA4000

AMIGA4000T

Commodore倒産後に Amiga Technologies(Escom)からリリースされたフルタワー型のワークステイション。
Commodore末期の1994年に極小ロットがリリースされたA4000Tとは、筐体デザインもマザーボードも異なる。
基本性能はAMIGA4000と同じだが、IDEコントローラとSCSIコントローラの両インタフェイスを搭載し、デストップ型のA4000に比べドライブ・ベイや拡張スロットの数も多く拡張性は遙かに高い。
Videoスロットが2本あるため、PicassoIVなどのグラフィック・カードとVideoToasterの両方を同時に搭載できる。

AMIGA4000T
インタラクティヴ・ライヴ“LIMBO-54”でも使用されたAMIGA4000T

発掘原稿: Limbo-54 への道 (8)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
写真がいろいろ発掘されたので本文のあとに掲載しました。


Interactive Live 2003 への道 — その8 HighFlyerお前もか篇

2002年8月6日、筑波のSolarStudioから動かないノーマルA4000と、動きの悪いHighFlyerA4000が運ばれてきました。
入れ替わりにPowerTowerA4000は筑波へ運ばれていきました。

状況把握のためとりあえず、A4000とHighFlyerA4000は全部バラします。
どちらも非常に分解しににく、けっこう手間取りした。A2000のほうがずっとラクです。
A4000の設計者って、あまりメンテナンス性は考慮しなかったのではないでしょうか。特に前面パネルの外しにくさといったらもう。

マザーボードの状態を観察したところ2台ともニッカド充電池の液漏れで腐蝕しています。
とりあえず半田鏝で液漏れバッテリを外し、腐蝕箇所はアルコール系接点復活剤で洗浄しました。

もともとA4000にはCommodoreのA3640が、HighFlyerA4000にはMacroSystemsのWarpEngine4040が、それぞれ載っていました。
このWarpEngineは問題があるかもしれないと平沢さんから聞いていましたので、A3640でテストしてみます。

HighFlyerはFDからの起動を確認。
A4000のほうはやはりダメで、真っ赤な画面が出て起動しません。
「赤」はKickstartROMのエラーらしいので、HighFlyerのROMと取り替えてみます。
(A4000は3.1ROM、HighFlyerは3.0ROMでした)
A4000を3.0ROMで起動してみると、こんどは通常の起動前の色(超ダークブルー)にはなるのですが、FDくれくれ画面にならず、それ以上うんともすんとも言いません。
逆にA4000に載っていた3.1ROMでHighFlyerを起動しても問題ありません。
ROM自体には問題ないようです。

A4000のはほうっておくことにして(笑)HighFlyerA4000の整備に取りかかることにしましょう。

液漏れによる機能障害チェックのため、新しいバッテリを取り付けて時計機能の確認。
……ダメです。
時間を保存するチップが死んでいると思われます。周りの緑青に侵蝕されたようなチップ類もかなり逝っている可能性大です。動いてるほうが不思議(笑)。
動いているうちにハードディスクのバックアップを取っておきます。

実はすでにA4000のハードディスクは逝ってしまっていてカコーンカコーンン…という、わかる人にはわかる死亡ハードディスク特有のもの悲しい異音を発しています。
HighFlyerA4000のハードディスクも相当の年代物なのでいつ逝ってもおかしくありません。

というわけで新しいHDを探さなくてはなりません。
しかし、IDEにしろSCSIにしろ、昨今の大容量ハードディスクは認識しない可能性が高いです。
CyberStormのUW(ウルトラワイド)SCSIが精一杯新しいコントローラですがそれでももう5年ほど前のチップのはずです。
中古ディスクをあたるという手もありますが、ライヴで使うには信頼性が低くなります。
ここはダメモトで新品にチャレンジするしかないでしょう。

まずは、相性問題の少ないと言われるSCSIから。
秋葉原を探し回ってようやく9GのUW-SCSIをゲットしてきました。
しかし……認識しません。
ターミネータのせいかなとか、かなり試行錯誤をしましたが、どうもダメっぽいです、諦めます。

それではIDEにトライしてみようかと考えていた8月13日、世間的にはもうお盆で地獄の釜の蓋も開こうという時節。
だしぬけにHighFlyerA4000のマウスが横にしか動かなくなりました。
起動中にマウスの抜き差しをしたような覚えはないのですが…。ハードディスクどころではありません。
と、困り果てているころ、筑波でも困り果てている人がいました。

次回、PowerTowerなんか動くもんか、です。

A3640
Commodore純正のCPUアクセラレータ A3640

A3640 Clock
A3640は本来MC68040/25MHzだが、CPU(MPU)とクリスタルをさしかえ、コントローラをジャンパして33MHzにクロックアップしている(クリスタルの1/2の速度で動作する仕様)

Warp Engine 4040
A4000マザーボード上の MacroSystem Warp Engine 4040

A4k_leak
マザーボード上のRTCバッテリの液漏れ痕

4月の中野テルヲに関するメモランダム

3月21日リリースのアルバム『Oscillator and Spaceship』を携えた中野テルヲ“Live Tour 2012”最終日へ行ってきた。
(音楽ライターみたいな書き出し)

『Oscillator and Spaceship』には「グライダー」なんて曲が入っていて、精神がゆったり滑空できるという意味ではこの作品を象徴している。
そっから「宇宙船」「フレーム・バッファ II」につながるのだけど、この流れは素晴らしく心地よい。そんな気持ちよさを求めて高円寺まで行ったのだが、途中ほんとに眠りそうになってしまった。
わたしにとって眠たくなるライヴというのは実は最高の誉め言葉であるのだけど、それは曲調や音量には関係ない。
爆音のほうがむしろ眠りやすいかもしれない。

この日のサウンドがこれまでとは違って聞こえるのはどうしてだろうと思いつつステージを眺め、ああなるほどと思った。
もともと中野テルヲは「一糸乱れぬ」という印象があるわけだけど、ステージ上の機材配置や配線がこれまで以上に「あるべき姿」に落ち着いていた
見事に束ねられ美しいラインを描くケーブル類のように、サウンドもまた整理され均衡がとれているのだ。
音の輪郭がはっきりとして、まっすぐ耳に届く。声が近い。
機材が整理されていれば整理されたサウンドが出るわけではないが(当たり前だ)演者の精神のありようには影響するだろうし、精神のありようは物に現れる。

『Oscillator and Spaceship』収録曲はもちろんのこと、以前の曲も明瞭に伝わるのは会場のミキシングのおかげだろうか。
そう思って終演後に少し本人に尋ねてみたところ、新曲以外のオケも手を入れて、分離をよくしたそうだ。
PCからサウンドをダイレクトに出力しているぶん(バンド・サウンドなどと違って)ミスするとすぐわかっちゃうんですと笑っていたが、そうした緊張感もまた音を澄ませているのかもしれない。
(音楽ライターみたいな落とし方)

中野テルヲ 「Live Tour 2012」
2012/04/08(Sun)
高円寺・KOENJI HIGH

01. ジムノペディ第1番
02. Game
03. Amp-Amplified
04. フレーム・バッファ I
05. Mission Goes West
06. 振動子
07. Imagine
08. Pilot Run #4
09. サンパリーツ
10. Run Radio IV
11. 雪山
12. Pilot Run #7
13. デッドエンド羅針
14. 操行ゼロ
15. グライダー
16. コンダクター・プラス
17. Let’s Go Skysensor
18. 宇宙船
19. フレーム・バッファ II
EN
20.Long Distance, Long Time
21.Eardrum

twitter.com/PILOTRUN より

*曲目追記: そうそう1曲目にやったサティのように、計算されて配置された家具を思わせました

Oscillator and Spaceship
ジギーとちょっとポーズが似ている

発掘原稿: Limbo-54 への道 (7)

インタラクティヴ・ライヴ「Limbo-54」とAMIGAの仕込みに関する発掘原稿です。
2002年のことを2003年になって思い出しながら書いているようです。
そのわりにずいぶんディテイルまでリアルに描写されているのは、記憶だけでなく、メイルのログなど記録もとに書いているためです。
本文のあとにスキャンダブラについての解説を掲載しました。


Interactive Live 2003 への道 — その7 PowerTowerA4000炎上篇

話は2002年7月に戻ります。
PowerTowerA4000には次の問題が発生していました。

(1)熱問題

耐久テストのため、Scalaでムーヴィを3時間ほど再生していると音声・映像の出力がおかしくなり、ワークベンチ画面もフリッカがひどく、不安定になりました。
電源を切って数時間ほうっておいたら直りましたが、どうやら熱のせいのようです。ほかのスキャンダブラ同様、ToastScanもかなり熱くなっていましたし、ケース(筐体)の電源付近、上部もかなりあたたかくなっていました。
ケースを開けてみると、CPUはファンで直接冷やしてるのでそんなに熱を放出してません。
問題はPARとVideoToasterです。
両方とも使ってなくてもかなり熱くなるんですね。
そこで、5inchベイ収納式の空冷ファンをに取り付けてみました。
けっこういい感じで風が回って、熱問題は解決かと思われました、が…。

(2)衝撃・電源問題

ケースの上部にキーボードを乗せる、軽く叩くという程度の衝撃で電源が落ちる、再起動するという問題も頻発していました。
CPUの接触不良やマザーボードのせいではなく、どうも電源関係が怪しいようです。
また、たまに電源が入らないこともあって、電源ケーブルの抜き差し、放置、といった対策で復旧(?)していました。
衝撃落ち、電源不入は同一の原因かもしれません。

記録によりますと、7月13日深夜のこと。
動作チェックしているうちに、とうとうどうやっても電源が入らなくなりました。
そこで、手持ちのATX電源と交換したところ(PowerTowerで使われているのは普通のATX電源のコネクターを変換したものです)起動するようになりました。
やはり電源が壊れかけていたのでしょうか。

ところが、本体から外したあとに念のため再度チェックしたら、壊れたはずの電源が動作しました。
謎ですが、あまり深く考えないことにしてケースも閉め(衝撃で電源が落ちる現象は直っていませんが)今日はこれで終わりにしようと思いました。

(3)PowerTowerA4000炎上

すると突然、ケースの排気口からもくもくと煙が!!
一瞬、すべて台無し…すべて弁償…という言葉が頭を過ぎり、在りし日のPowerTowerA4000の姿が走馬燈のように駆けめぐりながらも
条件反射で電源を切り、ケースを開けてみました。

HDDアクセスLEDとマザーボードを接続するビニール線が端から端まで焦げていました。
ケース前面のリセットスウィッチ、パワーオンLED、HDDアクセスLEDとマザーボードやドーターボード上のコネクタを結ぶケーブル(ビニール線)が束になっているのですが、焼け焦げたのはHDDアクセスLEDの線のみです。
幸い、マザーボード上のコネクタ附近に焦げはありません。
ほかの部分も異常がないように見えます。
燃えたのはビニール線だけだったようです。

つまり、HDDランプ用の線のどこかがショートして線全体が電熱線のようになったのだと思います。
電源交換など保守作業中になにかしでかしてしまったのでしょうか。

(4)解決篇

LEDケーブル類の束を外して恐る恐る電源を入れたところ、意外にも正常に起動しました。
電源、マザーボード、アクセラレータといった主要部には問題ないようです。
不思議なことに、衝撃で電源が落ちる現象や電源オンオフの不具合も直っています。
これから察するに(1)〜(3)の問題はすべてLEDケーブルの接触不良または短絡が原因で起こっていたのかもしれません。

燃え落ちたHDDアクセスLED用ケーブルのLED側接続先をチェックするため、ケースを分解しました。
LED類は1枚の小さな基盤に収められ、本来はフロントパネルの所定位置にピンで固定されているはずです。
しかし、そのLED基盤は完全に外れており、基盤の裏側が金属シャーシに接触する状態になっています。
きっと、そのためにショートしてしまったのでしょう。
電源の不具合もそれで説明がつきます。ちょっとした衝撃で電源が切れたり、再起動していたのは、リセットスウィッチがショートでオンオフしてしまったためでしょう。
電源が入らなかったのもショートのためだと思います。
(現在、PowerTower4000は手許にないため、このあたりの構造は記憶を頼りに書いており、基盤の説明など細部は間違いがあるかもしれません)

LED基盤はネジ留めこそされていないもののプラスチックのピンでかっちりと固定されているべきもので輸送時の振動で外れるとは思えません。
たぶん最初からきちんと固定されていなかったのでしょう。

また、PowerTowerが到着して初めてケースを開けた時にまろび出てきたネジやプラスチックの破片の正体もわかりました。
これらはフロントパネル固定用ネジとそのネジ穴の破片だったようです。
6箇所あるフロントパネルのネジ穴のうち2箇所が破損していました。
たぶん、回しにくい場所にネジがついているのでヘンな角度でネジを入れてネジ穴を壊してしまったのだと思います。
このようないい加減な組立をする人間ならばLED基盤を適当にくっつけていたとしても不思議ではありません。

そう思うと自分の落ち度がなかったような気がして安心します。
というわけで原因も解明し、晴れ晴れと歌をうたいながら半田鏝を操りケーブルなどありあわせのパーツで復旧しました。

その夜、アメリカから日本に核ミサイルが降り注ぐ夢を見ました。
持って逃げる荷物にラップトップPCを入れるあたり、妙に生々しかったです。
ブッシュ政権によるイラク攻撃が話題になっていたころですね。

次回、HighFlyerお前もか、の巻。


原稿にたびたび出てくるスキャンダブラ(商品名ToastScan)というのは、AMIGAのRGB出力(水平走査周波数)を15kHzから約2倍の31kHzにして一般的なPCモニタが使用できるようにする機器。
AMIGAは、80年代にはまだ高価だったPCモニタを使用しなくても、TVモニタに映せるようヴィデオ出力を標準装備していたが、それに合わせてRGB出力の水平周波数も15kHzとなっていた。
80年代のPCは低解像度だったので、そうした低い水平周波数帯を使うPCも珍しくなく(NECのPC98は24kHzだった)80年代にはAMIGA専用モニタ以外にも15kHzや24kHzあたりが使えるデュアルシンクやトリシンクのPCモニタが普通に流通していたので問題はなかったのである。
しかし、90年代に入ってPCの高解像度化進むとマルチシンク・モニタが一般的となり、30kHz未満の水平周波数には対応しなくなったため、AMIGAで使えるモニタは少なくなった。
そこで登場したのがスキャンダブラで、AMIGA3000というモデルにはオンボードでスキャンダブラが搭載されているほか、数多くのサードパーティから外付けや内蔵のスキャンダブラがリリースされた。インタレース・モードでのフリッカを抑えるフリッカ・フィクサ機能を備えるものも多い。
なお、ゲーム機の映像をPCモニタに映すための機器として売られているアップスキャン・コンバータも似たようなものだが、AMIGAではたいてい使えない。

MV1200
ToastScanと外観はまったく同じスキャンダブラMV1200(ACT Elektronik Vertriebs GmbH)

Video Magician
Videoスロットに装着するタイプのスキャンダブラVideo Magician(Bio-Con Taiwan Corp)はRGB出力のほかヴィデオ出力も搭載

ffv2_denise
Deniseのソケットに挿すタイプにスキャンダブラFlicker Free Video 2(ICD)

『来なかった近未来』あとがきのあとがき その2

Limbo-54への道」のせいですっかり埋もれてしまったが、ちょっと前に表紙について書いた「あとがきのあとがき」その2である。

昨日は『来なかった近未来』の発売日。市場に流通しためでたい日ではあるが、さっそく脱字の指摘などを受け、ややうなだれ気味。
もちろん品質向上のためには指摘大歓迎で感謝しておりますし、直しやすいのが電子書籍のいいところ。修正版はリリースする予定。
とはいえ、いくらプロの校正を通しても、やっぱり誤字脱字などは出てきてしまい、あーとうなだれるのが編集者の常なのである。
などと責任転嫁&一般化してはいけないな。自分が無能なだけです。

ただ、電子書籍といっても修正はWebページほど簡単ではない。
『来なかった近未来』は組版ソフトのInDesignでデザインし、PDF出力したものを、Acrobatで編集(リンク張ったりとか)している。
デザイナーと編集者で同じソフトウェアを揃えておけば作業はスムーズで、誤記修正くらい編集者がささっとできてしまいそうなものである。
実際、原理的にはそうである。しかし、現実にはそうはいかない。フォントの問題がある。

フォントには著作権があり、商用フォントでは使用条件が厳しく定められているため、使用フォントをすべて揃えていなくては、文字修正すら思うようにいかないのである。
大きな出版社ではデザイナーとまったく同じ環境を編集側にも用意できるが、零細出版社やフリーの編集者ではそうもいかない(小さな出版社では編集部内でデザインするケースもよくあるが)。

代替フォントを使って修正することもできるが、変更箇所またはページ全体がほかとは異なるフォントになってしまい、えらくカッコ悪い。
よっぽど目立たない箇所ならまだしも、普通そういうことはできない。
あまっさえ、Acrobatでの編集は使用フォントがなければ改行すらできなかったりするし、C&Pくらい認めてほしいもんであるが、それもできない。
デザイナーと異なるOSで作業しているせいか「選択したフォントと文書のフォントエンコードの不一致を解決できなかった」などというエラー・メッセージが出てフォントの変更もできなかったりする。

じゃあなんでePubとかにしないでPDFにしたかっていうと、理由はここに書いてある通りで、2年前からそんなに状況は変わっていない。
もちろん、将来的に電子書籍はePubとHTML5が統合された仕様に落ち着くとは思し、個人史的にPDFは好きじゃないのだが、現状のePubでは仕様もヴューワも発展途上であり、独自の仕様を解釈できる独自ヴューワにするくらいだったら、PDFのほうがよい。

『来なかった近未来』は横書きだし、ルビ、数式、化学式、特殊な記号などもない。
ePubにする利点は、スマートフォンなど画面の小さなデヴァイスでの可変レイアウト表示くらいしかないが、それならPDFヴューワの「テキスト・ヴュー」モードでこと足りる(すべてのヴューワに備えている機能ではないが)。

また、現状では印刷前提の組版ソフトのほうがグラフィック・デザイナーにとって使いやすい。
ePubはむしろWebデザイナーの領分になるのかもしれないが、電子書籍のフォーマットとして普及するには、グラフィック・デザイナーが使いやすいePubエディタは必須だろう。もしくは、InDesignなどの組版ソフトのePub出力がもっと使えるものになってくれるとよいのだが。

特定デヴァイスに最適化したアプリ形式ならば、また違ったやり方になるだろうが、内容がマニアックだけに、デヴァイスで間口を絞るわけにもいかず、どんな環境でも読める汎用フォーマットが前提である。
異なる環境での読みやすさ、という点では、デザイナーの中井さんが骨を折ってくれた。
iPhoneクラス(3.5インチ/960x640px)以上の画面サイズと解像度ならば全ページ表示でも読めるはず。
ちなみに自分が使用している初代Desireは画面サイズ3.7インチだが、解像度が800x480pxしかないので全ページ表示じゃムリ。悔しい。

電子書籍は、音楽ファイルと同列に読書ファイルなどと呼ぶべきだとは前から思っている。
紙の本と電子書籍の違いは、CDと音楽ファイルとの違いのような「物理媒体の有無」よりむしろ、スピーカとヘッドフォンのような体験の違いのほうが大きい。音楽がラジカセで聴くのと大型スピーカで鳴らすのとでは違う体験なように、電子書籍もPCで読むのとスレイトやスマートフォンで読むのとでは違う体験だ。
紙の本も判型など仕様によって異なる体験を提供できるが、固定されているので、ユーザ側に選択の余地はない。

仕様の次に思案したのが価格設定である。
紙の本と違って材料費がかからない電子書籍の原価はほとんどが労務費(著者印税含む)と経費である。
紙の本のような計算では価格を算出しにくいのである。電子書籍の価格設定は、ゲーム業界やPCソフトウェア業界に近いのだろう。
また電子書籍は初版部数というものがないので、初版分の印税保証のような商慣習ともなじみにくい。
いまはある程度の印税保証をしている出版社のほうが多いのかもしれないが、紙の本よりも印税率が高いかわりに保証なし、というほうが「電子書籍的」ではあるとは思う。

などなど吟味しつつ、仕事量を勘案し、部数を読み、著者、編集者、デザイナーそれぞれの印税比率を決めたのであるが、1800円という値段は高価いいと思われるだろうなあという懸念はあった。
周囲やSNSなどで高価い高価いと言われたわけではないが、自分自身の感覚として電子書籍で2000円超えはないよな、というのがまずあった。
単価1800円というのは労働量からすると妥当かむしろ安価だとすら思うし、紙で同じ仕様の本を出すなら4000円くらいになってしまっただろう。
単純に比較はできないが、1993年に出た『AMIGAは最高!』(4C/8ページ, 1C/328ページ)なんて実際、3800円もしている。

ちなみに編輯作業を始めたのは10月で、本文の再構成や註釈を書くのにえらく時間がかかってしまった。写真点数も多いのでデザインにも時間がかかっている。
本文だけならもっと安くできただろうが、ただでさえまだ商品性を認められづらい電子書籍というメディアであるからして、できるだけヴォリューム感や附加価値をつけたかったのだが、大きなお世話だっただろうか。
将来的には本篇だけの「軽装版」があってもいいかもしれない。
構成を変えるなら、リクエストされるまで忘れていた「マンデルブロの森にテクノ有り」あたりを併録してもいいかも、などといまから思っている。

来なかった近未来